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2010-04-09
記憶の行方ー後篇2
記憶の彼方−後編2
こんにちわ、私、リリィです。
って、初めっていうか、前にも紹介したけれど。
一応、言っとく。
占い師で魔術師でもあります。
そんで、催眠療法が得意だったりします。
いきなり、すっごい剣幕の派手なおばさんが来て、
(おばさんって言ったら、殺されそうだけど・・・)
自分の子供の記憶を消してくれって、
言われて、大金置いて子供も置いて、さっさと帰って行った。
何もしなくて、諭吉君がちゃんと立ってくれるくらいの厚さ。
(これでも前金らしい。)
かなり、お金には縁が無い私にとって、
嬉しい話なんだけれど、
子供って、可愛い高校生だったりで、
私的には目の保養となり、文句のつけどころがない、
ウマウマな仕事だったりなのですが。。。
大金の袋を抱えたまま、なんとか笑顔で、
その子と、前向きに話合い。。。なんて
悠長なものではなく、この私に対する
ガードの堅さが、すんごく腹が立ってしまって。
(初対面で、多感な年頃の男の子なら、当然かもね。。。)
わかっちゃいるけれど、なんかムカつく!
でも、小生意気な感じがあって、
そこがまた可愛いんだけど、私の気に障ったというか、
少し苛めてやろうなんて、私の子供っちぃ気持ちが、
かえって、彼を同情し、なんとかしてしまう状況を、
自分で作り出してしまうという、
情けない結果になろうとは、露にも思わず。。。
こういうの墓穴掘るっていうんだよね。
きっと。。。
(ミイラ取りがミイラになったって、
こういう事だよね。。。)
なんて、思いながら、大好物のキセルを一服、
プーッと煙を口から吐いて、輪っか作って、
この後どうするか。。。考えていた。
実際、彼が嫌がるであろうシーンを彼の頭の中から、
自分で覗いたのは事実。
少し、興奮気味というか、感情的な状態だったから、
催眠の状態に落としていくのは、すごく簡単だったけど。
少年と世間では呼ばれる年代の彼が、
あんなすごいHしてたりするのか〜って思うと、
妙に羨ましくもあり、そういう恋愛してたりする彼が少し
妬ましくもありで、全部を視るのを途中で止めてしまった。
(年は取るもんじゃないわね・・・)
彼はまだ眠っている。
スヤスヤ寝てる。
だって、起こしてないから。
てか、起こせなかった。
私の家には地下室がある。
その地下室の彼を一人寝かせたまま、
私は彼と扉を挟んで、外で一服、
少し変わった造りのこの家には、
簡単には行けない、長い長い下る廊下の下に地下室がある。
単に真っ直ぐじゃなくて、カーブもあったりするのですよ。
電気もつけてないから、慣れてるはずの私だって、
一人じゃ怖いくらいの暗さで、ホントに闇で、マジ怖い。
目の前は全くの漆黒の一色で足元なんて見えやしない。
そこをろうそく一本で歩かなきゃいけないこの廊下。
まるでお寺とかにある、地獄めぐりってやつみたいな感じで、
ろうそくつ付けたって、大した光になんてならない。
その先が見えない不安と自分の勘と手探り状態で、
この廊下を歩く心境。
この長い長いくねった廊下が、いつものリリィから、
魔術師リリィと変えていく、私の精神レベルをさらに上げていく
プロセスを辿るのを、具現化したようなこの廊下。
ろうそくもつけずに、実際の私の目には何も見えていないけれど、
心の眼は、この扉向こうの眠り姫が見た夢を、
私の中でリプレイされていて、この真っ暗な空間に投射されて、
私は物思いに耽る。
(私も、案外乙女チックな人間だったんだ。。。
自覚が無かった・・・)
どっかの不良とかやってそうな座り方?膝を抱えてドアにもたれて、
ボーっと膝を抱えて、どこに視線を置くでもなく宙をを眺めていた。
私の口から意味もなく、煙が出てる。
吸ってるか吸ってないんだか?分かんないような状態で、
単にキセルを咥えてるだけって言ってもいい。
とりあえず、煙を口から吐き出して、このどうしようもなくて、
キュンとなってしまった気分を少しでも緩和しようと、
頑張り中だった。
(一回、やつを起こすか・・・)
私は今回は、キセルをちゃんと吸って、ポワっと輪っかを作って、
綺麗に輪っかになって、それがどんどん上に上昇し、
時間とともに、切れ切れに薄く消えてなくなるのを確認したら、
スクッと立ち上がり、重い気持ちと重い扉を一気に開けて、
もう一度彼の傍に座る事にした。
「・・・ぇるかなぁ・・・ぉきて・・・」
パンッ!
両手を彼の頬に充てて、挟み打ちしてやった。
わぁっと、少し慌てた様子で、置き上がった彼。
簡易の長椅子に、真っ白なタオルケットを被せただけで、
ほんと簡単なベッドの様なものの上に、ずっと寝っ転がってた彼。
さすがに、安定は悪いだろうに、
一気に置き上がったモノだから、落ちかけてるところを、
私が手を貸してやって、なんとか落ち転ばずにセーフ。
彼の目の前に回転椅子がある。
そこがずっと彼が寝ている間、彼の頭を覗く為に座っていた椅子。
クルッと椅子の背を彼の方に向けて、ドガっと跨いで座った。
椅子の背中充ての両手をかけ、顎も乗せ、だらけた感じでわざと
そういう風に座った。
彼は上半身を起こして、私の眼を見た。
私も眼を見返す。
変な緊張した空気が流れてた。
彼の頭を覗くのは、止めようと、
私は心の中で、密かに一人で決意した。
彼は私を上から下まで、観察するように見ているみたいだった。
私の今日のお召し物は、ゴスロリ大好き好きな人間だから、
当然、黒まっしぐらで、胸には十字架のネックを何本もかけて、
もちろん、胸の谷間は作。ってます。
ブレスには、ごっついゴシック系のブレスと、
幾つものパワーストーン。一応、仕事上ね。
指に、パワーストーンの指輪とちょっと気味悪い形で、
それどこで売ってんの?みたいなゴツゴツした指輪が
何種もつけてあり、爪は超〜〜ロングでストーンがこれでもか!って
くらいのコテコテ指。
ウエストはゴスロリなら、当然コルセットでウエスト絞って、
スカートも当然超〜〜ミニ。
網目にピンクリボン付き黒のガーターストッキングに、お約束の黒ピンヒール。
髪は、黒の腰までロング&オン・ザ・眉毛で真っ赤な口紅。
長い金のキセルを加えた女を目にしてどうよ、君?
文句ある?って感じで睨み返してやる。
普通に、こんな井出達の女は見たことね!〜って顔で、
ドン引きすんのは、やめてほしかったりするけど。
それ以上、君、固まってるよって感じで、
何の変化もないのが、これまたつまんない。
私は自分で好きでやってんだから。
それより、問題はあんたなんだから。
普通に人間だから、変な目で見るのは止めて頂戴って、
言ってはみたものの。
ここなんかの、処刑場なんですか?僕、これからどうなるんですか?って
やつに言われちゃったw。
確かに、この部屋って儀式用だから、
普通に生きてたら、知らなくてもよくて、見なくてもいい円が、
いっぱいあったり、円の中に三角描かれて、
そんなかに眼玉があったりの円や、円の三角が何個も重なる図形や、
何の意味があるの?っていう乱数のような数字の羅列や、
ビンゴゲームのカードを配られた図形もどきとか、
円に四角が描かれて、なぜ枝?なんか付いてたりする図形が、
天井・壁・床に白いペンキみたいなので描かれてるから、
真っ暗でも少し光って見えてたりすると、
内容分かってる私でも、正直怖いわな〜って思ったする。
(確かに、私も一人じゃ怖かったりけど。)
子供には関係ないのよ、この図形は。
ってビビってない風に大人の余裕で、キセルを飲んで煙を出す。
煙が行ったせいか?目にしみてるみたいで、彼は急き込んでいた。
「取って喰ったりしないわよ。」と、一応慰めの言葉をかけてやった。
ついでに立ちあがり、ツカツカと奥に置いてあるワイン棚から、
ワインを取り出し、二人分グラスに注いで、お盆無しでお行儀悪いが、
彼にも「はい。」って手渡た。
私もまたドスンと椅子に座りながら、早速ワインを口に含んだ。
ついでだから、ボトルも持ってきた。
ボトルのお顔を見ながら、また一口と口に含む。
これは、1971年モノのブルゴーニュ産の上物。
こんなガキに飲ませるには勿体ない代物だけど、
もらってる金額が金額だし、
怖がらせたって意味もあって、少し奮発してやったつもりだけど、
意味わかんないだろうな〜って、横目で見ながら私も彼を観察した。
(てか、未成年なのにねってw)
「僕、お酒なんか。。。」
彼は匂いを嗅いで、お酒とわかったみたいだ。
私が出した酒を小生意気にも、拒否しやがる。
いいの♪いいの♪って手で合図して、言ってやった。
「お酒じゃないわよ。キリストの血よ。」
「え?」
「嫌だったら飲まないでいいわよ。私が飲むから。」
自分はもう、飲み歩して、またグラスにワインを注いで、
それを半分以上飲んだところだった。
仕方がないのはわかってるけど、
一応、舐める程度に、彼はグラスに口を付けた。
そして、小さな声で、私に訪ねてきた。
「あ、あのぉ・・・」
「なに?」
「し、下着、見えてるけど・・・」
(なんじゃ、それってw
そこ、赤くなるとこ?
それ以上の事、やりまくってるのにw)って、
思ったけど、ちと、からかってやりたかったから
軽はずみにも、言ってしまった馬鹿な私。
「これ、見せてもいい下着だから、見えてもいいの。
それ以上の事、やっといて、私の下着見たくらいで、
赤くなったりしないでよね。」
椅子をクルクル中途半端に左右に揺らしながら、
彼の様子がどう変わるか?見てみたくて、
言ってしまった。
グラスの残りのワインを飲み干して、
私はまたグラスにワインを注ぎに、ヤバかったか?と
今頃、少し後悔の念に襲われる。
彼から目線を外さずには、いられなかった。
でも、チラっと見てしまう好奇心。
(私って最悪かも。。。)
彼は何の事?って感じで、一時ぽかんとした感じで、
私は彼の視線を全身でヒシヒシと受けていたが、無視を決め込んだ。
私の言葉の意味が、もしかして自分の事だと想像した時、
彼は、真っ赤と同時に私を怒鳴ってきた。
「ど、どういう意味だよ!さっきの・・・」
「ん?」
(やっぱりまずったか。。。)
彼は身体を私に向け片足降ろし、私の方へ身を乗り出すくらいの勢いで、
私に文句を言ってきた。黙って私は彼の言葉を聞く。
ワイン乃グラスを置くテーブルが近くにないので、手に持っていた
ボトルとグラスを床に置いて、身体を彼の方に今度はちゃんと向けて、
私は仕方がないから、開き直る態度で、彼を見て、モノを言っていた。
お酒は弱くないから、私にとってワインなんてジュースのようなもの。
でも、彼は違うかもしれないけど。
口は災いの元って、わかってるけど、
出てしまった言葉は消せない。
ここで私は腹をくくった。
「んって。。。僕に何したんだよ?」
「何をって?何を?」
「ごまかすなよ!ぼ、僕の事・・・。」
今度は立ちあがって、私に怒鳴ってきた彼。
だけど、手の届く私のところまで来て、詰め寄る根性はなさそうだった。
私は全く動じなかった。彼の怒りがこの程度位なら、尚更。
その場を動かず、じっと彼を私は見続けた。
知ったからって、なんだっていうの?
自分が選んだんでしょ?そういう人生。
自分勝手にてやってる癖にって言いたかったけど、
まだ、子供だから許してあげようと、
慈悲の慈愛の心で温かく、私はこの子を見てあげる事に
今から遅いかもしれないけど、始めた。
私は床からグラスを手にして、クイっと数杯目のワインを飲み干して、
彼に近寄る事もせず、今の位置を保ちながら、
彼と話をする事にした。
彼は私を睨んでいた。私は面白くなった。
(上等じゃない。私に勝てるとでも思ってんの?)
「僕の事が何?あなたの事なんて、私何も知らない。
椿 純子の息子ってくらいしかね。
その椿 純子があなたの記憶を消せって、
いきなりうちに乗り込んできたくらいよ。
私があなたについて知ってる事なんて。」
椅子を足を左右に大きく広げて、
(これで下着はもう、見えんだろう。)
椅子を左右にクルクル揺らして、嘘ついて言って。
フーッとため息ついて、彼を見る。
そして、私の首から下げてるロザリオを手に取り
に軽くキスをした。
私がこれからやることが正しいのか?
見ていてほしかったから。
どう話を展開していいか?私は彼の顔を見ていると悩んでしまう。
どんな時でも、練習より本番に強い私が、
今日はいつになく、言葉を探っていた。
「あなた、お酒回っちゃった?
そんなに睨んだり、怒ったりしないでよ。
私達、自己紹介もまだよ。
ちょっと、落ち着いてくれる?
言っとく。私はリリィよ。
よろしく。」
彼から近づいてくる事は絶対にないと思ったから、
床を勢いよく蹴って、長椅子の彼に椅子を廻しながら近づいた。
私より、少し目線が上な彼に手を出して、握手を求めた。
彼は長椅子に腰をかけるように座って、
出された私の手をじっと見て、それから私の顔をじっと見た。
「あなたは?何て名前なの?」
やっぱり、無反応。思った通り、彼は黙っている。
(・・・・・う〜ん)
何秒?何十秒?数分?経ったかな?
ってくらい、時間の長さを感じるんだけど。。。私。
なんだか、すんごい彼から感情の波動変動が伝わんだけど。
それでもって、それがすごく激しいモノであったりで。
顔を私から背けて、まるで私が汚いかのように、
そんな感じに私は受け取れてしまうくらい、吐き捨てるように言った。
「僕の名前なんて、聞かなくても知ってるくせに。」
「・・・」
(怒り?照れ?どっちかわからないわ。)
もう、いちいち考えて喋ってやるのが、正直めんどくさくなる。
お金の問題じゃなくなってきたいた、私の中では。
「何も聞いてないわ。私。
あんたの口からわね。
私は、あんたの口から聞きたいのよ。
そうやって、ダンマリやってもいいけどさ〜、
そんな事しても、あなたは家に帰れないだけだから。」
不覚にも、ムキになってしまったのは、私の方だった。
少し反省、言葉、ちょっときつかったかしら・・・
なんだか、悔しそうな表情。
でも、なんだか可愛い。
片方しか見えないから、いまいち表情が読めないけど。
こんなところでに私の力を使うのも、もったいない気がしてね。。。
面倒だけど、彼が心を開く事から、始めようと私は思った。
(仕方がない。長期戦?上等よ。どっちが勝つかやってやるわ。)
「長期戦やる気なら、私この部屋から出て、
違う仕事したいんだけど、構わないかな?」
ざまあみろ。やっぱりビビってる。
フフんって口元、嫌味っぽく歪めて、私言ってやった。
彼も案の定、不安そうな顔してる。
あのセリフ言うと、大概の人間は折れる。
もっとも、私の経験上の話。。。だけどw
こんな気味悪い部屋で、変な物ばかり置いてて、
普通は落ち着けない。
よっぽどのオカルト好きじゃないとね。
困ってるって顔してるあの子。
その顔に縦線入ってたみたいだった。
(確かに変な部屋だけど、処刑場はないわよね。。。w)
彼を落とすのは、案外楽かも。。って思いながらも、
私はチラっと目線を反らしている、
彼の顔を下からのぞきこむようにて見た。
この子なりに、この部屋がただの部屋じゃないって事だけはわかってるみたい。
この空間の空気が、彼を圧迫させてるって事くらい、私でもわかる。
(なんだかんだって、やっぱり可愛いよね、この子。)
可愛いからって、今回は私は引けない。
この子の口から直に、教えてもらわなくちゃいけない事が、
沢山あり、いやあるから。
あなたを見据える私の目をしっかり見てみな!って心の訴えが、
彼には聞こえてるか?心配なんだけどね。
目線は反らしたままだけど、彼はやっと口を開いてくれた。
私は真剣に聞いて、質問するを繰り返すだけ。
「・・・僕、僕は椿 理央。」
「理央ね、リリィよ。よろしく。」
取りあえず、第一関門クリア。
少し、ホッとした。彼も普通の子供だってことで。
だけど、私はクスリともしてやらない。
無表情を装いながら、私を言葉を続けた。
彼の中で、私に対するムカつきよりも、
ここに残される不安の方が、勝ったように思った。
(正常な人間の反応ね。この子は、おかしくない。)
「よ、よろしく。リリィさん。」
「リリィでいいわよ。皆、そう言ってるから。
私、年上、年下とかって概念ないの。
結構リベラルな人間だから、何でも来いよw」
やっと、理央が私に近づいてくれた。
確かに私、あの子の頭の中を覗いてるから、
彼の言うとおり、当然名前なんて、わかってるけど、
でも、違うの。彼が私に直接言う事に意義があるの。
椅子をゆっくりと彼に近づけて見る。
そうやって、私は理央に近づいた。
座っても、身長は彼のが大きいみたいね。
ヒールの分で、丁度同じって感じか。。
苦労してなさそうな顔。
その分、母親が苦労してるか・・・
自分の事は棚に上げて、同じ過ちを犯そうとしてるのが、
あの母親には理解出来ないんだろうか?、
名前を教え合った後から。理央は私の顔をやっと直視できるようになっていた。
理央に、私はニッコリしてあげた。
彼もやっとだけれど、私に対して、ちょこっと頭を下げて私にお辞儀した。
何の意味もないお辞儀。そんなの私には全く意味がない。
私は理央に手を出して、再度握手を求めた。
とりあえず、友好的関係を築こうとしてるのよ。
喧嘩がしたい訳じゃない。
ただ、確かめたかった。
彼の潜在意識を見れば、簡単に彼の事なんてわかるけど、
私は彼の、彼の口から生の音がどうしても欲しかった。
色んな意味でね。
彼は恐る恐るッて感じで、手を出してくれた。
軽く握るだけ。
私も圧力をかけるつもりは、毛頭ないから。
握手が終わると、さっさと手を除けて、
彼から、少し距離を開ける為に、椅子をスッと後に引いた。
理央も長椅子にちょこんと座り直しするみたいに腰を少し上げた。
両手を長椅子にかけて、足を抛り出すように座り、
恐る恐る口を開いて、私に訪ねてきた。
早速ですか〜って思ったけど。
「き、聞いてもいいですか?」
「私に質問?いいわよ、どうぞ。」
覗かないでくる、質問ってなんだか新鮮で、
どんな質問か、ワクワクしちゃって、
この座ってる椅子は回転具合が中々だったりなので、
クルクルって、左右30度ずつくらい、
廻しちゃったって感じねw
こいつ、きっとこの女なんなんだ?って思ってるわよね。
もっと混乱しちゃえって思いながら、
楽しみながらw彼の声を待ってた。
でも、質問の内容は大体想像できるけど。
「こ、この部屋なん、何なんですか?
薄暗いし。。。ろうそくだけなんて。。。」
(そらきたw。どっちなんだよね。
私の身なりか?この部屋の変なところの話か?
どっちかなのよ。)
ちと、小悪魔チックに、笑みを浮かべながら、
恐怖をもっと増やしてやりたい気分で、私は答えていく。
「今時じゃない?って感じ?」
「な、なんか不気味な感じがして。。。
だって、あそこになんか丸まって、包帯巻かれて、
包帯みたいなのにも、なんか描かれてるし、
まして、釘で留められてるって感じが。。。」
ふ〜ん、あれね〜って感じで、彼の不気味に思ったモノに、
顔だけそっちに向けて、彼について思った事。。。
彼は結構、勘がいいかも。
暗いからぼんやりとしか見えないんだけど、普通は。
だって、ろうそくが数十本しかないし、どこが奥か手前はどこまで?
なんて、普通はわからないから。
よく、目線反らしてた割には観察してる!って印象を持った。
どこまで答えてやるかな〜と考え中。
もっと気持ち悪い事言ってやろうかとも思ったけど、
本題にいけないと困るから、ある程度で抑えようと、
私の考えはまとまった。
「そうね、あれは生贄ってやつかな。
頭の先から足の先まで、包帯みたいな布でグルグル巻いてる。
包帯のありとあらゆるところに眼が描かれていて、
その上から、動きを封じる為にまた包帯のような布でテープみたいに、
巻いて釘で止めてる。
蝶か、なんかのさなぎみたいなもんと思って。
ま、中身は内緒だけどね。」
この辺で終わりにして、反応を見た。
あれに眼が釘づけって感じだった。
怖いんだなって私、確信した。
続けて、喋って一応軽く教えてやろうと、答えをまとめた。
「ここは、私の本来の仕事場。
所謂、テンプルって場所。祭壇とも言う。
理央は気持ち悪い?
でもね、ここは意識や感情の開放場でもある。、
怖く見えるのは、あなたの心に何かがあれを
そう見えるだけ。
だって、普通に円と数字か記号しか書いてないもん。」
(ま、こんな家、普通にってないけどねw)
私的に少しは、気持ちを楽にしたやりたかったから、
バカっぽく喋ってみた。
彼の刺さる刺棘しい視線を少しでも緩和してみたくて。
「・・・そうやって、僕のも見たの?」
理央の視線が、私をグサグサ刺してくる。
興味の対象に私は、変わったのかしら?
真っ直ぐな、純粋な目でキラキラして見ていた。
また私は、ゆっくりと彼に椅子を近づけてみた。
彼が真剣勝負を挑んでるなら、そのお望みのままにってね。
「痛いとこ、ついてくるわよねw
確かに見たけど、その前にきこえたんだよね。。。
聞いてってお願いする声がさ。
あなたの中から。
だからあなたを眠らして、見せてもらった。」
「どうやって?眠らせたの?
何にも飲んでなかったのに?」
今時ね。。。
人を眠らせるのは薬だけ?って思ってるみたい。
私はポケットに入っている、ペンデュラムという先っぽに、
紫色の石がついている、輪っかにはなっていないけれど、
一本のチェーンがついたモノをだして、
彼の目の前で、右手に持って揺らし始めた。
紫の石が下になって、チェーンの上のところを指先で持ち、
石が揺れている。
先っぽに金の装飾がついていて、結構綺麗なのもの。
「これ。
これで寝かせた。」
ペンデュラムはまだ揺れてる。振り子みたいに。
見たらまた寝るから直視しないでよって説明入れて、
私はまたペンデュラムをポッケに直した。
彼の表情は、こんなもので?って指さすくらい、
簡単な造りのモノに見えて、有り得ないって顔していた。
別に信じてもらわなくてもいいんだけど、
結構疑り深い性格って分かったから、
見えたモノをある程度、教えてあげた。
史登ってやつとどうやって知り合ったか?
理央が倒れた時、史登と向井地が、
あなたの家に向かったとか・・・
その史登とのベッドの中での事とか・・・
簡単に話してあげた。
こんなの魔術じゃなく、この部屋でもなくてもいいんだけど、
静かな方がいいかな?って思ってここにしただけで
理央には、疑う事が余地が無いというか。。。。
理央は、あっけなく私の話に堕ちた。、
私的にはもう少し反論とかしてもらって、ごねてもらう方が楽しみでもあったけど、
面白くな〜いとか、物足りね〜とか、不謹慎だけど思った。
物足りないモノを埋めるように、またワインを床から取って
今度は椅子じゃなくて、長椅子の彼の横に座って
彼と、話をしていこうと思ったので、席移動!。
ついでにキセルも吸いながら。
「こんなもので?って思ったでしょ?
結構出来るもんなのよw
初めて知った?
聞いたことあるかな?ダウジングって。
これもその一つなのね。
ま、私は何でも出来るからw」
ダウジングは、知らなかったみたい。
へ〜って顔してる理央。
ちょっとは、いい気分にさせてくれるじゃないって思っちゃった。
理央はさっきの見せてくれって、私に頼んできた。
(興味あるのかな?見せるくらい何でもないけど・・・)
私はポッケからだして、彼に渡してあげたけど、
紫色の石が珍しく思えたのかな?
自分で揺らしてみて、これで寝ちゃうんだって、
ある意味感心して、揺らして遊んでいた。
(こうなると、普通に少年なんだけどね。。。)
「あげようか?」
「えっ?」
驚いて、私を見る表情の彼は、これまた結構可愛い。
これ自体持ってても、技術がないと寝ないし。
持ってるだけなら、アクセと変わらない。
何の害もないから。
「いいわよ。あげる。
勝手に視てるし、お詫びも兼ねてw
あげるわ。」
「ホントにいいの?」
「いいわよ、高いもんじゃないし。あげる。」
「あ、ありがとう。」
ぺこっと、軽く私に頭を下げて、
嬉しそうに紫の石を綺麗だって言って見ていた。
「あ、一応言っておくけど、
これだけじゃ、寝ないからw
腕がいるわよ。w」
と、付けたし。
え、そうなの?って表情も、可愛かったり。。
何に使うつもりよ!って突っ込みたかったけどやめた。
聞くだけ、野暮?ってやつと思ったから。
いちいち可愛いな〜って思いながら、
横目で彼の表情は逐一チェック!。
「だって、教えられないわよ、
そんなの。
ま、アクセにでもしなさいよ。
私が使ってたから、他のよりは結構霊性強いし。
お守り程度にはなるから。
チェーンだけ変えたら、ネックレスにはなるわよ。」
そうだね。。。って少し残念そうだけど、
可愛いから、ワイン飲みながら、
一言アドバイスしてあげ。
とにかく、早くこの件片付けて、次へ行きたい私としては、
彼にご機嫌を直してもらう事が、重要な事でもあった。
「霊性って?なに?」
「霊性?
そうね〜この場合だと、
守ってくれる石の力の強さって言う感じかな・・・」
「色んな意味があるの?霊性って?
この石、持つと強くなれるの?」
「色んな意味はないけどね。これの使い方としてって意味で。
体力が出てくるとかってんじゃないわよ。
精神的な強さを与えてくれるっていうか。。。
あと、勘とか良くなったり、
ひらめきが強くなったりとかってあるよ。」
そうなんだ。。って顔して、まじまじ石を見る理央。
視なくても、彼の考えが分かったりする私。
私も少し閃いた。
すくっと立ち上がって、でもグラスは離さない私だけどw
奥の方へテクテクと歩いていった。
少しガサゴソと物色中。
確かこの奥にって、私の忘れっぽい記憶をなんとか手掛かりに、
机に上半身乗っかって、引き出し漁ってる私。
当然、彼の方からすれば、また下着が見えてるよって、
状態なんだけれど。
この年なったら、あんまり気にもしなくなり。。。
今の私より、たぶん理央の方が、エロ可愛いんだと思う。。。と
我ながら、理央に感心してたりする。
(私も甘いよな〜。)
「っと、みっつけたとッ!」
以前、引き出しの奥底に、こんなの使えね〜って投げ飛ばしたはずの
同じような代物を発見して、天高くゲットした物を掲げて、
ニッコリ満面の笑みで、理央の方を振り向きニタって笑った。
またカツカツ歩いて、彼の隣にガタっと座る。
手に持ったモノにすごく興味があるみたいで、
私の手をずっと直視の理央。
(可愛いな。。。史登が夢中にもなる訳だわな。。。
こりゃ、たまらんわ。)
なんて彼の顔を見ながら、思ったりして、
彼の手に私のゲットした代物を乗せてやった。
それは同じタイプの石が薄ピンクのペンデュラム。
サーモンピンクが、理央には合いそうな気がしてね。
「ついでにこれもあげるわ。
さっきの霊性が強いものんで、こっちは恋愛がかなうやつ。
あんた的には、こっちのピンクのが良くないの?」
どうよ、あんたっ?て感じで、顔をわざと覗きこむ。
少しだけど、赤くなる理央の顔を生で見ちゃってると、
もし、私も男であって、理央が男だってわかってても、
抱きついて、押し倒したくなるよなって、
思っちゃうくらい可愛いやつ。
私って、ホント腐女子ってやつだよねw
「ピンクはあんまり使ってないから、
どんなのかよくわかんないけど、石にお願いしたらいいよ。
恋愛がうまくいくようにって。
ピンクはローズクォーツ、紫はアメジストって言うのが、
石の名前よ。」
「う、うまくって。。。でも、記憶消すとかって。。。
言って・・た。」
「それは、あんたのママゴンが言ってるんでしょ?
あんたはどうなの?
これね、ペンデュラムって言ってさ、
自分が好きな相手がどう思ってるかとかって、石にね聞くの。
ま、例えば、そこにYESorNOのマークを勝手に、
作って置いておくとしよう。
そこで、廻しながら聞くの、相手はどう思ってる?って、
そしたら、どっちかに動いてくれる。
その止まった方向が答えって言う風に、本来は使うんだよね。
ただ、私みたいに催眠にも使えるし、チェーン変えたらお守りにもなるって、
便利な奴なのよ。
でも、そういう風に答えてくれるまで、石とはだいぶん、仲良くなってないと、
ダメだから。アクセで使えば?石もメンテいるからめんどくさいわよ。」
またワインを注ぎながら、若い子相手に飲むのって、
気持ちいい感じになってきながら、
もう一口を何度も繰り返して飲んでたりする。
よし!理央は嬉しそうにしてる、私へ心もある程度開いた。
こっから、ぶっちゃけトークだ!
「ねぇ、聞きたいんだけど、
あんた、ほんとに記憶消してほしいの?」
えっ?って顔をして私を見た。
何驚いてんの?って思ったけど、
私がキセル吸いながら、ワイン片手に言っても
単なる酔っ払いのたわごとにしか聞こえないかもしれないなって
自分がその立場なら、思うかもって考えたから。
彼にも一杯、飲めって注いで手渡した。
今度は少し少なめにして。
飲むの?って、顔をして私に見せるけど、私が注いだ酒が飲めんのか!って、威嚇して、
顎でくいっと促して、飲めよっと命令。
理央はしぶしぶ飲んだ。バツ悪そうに
その顔を見るだけでも、私は楽しくってしょうがない。
「しぶ。。ッ」
「あら、何度も言うけど、これはキリストの血よ?
しぶっ?ってないでしょw
それに、これ上物よw
あんたが生まれる前から、作られてて眠ってた代物。
高級品よwほんと、お子ちゃまね〜w」
アハハって笑いながら、キセルを吹かす。
私は、煙の先をなんとなく見てた。
だんだん薄く引き延ばされて、消えていく煙。
遊びはこの辺にして、そろそろ本題に入らないとって。
少し、ワインは止めにして、彼の話を聞き出す方に誘導しようと、
口卑しいのか?なにか、ないとイライラしちゃう性格だったりする。
彼から口を割ることはないだろう。
だからと言って、私は待つ気もない。
私は、いつも直球でしか勝負はしない。
子供かもしれないが、恋愛もそこそこやった人間が目の前にいる。
だからこそ、対等に勝負してやらなくちゃって、思った。
視なくてもわかる。
理央が史登ってやつを、どれだけ好きかって事は。
理央の目は、もう十分に恋する大人の目だから。
私は、彼の方に向いて、胡坐かいて座って、真っ直ぐに、
長椅子に座って、彼を見る事にした。
私の体勢が変わって、目つきが少し変わったのも、
彼は察したのか?少し後ろに身を引いていた。
(また、下着見えてる?
それか、リリィが酔っ払ったとでも思ってるのかしら?
言っとくけど、私ザルだから。。。)
と、心の声が叫んでる。
ま、私としてはどっちでもいい。
そんなの関係ないから。
少しずつだけど、彼は私に心を開いた。
それが証拠で十分だった。
「私、酔っ払ってないので、あしからず。
それと、私は直球勝負しかしない。
あなたの気持ちをあなたの言葉で聞かせて。」
一方的に投げ掛ける私の言葉に、何の反応もなかった。
半分以上意味が分かってないと見た。
彼は、取りあえずという意味だろう、うんとだけ、頷いた。
「何個か、質問する。
真面目に答えて。
初めにも言ったけど、リベラル派です。
それに私自身こんななりの女。
偏見とかそういう固定観念は一切無いから。
言いたい事言って頂戴。
もう、催眠状態は嫌でしょ?」
冗談混じりえたつもりなので、クスって笑ってあげた。
少しここで緊張を解そうと思っただけ。
無理矢理答えを引き出したって、意味がないから。
その意図だけは、分かってもらえたんだろう。
そこはしっかりと、うんと理央は頷いた。
理央も身体を私に向けて、足を抱えて座った。
(上等ね。いい心構えし、いい面してんじゃないの。)
「んじゃ、早速。
いつ、見つかったの?
二人の関係は?」
理央の目の表情が一気に曇った。
というか、身体が硬直?固まったっていうやつか。
あまりに直球すぎたか。。。
でも、聞かなくちゃいけない事だから、仕方がない。
口から出た言葉を消すことは出来ない。
でも、私は信じていたい。彼の本音が出る事を。
あなたを一人の人間として、私は見てるから。
私からは、逃げないで欲しかった。。
何の変化もない二人、全く動かないといってもいいくらい。
いや、彼は微かに戦慄いてるというか・・・
その数秒でも、私にはすっごく長く感じた。
でも、待つ事を知ってる私は、少し目を伏せた。
真実を欲しがる私の目が、彼には鋭い矢のように思えるかもしれない。
そんな矢のように視線が刺さるようでは、
彼以外であっても誰であっても、話せる事も話せないだろうから。
でも、理央は少しずつ話してくれた。
私のアンテナがピクッと動く。でも、目は閉じたままで胡坐もかいたまま。
「ぼ、僕の家で。。てか、全部見たんじゃ?
こんなこと、今更僕が言わなくても。。。」
「僕の家でどうしたの?」
私は強い口調で、怒鳴る感じで言い放った。
奴の弱い意志の言葉なんて、聞かない。可愛いってだけでは許さない。
今は、話だけを進める事に私は集中した。
(さあ、話せ。そして私が欲しいモノを頂戴。)
口調の荒さに私の真剣さが、理央にも伝わったみたい。
理央は嫌々?いや、それより恥ずかしさの方が勝ってたか。
さっきまで真正面に私を見ていた視線は、いきなり下に向きながら、
私の顔を全く見ないで、話していった。
「僕の家に彼が来る事は、何度かあったんだけど、
その日も、ママは帰って来る日じゃないって事で、
僕も安心して、彼を呼べたんだ。
そしたら、ママは急に帰ってきて、使用人の中の一人が
ママに彼が来てるのを言ったみたいで。
たぶん、ママは嬉しかったんだと思う。
彼と僕が仲良しで家にも来てくれるようになってって、
だから、ママは・・・」
理央の言葉は段々小さくなって、聞き取れないくらいの声の音になった。
(そこが大事だちゅ〜のに!)
説明は後で、とにかく音をくれって思ってるのに、
小さくなっていくなんて!信じらんれない!
ちと、怒りモードが私の中で発令されたようで、
彼には悪いが、語尾を強めて、理央に言った。
「ママはどうしたの?」
「え?」
「え?じゃわからない。ママはどうしたの?
聞こえない。ちゃんと答えて。」
私は目をずっと閉じたままだった。でも、言葉は強く真っ直ぐに。
顔も当然、理央へ真っ直ぐ向けて。
私にとてって今は、理央に喋らすことが、一番の目的だったから。
フラフラした私と、うって変わった今の態度が、怖かったのか?
理央は大人しく私の言う事に従った。
人に話をするなんて、初めてだと思うから。
可哀そうでもあるのだが、ここは折れてもらわないと、仕方がないのよ。
言いたくないオーラが理央の全身から感じたけれど、そんなの私は全く無視!
観念した理央は、この頃から普通に話せるようになってきた。
「ママが僕の部屋にいきなり入ってきたんだ。
ノックもしないで。。。
でも、されてても分かんなかったかもしれない。
僕達、Hしてた最中だったから、そっちに夢中で。。。」
「それで?」
「僕達いい訳のしようもなくて、ママはそれを見て発狂するくらい、
大きな声っていうか、すごい声だしてた。」
「なにか言われた?ママに」
「何してんの?あんた達みたいな感じで言われて、
その声で僕達もびっくりして、途中だったけど、
服に二人とも慌てて着替えて、でももう僕達の言葉は聞いてくれなくて、
ママは彼を追い出して、僕の携帯も取り上げられて、
そっから、彼にも学校にも会ってないし、行ってない。」
「その彼に何か言ったの?あなたのママは。」
記憶をたどってる?それとも考えてる?どっち?
冷たい空気が余計に重く感じてしまう。
でも、答えて、理央。あなたの為でもあるから。
多分、一生懸命考えたんだと思う。
言葉を選んでいるのか?少し考えた様子の彼。
「とりあえず、帰ってくれって。
でも感じ的には、まるで叩き出すって感じだった。
それからも僕の話は全く聞いてくれなくて、ママは。
ママは僕が病気だって、思っちゃって。。。
精神科とか、心療内科ってところとか、
色々、行ったけど、どこもダメで。。。」
「ダメッて何が?」
「僕が、彼を好きだって事が、頭から消えないっていうか。。。」
「ママは男同士っていうのが理解できなくて、
女と男でも上手くいかないのに、男同士でどうこうなるって有り得ないって。」
「あんたの気持ちはどうなの?
その史登って奴への気持ちは?」
「ど、どうって?どういえば。。。」
「好きなの?嫌いなの?愛してるの?どれ?」
下向いてた彼の顔が、私を真っ直ぐいきなり見た。
彼の視線を感じる。強い意志とも言える。
石のせいか?ヒシヒシと、私の中の血液へ電流が流れるように感じる。
(この気持ちは嘘じゃないね。)
「嘘じゃないよ!本当に好きなんだ。
確かに、初めは利用してやろうと思ったところもあって。。。」
「利用?」
「う、うん。」
「彼の気持ちを?」
「そう。いつも僕と視線が合って、僕、気持悪いって思ったから、
席も変わってもらって、一度学校の中庭に倒れた時、
僕を抱えて家まで連れて帰ってくれたんだ。」
「そう、それで?」
「ママは、史登の家と懇意になりたかったから、
ママは史登の事ばかり褒めて。。。
彼を家に招きなさいって命令されて。
僕なんてどうでもいいんだって、ママに逆恨みしちゃって。」
「そうか、でも助けてもらったんでしょ?理央は。」
「うん、だから、お礼言おうって思って。
そしたら、彼にキスされて、びっくりしたけど。
史登は家に来る?って言ってきた。
なんとなくわかっていたけど、ママの事もあるし、
そういうの、初めてでわかんなかったから。。。」
「んで、家についていったって訳ね。」
「うん。」
「んで、そこで最初に身体の関係ってやつか?」
「そう、その時は、どうでもよかった。
ママはこの関係知ったら、面白いとかだろうとか、
ママを裏切ってるのが、楽しかったりとかって
思ってて。ざまぁみろって感じで思ってた。」
「なるほどね。」
「それからは、彼の家に毎日行くようになって、
僕の家の迎えの車も止めて、二人で帰るようになって。
彼の部屋は一番奥だったから、誰も邪魔する人いないし、
部屋にシャワーもついてるしで。
それに日本画家の息子で、家も僕の家よりすごく広くて、
少し相手してれば、僕も気持ち良かったし。
ママに対して、やっと反抗というか、
そう言うの出来る状態が出来たのが、うれしかった。」
「屈折してるわね。。。親への愛情が・・・」
「うん。そういう気のない僕に、史登は怒ってきて、
その時、SMみたいな事されたんだけど、
その時は、どうして?って思ったんだ。辛かったし・・・
でもそれは僕が悪かったって反省して、
そんな僕にでも、史登はすごく優しくて気を使ってくれて、
僕は、彼も寂しい人なんだって思って、僕と同じだって。」
「嘘が本気になったって事?それとも同情?」
「史登が好きな気持ちがあるって気がついて、
彼しか嫌になっていたんだ。
彼と本当の恋人になれたって思えた。
だから、彼を自分の家にも呼ぶようになって。。。」
「殆どっていうほど、二人でいたんだ。」
「うん、そういうのってあんまり気にしないっていうか、
普通っていうか、僕の学校。。。」
「確か銀蘭だったよね?お坊ちゃま学校の。」
「うん、先輩に憧れる後輩も多くて、付き合ってるとかって
話もよくあるんだ。それに彼も2年ダブってるから、
僕からしたら、同年でも先輩の人でもあるし。。。」
「彼、その史登ってやつのこと、愛してるの?」
「うん、だと思う。いつも助けてくれて、
強姦じゃないけど、言い寄られて迫られてた時も、
いつも、守ってくれて、傍にいてくれて、
すごく安心できて、飾らない自分がそこにはいて。
ママより実際安心できて、愛されてるって思えた。」
「今、どんな気持ち?」
「史登に会いたい。会って謝りたい。
ママのした事、自分の事の悪かった事とか、
もう一度、チャンス欲しいって言いたい。」
「別れた訳じゃないんでしょ?」
「でも、僕あれから連絡取れてないし。
あんな扱いされて、僕なんてどうでもいいって、
思われたどうしようって・・・」
「そうなんだ。」
「リリィさんがタバコ吸うから、彼と似てるなって。
それだけでも泣きそうになったりして。。。
僕、捨てられるかな。。。」
私はやっと眼を開けた。
そこには、グスグス涙を流してる理央がいた。
両手で一生懸命、涙を拭いていた。
私は、座ってる長椅子に立ち上がった。
急に立ちあがったもんだから、
グラスがガシャンと音を立てて、下に落ち割れた。
ボトルは、音で気がついた理央がなんとか押さえて
助かったが、私はそんな事今は、どうでもよかった。
私が今度は理央を見下ろす番。
何が起こるのか、私の行動から眼を離せないでいる理央。
「分かった、んじゃ口開けて!」
「?」
「いいから!」
私は声高くして、理央の顔を両手で挟むようにして、
自分の方へと引っ張った。
(今だ!)
理央の顔を左手で固定して、右手を口の中に突っ込んだ。
何?何が起きてる?リリィ何するんだ?って顔してる理央。
手を突っ込んで、私はあるものを取りだした。
さっき彼が口にした気持ち。
そして彼の口から発せらた音。
それらは、そんな奥まで手を突っ込まなくても取れた。
というか勝手にというか出てきた霊が二つ。
そんな大きくなかったけれど。
水色と紫色の霊、二つを私は理央から取り出した。
それらは小さく輝いていて、指でピンって弾くとふわふわ浮いていた。
「取り出すのに、それほど苦しくなかったでしょ?」
アワアワって口が半開きの理央。
理央は、何これ?という顔してる。
僕の中から異物がでてきたってな位の感覚はず。
取りだすってなかなか、できないから
見た事ないのが、普通の人間。
(口半開きも可愛いなって、私重症かしら?)
なんて、理央の顔見て思っちゃった。
私はふわふわしたこの霊二つ右手で、
一つずつ飲み込むように、口へ運んだ。
「あぐッ!」
ゴクリと飲み込んだ後、理央は飲んだよ!?って顔。
意味が全く分からないし、さっぱりだから、完全に目が泳いでいた。
少し震えているともいえるだろうね。
私が怖いって思ったんだろう。
距離を取ろうと、後ぎりぎりまで、身を引いていた。
いや、後ずさりというんでしょうね。これって。
(ま、説明してないからな〜、てか、しないとだな。)
普通は見えない人も居たりする中で、
彼の反応は二つとも見えた。
石のせいか?
それともこの子の素質?
今はどっちでもいい?
それの確認は後でもできる。
きっちり飲み込んで、昇華するまでは。。。ダンマリだ!
口の中に入って、喉を通るのが分かった。
そして胃に入ったのを、私は自分で確認してから、
理央に私は今の事を説明する事にした。
めんどくさいけど。。。
「さっきのは、言霊と音霊っていうんだよ。
理央の言葉が、本当かどうか?確認して、
あんたの気持ちが嘘じゃないって分かったから、
取りだしたのよん。」
ん?って頭の上に?マークが何個も乗ってるような感じの理央。
理解してもらおうって、サラサラ思ってないから、私。
そしたら、私に今度は異変。
これは私の想定通りの事。
私はブツブツと言いだして、口から包帯のような布を、
エンドレスのように両手で、引っ張り出してきた。
まるで手品でしょうw
床の一部に白い包帯のモノが山盛りになるくらい、
その布は私の口から出てきた。
「理央、来なさいな。」
私は理央をクイっと、首で来いって感じで表わして、
そのたんまり溜まった包帯には、ミミズが小さく這ってるような、
文字か?絵なのか?
わかんないッ様な、にょろにょろした線が縦にいっぱいというより、
気持悪くて、それが体内から出てきた事によって、
気分が悪くなるような曲線ばかり、描かれていた。
溜まりにたまった包帯のようなモノに曲線がいっぱい縦に、
描かれたこの物を、床に飛び降りて、ある所へ運んだ。
理央も私に取りあえず、ついてくる。
たぶん、怖かったんだろう。
同じ部屋の中といえど、私にひっついてないと、
不安だったと思う。
私は立ち止った
理央も立ち止ったけど、段々後に下がっていく。
そこは、さっきの目玉の生贄の場所だった。
私の後ろにひっついていた、理央が少し後ずさりしていた。
私はその生贄を前にして、布をこんもりと手に持ちながら、
引きずりながら、背中の方にいる理央に視線を感じながら尋ねた。
「理央、その記憶はあなたにとってどんなもの?」
「え?」
私のフインキを感じたのだろう。
怖いって言う、こいつ何もんだっていう不安感。
彼の顔を見なくても分かる。
少し振り向く感じで。私もう一度理央に聞いた。
「理央にとって、この記憶はどうしたいの?」
「どうしたいとは・・・?」
「いるの?要らないの?」
「いる!で、でもママのことは。。。」
「ママのことは・・・?」
「まだいい。知ってもらなくて。。。
その時が来たらまたその時で・・・」
「消したい?消したくないの?」
「消さないで。リリィお願い。
史登との事は全部僕にとって必要なんだ。
だから、僕の中から、消さないで。」
「わかった。ユークリッド入ってきて、そこに居るんでしょ?」
「・・・っへへ。」
私はどこも見ないで、ずっといる存在に言った。
え?どこ?って顔の理央は、
可哀そうだけど、またまた驚いた顔をして、
とりあえず扉の方を向いた。どこから聞こえてるか?わかってないのだが。
「ユークリッド、頼んだものは?」
続けて言う。
「あるよ、ほら。」
ユークリッドなるものは、扉の方にゆらゆらして立っていた。
そして、足音とか殆ど、立てないで、
ここはフローリングだが、音を立てないで、
リリィのところに向かってきた。
「理央、驚かしてごめんね。こいつは私の相棒なの。
お行儀悪い子だけど、私に免じて許してやって頂戴。」
ユークリッドは私リリィよりも、いや、理央よりも数十cmも身長が高く、
線の細い男で、髪の毛はリリィと同じ黒で牧師みたいな上下つなぎのような、
ところどころ白の線が入った黒い服を着て、大きなとんがりハットを被っていて、
髪の毛は黒のザンバラって感じで、薔薇の匂いのする男だ。
やぁ!と私と理央に声をかけ、両腕に抱えたモノを床にそっと置いた。
「あっ!」
理央は驚いて、床に置かれたものの方へ動きだし、座りこんだ。
「そう、史登よ。」
私は、理央に言った。
「会いたかったでしょ?
本物だから、大丈夫よ。
ユークリッドに言って、連れて来てもらった。
理央、心配なら起こしてあげて。」
理央は、うんと言って、史登の上半身を起こして、
「起きて、史登。僕だよ。」って何度も言っていた。
「ユークリッド、無茶はしてないでしょうね?」
史登を置いて、私の傍に来たユークリッドを少し睨むようにして言った。
「大丈夫だよ。寝てるときに持ってきたから。
少し、薬は使ったけどね。
理央君。キスしてあげると起きるよ。たぶんだけど。」
ククって気味悪い感じで笑って、理央を見ながら言った。
ユークリッドは近くで見ないと、わからないが眼鏡をかけている。
その眼鏡をいじりながら、立っていた。
「僕は眼鏡をはずすと、何も見えないから、大丈夫だよ。」
理央が、何を気にしてる理由がユークリッドには察知したみたいで、
気まずそうではあったが、私も背にしてるし、
とりあえず、大丈夫だから起こしてあげてと、私も言ってあげた。
返事がないまま、でも理央の動作は背中で感じる。
ユークリッドは見ないと言っていたが、あいつこそ、嘘つきの権化みたいな
野郎だから、どんな方法を使っても見てるだろうとは思ったが、
理央には悪いけど、内緒に私はしておいた。
彼、可愛いねっとユークリッドは私の耳元で言った。
私は、黙ってろ!って心で語り、ユークリッドを睨んだ。
ユークリッドは、おぉ怖ってな表情をして、
私の手のモノを拝見と言って、眼鏡をかけてジロジロ見てきた。
「これが彼から出た霊?」
「そうよ。」
「へぇ〜、結構素質あるんじゃないの?」
「そうね、あんたの代わりにはなるんじゃないの?」
「司祭を怒らすと怖いからね。黙ってるよ。」
私はまたユークリッドはを睨んだ。
やっと彼は静かになった。やっと大人しく私の隣で立つ事を選んでくれた。
(まだかよ。。。早くしないと、これが。。。)
これ以上は待てないかも?って、私は少し焦りもあった。
彼から取った霊二つを具現化して、これを早く使わないと、
これ自体が消えちゃうから。
催促をしようとした時、史登はうっと声をあげた。
(起きたか?)
「史登、僕だよ。理央。わかる?」と、懸命に声をかける理央。
「ユークリッド、何したのよ。こんなに起きないって。」
「う〜ん。少し気持ち良くなる薬っていうか・・・」
「あんたね・・・正直にいいなさいよ。」
また不安そうな顔の理央が目に見えるようだった。
もう、勘弁こんなの繰りかすの!って思いながらも、
一応励ます私。
「大丈夫よ、ユークリッドは医者だから。非合法な物は使わないから。
単に麻酔系の薬を使っただけだから。心配しないで。
何かあったら、私はすぐわかる。
それにこいつをタダではおかないし。
こうやってるときのユークリッドは、やましい事のない証拠だから。」
「あっ!史登!」
史登がやっと目が覚めたみたいだった。
頭を振りながら、少し呻いたが理央の顔が目に入った途端、
史登は理央を抱きしめていた。
(こっちは時間がないんですが。。。)
なんて、私のイライラはそっちのけで、二人は抱擁を交わしてる様子。
そんな私のいら立ちをユークリッドはわかるから、
フフって鼻で笑ってるみたい。
手が空いたら、殴ってやると心に決めて、
取りあえず、大きく私は咳ばらいをした。
「ウォフォッン!」
やっと二人の視線が、私に来た。
私は振りむけないんだって、言えないから。
「お目覚め?史登さん。私はリリィ。こっちの大男はユークリッド。
よろしくね。
時間が無いから、さっさとするけれど。
理央から話は聞いたわ。あなた達が、理央の母親に引き裂かれた時、
あなたはどう思ったの?」
「?」
「時間が無いの!早く答えて!」
この女、なんで怒鳴ってるんだ?って思われてるでしょうけど。
そこは流石相棒、ユークリッドがフォローに入る。
「君たちが見つかった時の事だ。
理央君に対して、君はどう思ったかを教えてほしい。
素直な気持ちを伝えてくれ。
頭がボーっとしてるかもしれないが、
時間がないんだ。答えてくれないか?」
(相棒やるじゃないのさ。)
黙ってたらいい男なんだけどね、こいつも。
そんな感想を抱きながらも、言ってやると調子に乗るから、
言わないでおく。
「私たちはやるべき事があるの、その為にはあなたの協力がいる。
理央があなたにとって、今はどうでもいい存在なら、
答えなくてもいい。心で言って頂戴。
そうじゃないなら、口で言ってほしいの。
理央、あなたは私の隣に立って頂戴。」
理央の不安そうな顔が私にもわかる。
弱々しいオーラ。
私は理央を、私のそばに呼んだ。
どうせ、ここに立たなきゃいけないから。
後先になっただけの話だし。
理央は彼を残すのを心苦しい感じで、史登を見ながら、
私の傍に来た。
「俺は、変わらないよ。リリィさん。」
「言葉にして頂戴。それじゃ私には分からないわ。」
「俺は誰がどうであっても、理央を離さす気はないし、
誰よりも一番に思ってるつもりだ。
それは変わらない。」
「愛してるのね。理央を。」
「あぁ、一度も忘れた事なんてない。」
「ありがとう、史登さん。助かったわ。
少し、ユークリッドがおいたをするけど、
少し我慢してね。」
私はユークリッドに、私が理央にした事と同じ事をするように、
眼で合図した。
彼も承知とばかりに、史登の傍に行き、史登の顔を押さえて、
片手を史登の口の中に突っ込んだ。
「うっ!」
史登の苦しそうなうめき声が出た。
理央は史登の方を振り向こうとしていたところを、
私は前を向け!って大きな声で命令した。
理央はウサギのようにビクっとして、耳を垂れるように、
しょぼんとして、前を嫌々向いていた。
史登のうめき声は少し、理央より長く続いたが、
やっと霊が二つ浮んできた。
それをゆっくりフワフワ浮ばせ、ユークリッドは私にこの二つの霊を
見せてくれた。
すごいだろって言わんばかりの顔が、何気に嬉しそうな感じで。
「ユークリッド、悪いけど食べないで、出してね。
分かってるわよね。」
「司祭の前で食べたら、俺、破門だろ?
する訳ないじゃない。少し待ってろ。リリィ。今出すから。」
ユークリッドは、私と同じように霊を二つ口の中に入れた。
理央より数倍大きい霊だった。
ユークリッドにやってもらって正解だった。
私なら、もっと時間がかかるだろう。
理央もすごいって顔してる。
私は理央に説明してあげた。
「私が理央にした事を史登にして、ユークリッドは私と同じ事をしてるのよ。
理央より大きいでしょ。それだけ気持ちが大きいのよ、あなたに対して。
よかったわね。理央。」
「そうなの?」
「うん。」
「心の中に空洞が出来たのと、同じ事。
この中にまたあなたたちは、新しい二人の思い出を入れる事が出来る。
あと少しだから、我慢してね。理央。」
さっぱり何の事だかわからない、史登だけど。
説明は理央からしてもらってって感じに、私はなっていたから。
彼には全く触れずにいた。
可愛そうだから、理央を彼の元に戻れと指示をして、
そこにじっとしてろって言った。
ユークリッドから布が出てきた。
同じニョロニョロな線がいっぱい書かれた布だ。
量が多いかったが、ユークリッドは、頑張って全部出し切ってくれた。
そして、それをわたしの腕の上に乗せてくれた。
「よし、集まった。ユークリッド。始めるわ。
魔法円の設置をして。簡易でいいわ。問題ないでしょ。」
「そうだね。乗せるだけだからね。」
ユークリッドと意見が合ったところで、彼は魔法円の設置をした。
丁度、この生贄が中央にある円は、古代ソロモン王の紋章と言われる、
円の中に複数の四角と三角形がまじり、
ヘブライ語で書かれた聖書詩編7章の文字が円のいたるところに書かれていた。
ユークリッドは四方の壁に清めの儀式をする。
段々円の淵が明るくなる。
ユークリッドは、東西南北の門を開け、物見の塔への守護神達に挨拶をし、
そして、私たちを諸界の狭間という世界に連れていくことが出来た。
空中に4つの5芒星が青白く光る。
後の二人は円の中に居る事も確認した。
私はそこから言われるまでじっとしてろと命令した。
二人には視えていないだろうが、私たちには視えている世界があって、
それは小さな正方形の箱二つを中心として、
造られた想念の世界でもあった。
そして、ユークリッドは、チャントと呼ばれる歌を歌った。
神々に捧げる歌でもあった。
それが終わると同時に私は言った。
「全ての中心より上下内外至るところ全ての中心より力を受けよ。
諸界の狭間において、全ての世界に置いて我らを助けるべく。
かくあるべし。」と。
私がいい終わると、私の手にあった布が一本ずつ時間差で天井高く飛び、
そして、生贄に布の上に更に勢いよく、巻きついていく。
シュッシュッと音を立てながら、目の前の生贄に巻きついていった。
まるで、自分の意志があるかのようで、多分、後の二人は何がなんだか、
分からない状態であろうけれど。
門が閉まるのまでに時間がない。
私は、とにかく進めていく事に集中した。
「カーヴァンクルの魔犬は出すかね?」
クスクス笑いながら、ユークリッドは私に耳元で囁いた。
「あんた、殺されたいの?」
「冗談だよ。リリィ。生贄が女だとどうしても、調子が悪くてね。」
「年取りすぎじゃない?燃費悪そうだしね。」
ムカつく答えにはムカつく答えで応戦してる私。
でも、ユークリッドがこんな事言う時は、まだ時間があるからという
私への無言の合図だった。
こんなくだらないやり取りの間に布は全て、生贄に巻きつき、
今までの眼は全て隠れて、今度はニョロニョロの線がたくさん書かれた、
布に巻きつかれている状態だった。
ただ、釘で押さえつけられている部分だけに、眼の布は姿を視る事ができた。
そのニョロニョロの文字の上に私は、私の紋章を自分の右手の人差し指を噛み切り、
血を出して、絞りながらはっきりと分かるように書いた。
ユークリッドが釘を左回りに回りながら、抜いていく。
計13本。
ユークリッドは、抜いて私に渡してくれた。
私は言った。
「布よ、巻きつけ。力よ、呪縛されよ。光よ、明らかにせよ。
さぁ、封印せよ。」と。
13本に刺された布は、生贄に急速なスピードで巻きつく。
ランダム的な感覚で、同じように時間差を作って。
全てが巻き終わった時、時間が一時止まった感覚。
私とユークリッドだけは、瞬きもせず、その布を凝視していた。
すると、布は床に溶けていくように少しずつ消えていく。
段々、溶けてなくなると同時に、私は右回りに13本の釘も元ある場所へ
刺していった。
その13本の釘は、布が消えると同時に、布と同じように、
床へ溶けていくように段々下へ落ちていった。
まるで、全てのモノが地球の真ん中に力を封印するために、
戻っていくような感じで。
私はやっと息をつく事が出来た。
時間までに間に合ったから。
そして、言った。
「ユークリッド、門を閉めて頂戴。全部終わったわ。」
「わかった。」
ユークリッドは神々に終わりの挨拶をし、
そして、東西南北の門を閉めていった。
すると、先ほどまで宙に浮いて視えていた青い5芒星も、
下に地球の元に溶けていくように段々薄くなって、
しまいには無くなって消えてしまった。
やっと私は二人に振り無事が出来た。
「終わったよん、これであなた達は大丈夫。」
私とユークリッドが、家にえが見えるように二人の前から少し、
自分たちの位置をずらして、見えるようにしてやった。
理央と史登は同時に声をあげた。
「あっ!」と。
それは仰天ともいえる、ひっくり返るような大声で驚いていた。
「マ、ママ!?」
理央は避けんだ。
理央が生贄にかけようろとした時、ユークリッドは足を出して、
わざと理央を転ばすように仕向けた。
私はそれを怒らない。
何故なら、今ここで生贄に起きてもらっては問題があったからだ。
「まだ起こさないで。
悪いけど。理央。」
こけた理央を見下ろしていった。
ユークリッドが、私にワインを注いで持ってきてくれた。
お疲れって言いながら、そして自分もグラスにワインを注いで、
二人で、乾杯をして飲んだ。
「の、飲んでる場合じゃなッ!」
「起こしたら、失敗になるよ。」
ユークリッドは、理央の言葉をさえぎるようにしていった。
「ごめんね。今から説明するわ。
時間がなかったのよ。
だから、勝手に進めちゃったけどね。」
ワインを飲んだら、少し気が楽になって、
理央にも優しく言える自分に戻ってた。
(なんとか間に合って、成功した。)
フーっと息をついて、へたり込む理央の目の前にかがみこんで、
またニコっとしてやった。
「あんた達の言葉は真実だった。
私はそれを否定したくない。
だから、簡単なのは、あなたのママゴンの記憶を消して、
これは後々だけど、あんた方を認められる包容力を持てば、
問題ないと思わない。
一時だけど、あの記憶はママゴンは消えてるから。
当分、ばれない様に二人ともしてね。
当面、あんたん家では、やんないことね。
ばれる可能性あるから。
後々、あんた達が大人になって、ちゃんと自活できるようにでも、
なれば、カミングアウトしても理解できるようにしてあげたの。
それまで、一時あの記憶は封印させてもらった。
次思い出す時、それはあんた達にとって良い方へ、
彼女の思考が行くように力を向けた。
そのためにも、今は力が馴染むまでそっとしておいて欲しいの。
おわかり?」
今出来る言葉での説明は、したつもり。
ユークリッドもそうそうと眼を閉じで、我ながらすごいとでも
言わんばかりの大きな態度(私にはそう見える)で、
私の話に頷いていた。
初めに史登が唇を切った。
「信じていいのか?」
私はスッと立ちあがって、史登を見降ろしながら言った。
「なんなら、起こしてみる?
知らないわよ。私。
後で困ったって言っても、助けてやんないから。
私が助けるのは一度だけ。
どうする?史登さん。
どうせダメなら、一度は私に賭けてみない?」
こういう時、ユークリッドは、気が利く。
私にキセルに火をつけて、持ってきてれた。
私は仕事の後の一服ッて感じで、フーっと煙を吐いた。
うさんくせぇとでも思ってるんでしょって感じで、
見てるのは、わかってるんだけど、初めだからそういう態度でも、
仕方が居ないのはわかってる。
(さぁ、どうする気?)
もう一服。フーと煙をはき、ユークリッドが灰皿まで用意してくれてる。
そこに灰をコンっと落とした時。
答えたのは、理央だった。
「いつまで?マ、ママはこうしてるの?」
「明日まで、ちゃんとユークリッドがあんたの家まで、
送っていくわ。」
「信じていい?」
「自分で考えて。」
少し考えて、ママを見ながら。
涙も浮かべてたかもしれないけど。。。
理央はちゃんと言った。
「リリィさんの言葉信じるよ。僕。」
「あら、すごい信用ね。私。」
敢えて嫌みで答えてやった。
「だって、僕の話ちゃんと聞いてくれたし。。。」
「ダメな時は、文句を言いに来る!」
「アハハ、私逃げてるかもよ。」
ウっと答えに詰まる理央。
こういう小動物系は苛めると楽しい。
「その辺にしといたら。」
「あらら、ユークリッドに言われたわw
私も年かしら?w
もしかして、理央に惚れた?
ユークリッド。
あ、そうそう。この人もお仲間だから。
それに友達少ないし。仲良くしてやってよw」
私は笑いながら、言ってやったけど。
ユークリッドは、キセル吸う私にまた灰皿を向けてくれた。
そして、灰をまた落とす。
彼は眼鏡をいじりながら、フフって口元歪めて笑った。
「理央がそういうなら、俺も信じるよ。」
ふ〜んって顔で、肩越しに史登を見た。
「上等ね、二人とも。いい根性よ。
私、そういう子大好きなの。
安心して。私は嘘は嫌いだから。」
ヘタってる理央に合わせて、私は屈んでほっぺにキスしてあげた。
そして、既に立ち上がっている史登にも、同じところにキスしてあげた。
「んじゃ、契約成立ね。
明日が楽しみね。
んじゃ、乾杯しましょ。」
ユークリッドが史登と理央にワインの入ったグラスを渡した。
史登はこれは。。って顔したけど。
「大丈夫よ。キリストの血よ。
祝福の時は、飲むべきものよ。
んじゃ、乾杯〜!」
そう言って、私はグラスを高く上げた。
ユークリッドも、同様にして、口にワインを含んだ。
まるで一気飲みのようにも、私のには感じたが。
「ユークリッドさんは身長高いんですね。
史登より大きいみたい。」
理央がグラスを持ちながら聞いた。
「ユークリッドは190以上はあるわよ。
さぁ、飲んで飲んで、
理央に言ったけど、71年モノよ。」
私は、二人が飲んでくれるのを楽しみに待った。
史登には少し知識があるみたいだった。
へ〜っと感心してるみたいで、そこから迷わずグッと飲んだ。
理央は舐めるようにペロッペロッと味わった。
私は二人の様子を微笑ましく眺めていた。
そして言った。
ユークリッドが、私をチラっと見たから。
「ありがとね、飲んでくれて。
悪いんだけど、ここから普通に帰してあげられないの。
いったん、いい子でお寝んねしてくれるかしら?
二人とも。」
私の発言に驚いた二人は、私の顔を眼を見開くような目で見たが、
もう遅かった。
身体の自由が利かないみたいで、立っていた史登は膝をガクっと
ついて倒れかけていた。
理央はもう、半分意識が無かった。
「・・・・・・・」
「言葉にならないでしょ。史登さん。
理央には言ってるけど、ユークリッドは、医者なのよ。
少しの間、あんた達には眠ってもらうわ。
ちゃんと二人とも、無事に帰してあげる。
だって、大きな子供二人なんて、私には邪魔で仕方がないのよ。
おやすみなさい。」
ニコって笑って、史登の唇に私は口づけた。
(これでもう、意識はない。)
その通りに、彼は倒れた。
もうすでに眠りこけてる理央にも、口づけた。
「よくがんばったわね。理央。
また会いましょう。」
「ユークリッド、ここから出るわよ。」
彼は無言で私に頷き、そして、私たちは彼らを少し振り返って、
眠っているのを確認し、重い扉を開けて、この部屋から出ていった。
史登と理央を残して。
こんにちわ、私、リリィです。
って、初めっていうか、前にも紹介したけれど。
一応、言っとく。
占い師で魔術師でもあります。
そんで、催眠療法が得意だったりします。
いきなり、すっごい剣幕の派手なおばさんが来て、
(おばさんって言ったら、殺されそうだけど・・・)
自分の子供の記憶を消してくれって、
言われて、大金置いて子供も置いて、さっさと帰って行った。
何もしなくて、諭吉君がちゃんと立ってくれるくらいの厚さ。
(これでも前金らしい。)
かなり、お金には縁が無い私にとって、
嬉しい話なんだけれど、
子供って、可愛い高校生だったりで、
私的には目の保養となり、文句のつけどころがない、
ウマウマな仕事だったりなのですが。。。
大金の袋を抱えたまま、なんとか笑顔で、
その子と、前向きに話合い。。。なんて
悠長なものではなく、この私に対する
ガードの堅さが、すんごく腹が立ってしまって。
(初対面で、多感な年頃の男の子なら、当然かもね。。。)
わかっちゃいるけれど、なんかムカつく!
でも、小生意気な感じがあって、
そこがまた可愛いんだけど、私の気に障ったというか、
少し苛めてやろうなんて、私の子供っちぃ気持ちが、
かえって、彼を同情し、なんとかしてしまう状況を、
自分で作り出してしまうという、
情けない結果になろうとは、露にも思わず。。。
こういうの墓穴掘るっていうんだよね。
きっと。。。
(ミイラ取りがミイラになったって、
こういう事だよね。。。)
なんて、思いながら、大好物のキセルを一服、
プーッと煙を口から吐いて、輪っか作って、
この後どうするか。。。考えていた。
実際、彼が嫌がるであろうシーンを彼の頭の中から、
自分で覗いたのは事実。
少し、興奮気味というか、感情的な状態だったから、
催眠の状態に落としていくのは、すごく簡単だったけど。
少年と世間では呼ばれる年代の彼が、
あんなすごいHしてたりするのか〜って思うと、
妙に羨ましくもあり、そういう恋愛してたりする彼が少し
妬ましくもありで、全部を視るのを途中で止めてしまった。
(年は取るもんじゃないわね・・・)
彼はまだ眠っている。
スヤスヤ寝てる。
だって、起こしてないから。
てか、起こせなかった。
私の家には地下室がある。
その地下室の彼を一人寝かせたまま、
私は彼と扉を挟んで、外で一服、
少し変わった造りのこの家には、
簡単には行けない、長い長い下る廊下の下に地下室がある。
単に真っ直ぐじゃなくて、カーブもあったりするのですよ。
電気もつけてないから、慣れてるはずの私だって、
一人じゃ怖いくらいの暗さで、ホントに闇で、マジ怖い。
目の前は全くの漆黒の一色で足元なんて見えやしない。
そこをろうそく一本で歩かなきゃいけないこの廊下。
まるでお寺とかにある、地獄めぐりってやつみたいな感じで、
ろうそくつ付けたって、大した光になんてならない。
その先が見えない不安と自分の勘と手探り状態で、
この廊下を歩く心境。
この長い長いくねった廊下が、いつものリリィから、
魔術師リリィと変えていく、私の精神レベルをさらに上げていく
プロセスを辿るのを、具現化したようなこの廊下。
ろうそくもつけずに、実際の私の目には何も見えていないけれど、
心の眼は、この扉向こうの眠り姫が見た夢を、
私の中でリプレイされていて、この真っ暗な空間に投射されて、
私は物思いに耽る。
(私も、案外乙女チックな人間だったんだ。。。
自覚が無かった・・・)
どっかの不良とかやってそうな座り方?膝を抱えてドアにもたれて、
ボーっと膝を抱えて、どこに視線を置くでもなく宙をを眺めていた。
私の口から意味もなく、煙が出てる。
吸ってるか吸ってないんだか?分かんないような状態で、
単にキセルを咥えてるだけって言ってもいい。
とりあえず、煙を口から吐き出して、このどうしようもなくて、
キュンとなってしまった気分を少しでも緩和しようと、
頑張り中だった。
(一回、やつを起こすか・・・)
私は今回は、キセルをちゃんと吸って、ポワっと輪っかを作って、
綺麗に輪っかになって、それがどんどん上に上昇し、
時間とともに、切れ切れに薄く消えてなくなるのを確認したら、
スクッと立ち上がり、重い気持ちと重い扉を一気に開けて、
もう一度彼の傍に座る事にした。
「・・・ぇるかなぁ・・・ぉきて・・・」
パンッ!
両手を彼の頬に充てて、挟み打ちしてやった。
わぁっと、少し慌てた様子で、置き上がった彼。
簡易の長椅子に、真っ白なタオルケットを被せただけで、
ほんと簡単なベッドの様なものの上に、ずっと寝っ転がってた彼。
さすがに、安定は悪いだろうに、
一気に置き上がったモノだから、落ちかけてるところを、
私が手を貸してやって、なんとか落ち転ばずにセーフ。
彼の目の前に回転椅子がある。
そこがずっと彼が寝ている間、彼の頭を覗く為に座っていた椅子。
クルッと椅子の背を彼の方に向けて、ドガっと跨いで座った。
椅子の背中充ての両手をかけ、顎も乗せ、だらけた感じでわざと
そういう風に座った。
彼は上半身を起こして、私の眼を見た。
私も眼を見返す。
変な緊張した空気が流れてた。
彼の頭を覗くのは、止めようと、
私は心の中で、密かに一人で決意した。
彼は私を上から下まで、観察するように見ているみたいだった。
私の今日のお召し物は、ゴスロリ大好き好きな人間だから、
当然、黒まっしぐらで、胸には十字架のネックを何本もかけて、
もちろん、胸の谷間は作。ってます。
ブレスには、ごっついゴシック系のブレスと、
幾つものパワーストーン。一応、仕事上ね。
指に、パワーストーンの指輪とちょっと気味悪い形で、
それどこで売ってんの?みたいなゴツゴツした指輪が
何種もつけてあり、爪は超〜〜ロングでストーンがこれでもか!って
くらいのコテコテ指。
ウエストはゴスロリなら、当然コルセットでウエスト絞って、
スカートも当然超〜〜ミニ。
網目にピンクリボン付き黒のガーターストッキングに、お約束の黒ピンヒール。
髪は、黒の腰までロング&オン・ザ・眉毛で真っ赤な口紅。
長い金のキセルを加えた女を目にしてどうよ、君?
文句ある?って感じで睨み返してやる。
普通に、こんな井出達の女は見たことね!〜って顔で、
ドン引きすんのは、やめてほしかったりするけど。
それ以上、君、固まってるよって感じで、
何の変化もないのが、これまたつまんない。
私は自分で好きでやってんだから。
それより、問題はあんたなんだから。
普通に人間だから、変な目で見るのは止めて頂戴って、
言ってはみたものの。
ここなんかの、処刑場なんですか?僕、これからどうなるんですか?って
やつに言われちゃったw。
確かに、この部屋って儀式用だから、
普通に生きてたら、知らなくてもよくて、見なくてもいい円が、
いっぱいあったり、円の中に三角描かれて、
そんなかに眼玉があったりの円や、円の三角が何個も重なる図形や、
何の意味があるの?っていう乱数のような数字の羅列や、
ビンゴゲームのカードを配られた図形もどきとか、
円に四角が描かれて、なぜ枝?なんか付いてたりする図形が、
天井・壁・床に白いペンキみたいなので描かれてるから、
真っ暗でも少し光って見えてたりすると、
内容分かってる私でも、正直怖いわな〜って思ったする。
(確かに、私も一人じゃ怖かったりけど。)
子供には関係ないのよ、この図形は。
ってビビってない風に大人の余裕で、キセルを飲んで煙を出す。
煙が行ったせいか?目にしみてるみたいで、彼は急き込んでいた。
「取って喰ったりしないわよ。」と、一応慰めの言葉をかけてやった。
ついでに立ちあがり、ツカツカと奥に置いてあるワイン棚から、
ワインを取り出し、二人分グラスに注いで、お盆無しでお行儀悪いが、
彼にも「はい。」って手渡た。
私もまたドスンと椅子に座りながら、早速ワインを口に含んだ。
ついでだから、ボトルも持ってきた。
ボトルのお顔を見ながら、また一口と口に含む。
これは、1971年モノのブルゴーニュ産の上物。
こんなガキに飲ませるには勿体ない代物だけど、
もらってる金額が金額だし、
怖がらせたって意味もあって、少し奮発してやったつもりだけど、
意味わかんないだろうな〜って、横目で見ながら私も彼を観察した。
(てか、未成年なのにねってw)
「僕、お酒なんか。。。」
彼は匂いを嗅いで、お酒とわかったみたいだ。
私が出した酒を小生意気にも、拒否しやがる。
いいの♪いいの♪って手で合図して、言ってやった。
「お酒じゃないわよ。キリストの血よ。」
「え?」
「嫌だったら飲まないでいいわよ。私が飲むから。」
自分はもう、飲み歩して、またグラスにワインを注いで、
それを半分以上飲んだところだった。
仕方がないのはわかってるけど、
一応、舐める程度に、彼はグラスに口を付けた。
そして、小さな声で、私に訪ねてきた。
「あ、あのぉ・・・」
「なに?」
「し、下着、見えてるけど・・・」
(なんじゃ、それってw
そこ、赤くなるとこ?
それ以上の事、やりまくってるのにw)って、
思ったけど、ちと、からかってやりたかったから
軽はずみにも、言ってしまった馬鹿な私。
「これ、見せてもいい下着だから、見えてもいいの。
それ以上の事、やっといて、私の下着見たくらいで、
赤くなったりしないでよね。」
椅子をクルクル中途半端に左右に揺らしながら、
彼の様子がどう変わるか?見てみたくて、
言ってしまった。
グラスの残りのワインを飲み干して、
私はまたグラスにワインを注ぎに、ヤバかったか?と
今頃、少し後悔の念に襲われる。
彼から目線を外さずには、いられなかった。
でも、チラっと見てしまう好奇心。
(私って最悪かも。。。)
彼は何の事?って感じで、一時ぽかんとした感じで、
私は彼の視線を全身でヒシヒシと受けていたが、無視を決め込んだ。
私の言葉の意味が、もしかして自分の事だと想像した時、
彼は、真っ赤と同時に私を怒鳴ってきた。
「ど、どういう意味だよ!さっきの・・・」
「ん?」
(やっぱりまずったか。。。)
彼は身体を私に向け片足降ろし、私の方へ身を乗り出すくらいの勢いで、
私に文句を言ってきた。黙って私は彼の言葉を聞く。
ワイン乃グラスを置くテーブルが近くにないので、手に持っていた
ボトルとグラスを床に置いて、身体を彼の方に今度はちゃんと向けて、
私は仕方がないから、開き直る態度で、彼を見て、モノを言っていた。
お酒は弱くないから、私にとってワインなんてジュースのようなもの。
でも、彼は違うかもしれないけど。
口は災いの元って、わかってるけど、
出てしまった言葉は消せない。
ここで私は腹をくくった。
「んって。。。僕に何したんだよ?」
「何をって?何を?」
「ごまかすなよ!ぼ、僕の事・・・。」
今度は立ちあがって、私に怒鳴ってきた彼。
だけど、手の届く私のところまで来て、詰め寄る根性はなさそうだった。
私は全く動じなかった。彼の怒りがこの程度位なら、尚更。
その場を動かず、じっと彼を私は見続けた。
知ったからって、なんだっていうの?
自分が選んだんでしょ?そういう人生。
自分勝手にてやってる癖にって言いたかったけど、
まだ、子供だから許してあげようと、
慈悲の慈愛の心で温かく、私はこの子を見てあげる事に
今から遅いかもしれないけど、始めた。
私は床からグラスを手にして、クイっと数杯目のワインを飲み干して、
彼に近寄る事もせず、今の位置を保ちながら、
彼と話をする事にした。
彼は私を睨んでいた。私は面白くなった。
(上等じゃない。私に勝てるとでも思ってんの?)
「僕の事が何?あなたの事なんて、私何も知らない。
椿 純子の息子ってくらいしかね。
その椿 純子があなたの記憶を消せって、
いきなりうちに乗り込んできたくらいよ。
私があなたについて知ってる事なんて。」
椅子を足を左右に大きく広げて、
(これで下着はもう、見えんだろう。)
椅子を左右にクルクル揺らして、嘘ついて言って。
フーッとため息ついて、彼を見る。
そして、私の首から下げてるロザリオを手に取り
に軽くキスをした。
私がこれからやることが正しいのか?
見ていてほしかったから。
どう話を展開していいか?私は彼の顔を見ていると悩んでしまう。
どんな時でも、練習より本番に強い私が、
今日はいつになく、言葉を探っていた。
「あなた、お酒回っちゃった?
そんなに睨んだり、怒ったりしないでよ。
私達、自己紹介もまだよ。
ちょっと、落ち着いてくれる?
言っとく。私はリリィよ。
よろしく。」
彼から近づいてくる事は絶対にないと思ったから、
床を勢いよく蹴って、長椅子の彼に椅子を廻しながら近づいた。
私より、少し目線が上な彼に手を出して、握手を求めた。
彼は長椅子に腰をかけるように座って、
出された私の手をじっと見て、それから私の顔をじっと見た。
「あなたは?何て名前なの?」
やっぱり、無反応。思った通り、彼は黙っている。
(・・・・・う〜ん)
何秒?何十秒?数分?経ったかな?
ってくらい、時間の長さを感じるんだけど。。。私。
なんだか、すんごい彼から感情の波動変動が伝わんだけど。
それでもって、それがすごく激しいモノであったりで。
顔を私から背けて、まるで私が汚いかのように、
そんな感じに私は受け取れてしまうくらい、吐き捨てるように言った。
「僕の名前なんて、聞かなくても知ってるくせに。」
「・・・」
(怒り?照れ?どっちかわからないわ。)
もう、いちいち考えて喋ってやるのが、正直めんどくさくなる。
お金の問題じゃなくなってきたいた、私の中では。
「何も聞いてないわ。私。
あんたの口からわね。
私は、あんたの口から聞きたいのよ。
そうやって、ダンマリやってもいいけどさ〜、
そんな事しても、あなたは家に帰れないだけだから。」
不覚にも、ムキになってしまったのは、私の方だった。
少し反省、言葉、ちょっときつかったかしら・・・
なんだか、悔しそうな表情。
でも、なんだか可愛い。
片方しか見えないから、いまいち表情が読めないけど。
こんなところでに私の力を使うのも、もったいない気がしてね。。。
面倒だけど、彼が心を開く事から、始めようと私は思った。
(仕方がない。長期戦?上等よ。どっちが勝つかやってやるわ。)
「長期戦やる気なら、私この部屋から出て、
違う仕事したいんだけど、構わないかな?」
ざまあみろ。やっぱりビビってる。
フフんって口元、嫌味っぽく歪めて、私言ってやった。
彼も案の定、不安そうな顔してる。
あのセリフ言うと、大概の人間は折れる。
もっとも、私の経験上の話。。。だけどw
こんな気味悪い部屋で、変な物ばかり置いてて、
普通は落ち着けない。
よっぽどのオカルト好きじゃないとね。
困ってるって顔してるあの子。
その顔に縦線入ってたみたいだった。
(確かに変な部屋だけど、処刑場はないわよね。。。w)
彼を落とすのは、案外楽かも。。って思いながらも、
私はチラっと目線を反らしている、
彼の顔を下からのぞきこむようにて見た。
この子なりに、この部屋がただの部屋じゃないって事だけはわかってるみたい。
この空間の空気が、彼を圧迫させてるって事くらい、私でもわかる。
(なんだかんだって、やっぱり可愛いよね、この子。)
可愛いからって、今回は私は引けない。
この子の口から直に、教えてもらわなくちゃいけない事が、
沢山あり、いやあるから。
あなたを見据える私の目をしっかり見てみな!って心の訴えが、
彼には聞こえてるか?心配なんだけどね。
目線は反らしたままだけど、彼はやっと口を開いてくれた。
私は真剣に聞いて、質問するを繰り返すだけ。
「・・・僕、僕は椿 理央。」
「理央ね、リリィよ。よろしく。」
取りあえず、第一関門クリア。
少し、ホッとした。彼も普通の子供だってことで。
だけど、私はクスリともしてやらない。
無表情を装いながら、私を言葉を続けた。
彼の中で、私に対するムカつきよりも、
ここに残される不安の方が、勝ったように思った。
(正常な人間の反応ね。この子は、おかしくない。)
「よ、よろしく。リリィさん。」
「リリィでいいわよ。皆、そう言ってるから。
私、年上、年下とかって概念ないの。
結構リベラルな人間だから、何でも来いよw」
やっと、理央が私に近づいてくれた。
確かに私、あの子の頭の中を覗いてるから、
彼の言うとおり、当然名前なんて、わかってるけど、
でも、違うの。彼が私に直接言う事に意義があるの。
椅子をゆっくりと彼に近づけて見る。
そうやって、私は理央に近づいた。
座っても、身長は彼のが大きいみたいね。
ヒールの分で、丁度同じって感じか。。
苦労してなさそうな顔。
その分、母親が苦労してるか・・・
自分の事は棚に上げて、同じ過ちを犯そうとしてるのが、
あの母親には理解出来ないんだろうか?、
名前を教え合った後から。理央は私の顔をやっと直視できるようになっていた。
理央に、私はニッコリしてあげた。
彼もやっとだけれど、私に対して、ちょこっと頭を下げて私にお辞儀した。
何の意味もないお辞儀。そんなの私には全く意味がない。
私は理央に手を出して、再度握手を求めた。
とりあえず、友好的関係を築こうとしてるのよ。
喧嘩がしたい訳じゃない。
ただ、確かめたかった。
彼の潜在意識を見れば、簡単に彼の事なんてわかるけど、
私は彼の、彼の口から生の音がどうしても欲しかった。
色んな意味でね。
彼は恐る恐るッて感じで、手を出してくれた。
軽く握るだけ。
私も圧力をかけるつもりは、毛頭ないから。
握手が終わると、さっさと手を除けて、
彼から、少し距離を開ける為に、椅子をスッと後に引いた。
理央も長椅子にちょこんと座り直しするみたいに腰を少し上げた。
両手を長椅子にかけて、足を抛り出すように座り、
恐る恐る口を開いて、私に訪ねてきた。
早速ですか〜って思ったけど。
「き、聞いてもいいですか?」
「私に質問?いいわよ、どうぞ。」
覗かないでくる、質問ってなんだか新鮮で、
どんな質問か、ワクワクしちゃって、
この座ってる椅子は回転具合が中々だったりなので、
クルクルって、左右30度ずつくらい、
廻しちゃったって感じねw
こいつ、きっとこの女なんなんだ?って思ってるわよね。
もっと混乱しちゃえって思いながら、
楽しみながらw彼の声を待ってた。
でも、質問の内容は大体想像できるけど。
「こ、この部屋なん、何なんですか?
薄暗いし。。。ろうそくだけなんて。。。」
(そらきたw。どっちなんだよね。
私の身なりか?この部屋の変なところの話か?
どっちかなのよ。)
ちと、小悪魔チックに、笑みを浮かべながら、
恐怖をもっと増やしてやりたい気分で、私は答えていく。
「今時じゃない?って感じ?」
「な、なんか不気味な感じがして。。。
だって、あそこになんか丸まって、包帯巻かれて、
包帯みたいなのにも、なんか描かれてるし、
まして、釘で留められてるって感じが。。。」
ふ〜ん、あれね〜って感じで、彼の不気味に思ったモノに、
顔だけそっちに向けて、彼について思った事。。。
彼は結構、勘がいいかも。
暗いからぼんやりとしか見えないんだけど、普通は。
だって、ろうそくが数十本しかないし、どこが奥か手前はどこまで?
なんて、普通はわからないから。
よく、目線反らしてた割には観察してる!って印象を持った。
どこまで答えてやるかな〜と考え中。
もっと気持ち悪い事言ってやろうかとも思ったけど、
本題にいけないと困るから、ある程度で抑えようと、
私の考えはまとまった。
「そうね、あれは生贄ってやつかな。
頭の先から足の先まで、包帯みたいな布でグルグル巻いてる。
包帯のありとあらゆるところに眼が描かれていて、
その上から、動きを封じる為にまた包帯のような布でテープみたいに、
巻いて釘で止めてる。
蝶か、なんかのさなぎみたいなもんと思って。
ま、中身は内緒だけどね。」
この辺で終わりにして、反応を見た。
あれに眼が釘づけって感じだった。
怖いんだなって私、確信した。
続けて、喋って一応軽く教えてやろうと、答えをまとめた。
「ここは、私の本来の仕事場。
所謂、テンプルって場所。祭壇とも言う。
理央は気持ち悪い?
でもね、ここは意識や感情の開放場でもある。、
怖く見えるのは、あなたの心に何かがあれを
そう見えるだけ。
だって、普通に円と数字か記号しか書いてないもん。」
(ま、こんな家、普通にってないけどねw)
私的に少しは、気持ちを楽にしたやりたかったから、
バカっぽく喋ってみた。
彼の刺さる刺棘しい視線を少しでも緩和してみたくて。
「・・・そうやって、僕のも見たの?」
理央の視線が、私をグサグサ刺してくる。
興味の対象に私は、変わったのかしら?
真っ直ぐな、純粋な目でキラキラして見ていた。
また私は、ゆっくりと彼に椅子を近づけてみた。
彼が真剣勝負を挑んでるなら、そのお望みのままにってね。
「痛いとこ、ついてくるわよねw
確かに見たけど、その前にきこえたんだよね。。。
聞いてってお願いする声がさ。
あなたの中から。
だからあなたを眠らして、見せてもらった。」
「どうやって?眠らせたの?
何にも飲んでなかったのに?」
今時ね。。。
人を眠らせるのは薬だけ?って思ってるみたい。
私はポケットに入っている、ペンデュラムという先っぽに、
紫色の石がついている、輪っかにはなっていないけれど、
一本のチェーンがついたモノをだして、
彼の目の前で、右手に持って揺らし始めた。
紫の石が下になって、チェーンの上のところを指先で持ち、
石が揺れている。
先っぽに金の装飾がついていて、結構綺麗なのもの。
「これ。
これで寝かせた。」
ペンデュラムはまだ揺れてる。振り子みたいに。
見たらまた寝るから直視しないでよって説明入れて、
私はまたペンデュラムをポッケに直した。
彼の表情は、こんなもので?って指さすくらい、
簡単な造りのモノに見えて、有り得ないって顔していた。
別に信じてもらわなくてもいいんだけど、
結構疑り深い性格って分かったから、
見えたモノをある程度、教えてあげた。
史登ってやつとどうやって知り合ったか?
理央が倒れた時、史登と向井地が、
あなたの家に向かったとか・・・
その史登とのベッドの中での事とか・・・
簡単に話してあげた。
こんなの魔術じゃなく、この部屋でもなくてもいいんだけど、
静かな方がいいかな?って思ってここにしただけで
理央には、疑う事が余地が無いというか。。。。
理央は、あっけなく私の話に堕ちた。、
私的にはもう少し反論とかしてもらって、ごねてもらう方が楽しみでもあったけど、
面白くな〜いとか、物足りね〜とか、不謹慎だけど思った。
物足りないモノを埋めるように、またワインを床から取って
今度は椅子じゃなくて、長椅子の彼の横に座って
彼と、話をしていこうと思ったので、席移動!。
ついでにキセルも吸いながら。
「こんなもので?って思ったでしょ?
結構出来るもんなのよw
初めて知った?
聞いたことあるかな?ダウジングって。
これもその一つなのね。
ま、私は何でも出来るからw」
ダウジングは、知らなかったみたい。
へ〜って顔してる理央。
ちょっとは、いい気分にさせてくれるじゃないって思っちゃった。
理央はさっきの見せてくれって、私に頼んできた。
(興味あるのかな?見せるくらい何でもないけど・・・)
私はポッケからだして、彼に渡してあげたけど、
紫色の石が珍しく思えたのかな?
自分で揺らしてみて、これで寝ちゃうんだって、
ある意味感心して、揺らして遊んでいた。
(こうなると、普通に少年なんだけどね。。。)
「あげようか?」
「えっ?」
驚いて、私を見る表情の彼は、これまた結構可愛い。
これ自体持ってても、技術がないと寝ないし。
持ってるだけなら、アクセと変わらない。
何の害もないから。
「いいわよ。あげる。
勝手に視てるし、お詫びも兼ねてw
あげるわ。」
「ホントにいいの?」
「いいわよ、高いもんじゃないし。あげる。」
「あ、ありがとう。」
ぺこっと、軽く私に頭を下げて、
嬉しそうに紫の石を綺麗だって言って見ていた。
「あ、一応言っておくけど、
これだけじゃ、寝ないからw
腕がいるわよ。w」
と、付けたし。
え、そうなの?って表情も、可愛かったり。。
何に使うつもりよ!って突っ込みたかったけどやめた。
聞くだけ、野暮?ってやつと思ったから。
いちいち可愛いな〜って思いながら、
横目で彼の表情は逐一チェック!。
「だって、教えられないわよ、
そんなの。
ま、アクセにでもしなさいよ。
私が使ってたから、他のよりは結構霊性強いし。
お守り程度にはなるから。
チェーンだけ変えたら、ネックレスにはなるわよ。」
そうだね。。。って少し残念そうだけど、
可愛いから、ワイン飲みながら、
一言アドバイスしてあげ。
とにかく、早くこの件片付けて、次へ行きたい私としては、
彼にご機嫌を直してもらう事が、重要な事でもあった。
「霊性って?なに?」
「霊性?
そうね〜この場合だと、
守ってくれる石の力の強さって言う感じかな・・・」
「色んな意味があるの?霊性って?
この石、持つと強くなれるの?」
「色んな意味はないけどね。これの使い方としてって意味で。
体力が出てくるとかってんじゃないわよ。
精神的な強さを与えてくれるっていうか。。。
あと、勘とか良くなったり、
ひらめきが強くなったりとかってあるよ。」
そうなんだ。。って顔して、まじまじ石を見る理央。
視なくても、彼の考えが分かったりする私。
私も少し閃いた。
すくっと立ち上がって、でもグラスは離さない私だけどw
奥の方へテクテクと歩いていった。
少しガサゴソと物色中。
確かこの奥にって、私の忘れっぽい記憶をなんとか手掛かりに、
机に上半身乗っかって、引き出し漁ってる私。
当然、彼の方からすれば、また下着が見えてるよって、
状態なんだけれど。
この年なったら、あんまり気にもしなくなり。。。
今の私より、たぶん理央の方が、エロ可愛いんだと思う。。。と
我ながら、理央に感心してたりする。
(私も甘いよな〜。)
「っと、みっつけたとッ!」
以前、引き出しの奥底に、こんなの使えね〜って投げ飛ばしたはずの
同じような代物を発見して、天高くゲットした物を掲げて、
ニッコリ満面の笑みで、理央の方を振り向きニタって笑った。
またカツカツ歩いて、彼の隣にガタっと座る。
手に持ったモノにすごく興味があるみたいで、
私の手をずっと直視の理央。
(可愛いな。。。史登が夢中にもなる訳だわな。。。
こりゃ、たまらんわ。)
なんて彼の顔を見ながら、思ったりして、
彼の手に私のゲットした代物を乗せてやった。
それは同じタイプの石が薄ピンクのペンデュラム。
サーモンピンクが、理央には合いそうな気がしてね。
「ついでにこれもあげるわ。
さっきの霊性が強いものんで、こっちは恋愛がかなうやつ。
あんた的には、こっちのピンクのが良くないの?」
どうよ、あんたっ?て感じで、顔をわざと覗きこむ。
少しだけど、赤くなる理央の顔を生で見ちゃってると、
もし、私も男であって、理央が男だってわかってても、
抱きついて、押し倒したくなるよなって、
思っちゃうくらい可愛いやつ。
私って、ホント腐女子ってやつだよねw
「ピンクはあんまり使ってないから、
どんなのかよくわかんないけど、石にお願いしたらいいよ。
恋愛がうまくいくようにって。
ピンクはローズクォーツ、紫はアメジストって言うのが、
石の名前よ。」
「う、うまくって。。。でも、記憶消すとかって。。。
言って・・た。」
「それは、あんたのママゴンが言ってるんでしょ?
あんたはどうなの?
これね、ペンデュラムって言ってさ、
自分が好きな相手がどう思ってるかとかって、石にね聞くの。
ま、例えば、そこにYESorNOのマークを勝手に、
作って置いておくとしよう。
そこで、廻しながら聞くの、相手はどう思ってる?って、
そしたら、どっちかに動いてくれる。
その止まった方向が答えって言う風に、本来は使うんだよね。
ただ、私みたいに催眠にも使えるし、チェーン変えたらお守りにもなるって、
便利な奴なのよ。
でも、そういう風に答えてくれるまで、石とはだいぶん、仲良くなってないと、
ダメだから。アクセで使えば?石もメンテいるからめんどくさいわよ。」
またワインを注ぎながら、若い子相手に飲むのって、
気持ちいい感じになってきながら、
もう一口を何度も繰り返して飲んでたりする。
よし!理央は嬉しそうにしてる、私へ心もある程度開いた。
こっから、ぶっちゃけトークだ!
「ねぇ、聞きたいんだけど、
あんた、ほんとに記憶消してほしいの?」
えっ?って顔をして私を見た。
何驚いてんの?って思ったけど、
私がキセル吸いながら、ワイン片手に言っても
単なる酔っ払いのたわごとにしか聞こえないかもしれないなって
自分がその立場なら、思うかもって考えたから。
彼にも一杯、飲めって注いで手渡した。
今度は少し少なめにして。
飲むの?って、顔をして私に見せるけど、私が注いだ酒が飲めんのか!って、威嚇して、
顎でくいっと促して、飲めよっと命令。
理央はしぶしぶ飲んだ。バツ悪そうに
その顔を見るだけでも、私は楽しくってしょうがない。
「しぶ。。ッ」
「あら、何度も言うけど、これはキリストの血よ?
しぶっ?ってないでしょw
それに、これ上物よw
あんたが生まれる前から、作られてて眠ってた代物。
高級品よwほんと、お子ちゃまね〜w」
アハハって笑いながら、キセルを吹かす。
私は、煙の先をなんとなく見てた。
だんだん薄く引き延ばされて、消えていく煙。
遊びはこの辺にして、そろそろ本題に入らないとって。
少し、ワインは止めにして、彼の話を聞き出す方に誘導しようと、
口卑しいのか?なにか、ないとイライラしちゃう性格だったりする。
彼から口を割ることはないだろう。
だからと言って、私は待つ気もない。
私は、いつも直球でしか勝負はしない。
子供かもしれないが、恋愛もそこそこやった人間が目の前にいる。
だからこそ、対等に勝負してやらなくちゃって、思った。
視なくてもわかる。
理央が史登ってやつを、どれだけ好きかって事は。
理央の目は、もう十分に恋する大人の目だから。
私は、彼の方に向いて、胡坐かいて座って、真っ直ぐに、
長椅子に座って、彼を見る事にした。
私の体勢が変わって、目つきが少し変わったのも、
彼は察したのか?少し後ろに身を引いていた。
(また、下着見えてる?
それか、リリィが酔っ払ったとでも思ってるのかしら?
言っとくけど、私ザルだから。。。)
と、心の声が叫んでる。
ま、私としてはどっちでもいい。
そんなの関係ないから。
少しずつだけど、彼は私に心を開いた。
それが証拠で十分だった。
「私、酔っ払ってないので、あしからず。
それと、私は直球勝負しかしない。
あなたの気持ちをあなたの言葉で聞かせて。」
一方的に投げ掛ける私の言葉に、何の反応もなかった。
半分以上意味が分かってないと見た。
彼は、取りあえずという意味だろう、うんとだけ、頷いた。
「何個か、質問する。
真面目に答えて。
初めにも言ったけど、リベラル派です。
それに私自身こんななりの女。
偏見とかそういう固定観念は一切無いから。
言いたい事言って頂戴。
もう、催眠状態は嫌でしょ?」
冗談混じりえたつもりなので、クスって笑ってあげた。
少しここで緊張を解そうと思っただけ。
無理矢理答えを引き出したって、意味がないから。
その意図だけは、分かってもらえたんだろう。
そこはしっかりと、うんと理央は頷いた。
理央も身体を私に向けて、足を抱えて座った。
(上等ね。いい心構えし、いい面してんじゃないの。)
「んじゃ、早速。
いつ、見つかったの?
二人の関係は?」
理央の目の表情が一気に曇った。
というか、身体が硬直?固まったっていうやつか。
あまりに直球すぎたか。。。
でも、聞かなくちゃいけない事だから、仕方がない。
口から出た言葉を消すことは出来ない。
でも、私は信じていたい。彼の本音が出る事を。
あなたを一人の人間として、私は見てるから。
私からは、逃げないで欲しかった。。
何の変化もない二人、全く動かないといってもいいくらい。
いや、彼は微かに戦慄いてるというか・・・
その数秒でも、私にはすっごく長く感じた。
でも、待つ事を知ってる私は、少し目を伏せた。
真実を欲しがる私の目が、彼には鋭い矢のように思えるかもしれない。
そんな矢のように視線が刺さるようでは、
彼以外であっても誰であっても、話せる事も話せないだろうから。
でも、理央は少しずつ話してくれた。
私のアンテナがピクッと動く。でも、目は閉じたままで胡坐もかいたまま。
「ぼ、僕の家で。。てか、全部見たんじゃ?
こんなこと、今更僕が言わなくても。。。」
「僕の家でどうしたの?」
私は強い口調で、怒鳴る感じで言い放った。
奴の弱い意志の言葉なんて、聞かない。可愛いってだけでは許さない。
今は、話だけを進める事に私は集中した。
(さあ、話せ。そして私が欲しいモノを頂戴。)
口調の荒さに私の真剣さが、理央にも伝わったみたい。
理央は嫌々?いや、それより恥ずかしさの方が勝ってたか。
さっきまで真正面に私を見ていた視線は、いきなり下に向きながら、
私の顔を全く見ないで、話していった。
「僕の家に彼が来る事は、何度かあったんだけど、
その日も、ママは帰って来る日じゃないって事で、
僕も安心して、彼を呼べたんだ。
そしたら、ママは急に帰ってきて、使用人の中の一人が
ママに彼が来てるのを言ったみたいで。
たぶん、ママは嬉しかったんだと思う。
彼と僕が仲良しで家にも来てくれるようになってって、
だから、ママは・・・」
理央の言葉は段々小さくなって、聞き取れないくらいの声の音になった。
(そこが大事だちゅ〜のに!)
説明は後で、とにかく音をくれって思ってるのに、
小さくなっていくなんて!信じらんれない!
ちと、怒りモードが私の中で発令されたようで、
彼には悪いが、語尾を強めて、理央に言った。
「ママはどうしたの?」
「え?」
「え?じゃわからない。ママはどうしたの?
聞こえない。ちゃんと答えて。」
私は目をずっと閉じたままだった。でも、言葉は強く真っ直ぐに。
顔も当然、理央へ真っ直ぐ向けて。
私にとてって今は、理央に喋らすことが、一番の目的だったから。
フラフラした私と、うって変わった今の態度が、怖かったのか?
理央は大人しく私の言う事に従った。
人に話をするなんて、初めてだと思うから。
可哀そうでもあるのだが、ここは折れてもらわないと、仕方がないのよ。
言いたくないオーラが理央の全身から感じたけれど、そんなの私は全く無視!
観念した理央は、この頃から普通に話せるようになってきた。
「ママが僕の部屋にいきなり入ってきたんだ。
ノックもしないで。。。
でも、されてても分かんなかったかもしれない。
僕達、Hしてた最中だったから、そっちに夢中で。。。」
「それで?」
「僕達いい訳のしようもなくて、ママはそれを見て発狂するくらい、
大きな声っていうか、すごい声だしてた。」
「なにか言われた?ママに」
「何してんの?あんた達みたいな感じで言われて、
その声で僕達もびっくりして、途中だったけど、
服に二人とも慌てて着替えて、でももう僕達の言葉は聞いてくれなくて、
ママは彼を追い出して、僕の携帯も取り上げられて、
そっから、彼にも学校にも会ってないし、行ってない。」
「その彼に何か言ったの?あなたのママは。」
記憶をたどってる?それとも考えてる?どっち?
冷たい空気が余計に重く感じてしまう。
でも、答えて、理央。あなたの為でもあるから。
多分、一生懸命考えたんだと思う。
言葉を選んでいるのか?少し考えた様子の彼。
「とりあえず、帰ってくれって。
でも感じ的には、まるで叩き出すって感じだった。
それからも僕の話は全く聞いてくれなくて、ママは。
ママは僕が病気だって、思っちゃって。。。
精神科とか、心療内科ってところとか、
色々、行ったけど、どこもダメで。。。」
「ダメッて何が?」
「僕が、彼を好きだって事が、頭から消えないっていうか。。。」
「ママは男同士っていうのが理解できなくて、
女と男でも上手くいかないのに、男同士でどうこうなるって有り得ないって。」
「あんたの気持ちはどうなの?
その史登って奴への気持ちは?」
「ど、どうって?どういえば。。。」
「好きなの?嫌いなの?愛してるの?どれ?」
下向いてた彼の顔が、私を真っ直ぐいきなり見た。
彼の視線を感じる。強い意志とも言える。
石のせいか?ヒシヒシと、私の中の血液へ電流が流れるように感じる。
(この気持ちは嘘じゃないね。)
「嘘じゃないよ!本当に好きなんだ。
確かに、初めは利用してやろうと思ったところもあって。。。」
「利用?」
「う、うん。」
「彼の気持ちを?」
「そう。いつも僕と視線が合って、僕、気持悪いって思ったから、
席も変わってもらって、一度学校の中庭に倒れた時、
僕を抱えて家まで連れて帰ってくれたんだ。」
「そう、それで?」
「ママは、史登の家と懇意になりたかったから、
ママは史登の事ばかり褒めて。。。
彼を家に招きなさいって命令されて。
僕なんてどうでもいいんだって、ママに逆恨みしちゃって。」
「そうか、でも助けてもらったんでしょ?理央は。」
「うん、だから、お礼言おうって思って。
そしたら、彼にキスされて、びっくりしたけど。
史登は家に来る?って言ってきた。
なんとなくわかっていたけど、ママの事もあるし、
そういうの、初めてでわかんなかったから。。。」
「んで、家についていったって訳ね。」
「うん。」
「んで、そこで最初に身体の関係ってやつか?」
「そう、その時は、どうでもよかった。
ママはこの関係知ったら、面白いとかだろうとか、
ママを裏切ってるのが、楽しかったりとかって
思ってて。ざまぁみろって感じで思ってた。」
「なるほどね。」
「それからは、彼の家に毎日行くようになって、
僕の家の迎えの車も止めて、二人で帰るようになって。
彼の部屋は一番奥だったから、誰も邪魔する人いないし、
部屋にシャワーもついてるしで。
それに日本画家の息子で、家も僕の家よりすごく広くて、
少し相手してれば、僕も気持ち良かったし。
ママに対して、やっと反抗というか、
そう言うの出来る状態が出来たのが、うれしかった。」
「屈折してるわね。。。親への愛情が・・・」
「うん。そういう気のない僕に、史登は怒ってきて、
その時、SMみたいな事されたんだけど、
その時は、どうして?って思ったんだ。辛かったし・・・
でもそれは僕が悪かったって反省して、
そんな僕にでも、史登はすごく優しくて気を使ってくれて、
僕は、彼も寂しい人なんだって思って、僕と同じだって。」
「嘘が本気になったって事?それとも同情?」
「史登が好きな気持ちがあるって気がついて、
彼しか嫌になっていたんだ。
彼と本当の恋人になれたって思えた。
だから、彼を自分の家にも呼ぶようになって。。。」
「殆どっていうほど、二人でいたんだ。」
「うん、そういうのってあんまり気にしないっていうか、
普通っていうか、僕の学校。。。」
「確か銀蘭だったよね?お坊ちゃま学校の。」
「うん、先輩に憧れる後輩も多くて、付き合ってるとかって
話もよくあるんだ。それに彼も2年ダブってるから、
僕からしたら、同年でも先輩の人でもあるし。。。」
「彼、その史登ってやつのこと、愛してるの?」
「うん、だと思う。いつも助けてくれて、
強姦じゃないけど、言い寄られて迫られてた時も、
いつも、守ってくれて、傍にいてくれて、
すごく安心できて、飾らない自分がそこにはいて。
ママより実際安心できて、愛されてるって思えた。」
「今、どんな気持ち?」
「史登に会いたい。会って謝りたい。
ママのした事、自分の事の悪かった事とか、
もう一度、チャンス欲しいって言いたい。」
「別れた訳じゃないんでしょ?」
「でも、僕あれから連絡取れてないし。
あんな扱いされて、僕なんてどうでもいいって、
思われたどうしようって・・・」
「そうなんだ。」
「リリィさんがタバコ吸うから、彼と似てるなって。
それだけでも泣きそうになったりして。。。
僕、捨てられるかな。。。」
私はやっと眼を開けた。
そこには、グスグス涙を流してる理央がいた。
両手で一生懸命、涙を拭いていた。
私は、座ってる長椅子に立ち上がった。
急に立ちあがったもんだから、
グラスがガシャンと音を立てて、下に落ち割れた。
ボトルは、音で気がついた理央がなんとか押さえて
助かったが、私はそんな事今は、どうでもよかった。
私が今度は理央を見下ろす番。
何が起こるのか、私の行動から眼を離せないでいる理央。
「分かった、んじゃ口開けて!」
「?」
「いいから!」
私は声高くして、理央の顔を両手で挟むようにして、
自分の方へと引っ張った。
(今だ!)
理央の顔を左手で固定して、右手を口の中に突っ込んだ。
何?何が起きてる?リリィ何するんだ?って顔してる理央。
手を突っ込んで、私はあるものを取りだした。
さっき彼が口にした気持ち。
そして彼の口から発せらた音。
それらは、そんな奥まで手を突っ込まなくても取れた。
というか勝手にというか出てきた霊が二つ。
そんな大きくなかったけれど。
水色と紫色の霊、二つを私は理央から取り出した。
それらは小さく輝いていて、指でピンって弾くとふわふわ浮いていた。
「取り出すのに、それほど苦しくなかったでしょ?」
アワアワって口が半開きの理央。
理央は、何これ?という顔してる。
僕の中から異物がでてきたってな位の感覚はず。
取りだすってなかなか、できないから
見た事ないのが、普通の人間。
(口半開きも可愛いなって、私重症かしら?)
なんて、理央の顔見て思っちゃった。
私はふわふわしたこの霊二つ右手で、
一つずつ飲み込むように、口へ運んだ。
「あぐッ!」
ゴクリと飲み込んだ後、理央は飲んだよ!?って顔。
意味が全く分からないし、さっぱりだから、完全に目が泳いでいた。
少し震えているともいえるだろうね。
私が怖いって思ったんだろう。
距離を取ろうと、後ぎりぎりまで、身を引いていた。
いや、後ずさりというんでしょうね。これって。
(ま、説明してないからな〜、てか、しないとだな。)
普通は見えない人も居たりする中で、
彼の反応は二つとも見えた。
石のせいか?
それともこの子の素質?
今はどっちでもいい?
それの確認は後でもできる。
きっちり飲み込んで、昇華するまでは。。。ダンマリだ!
口の中に入って、喉を通るのが分かった。
そして胃に入ったのを、私は自分で確認してから、
理央に私は今の事を説明する事にした。
めんどくさいけど。。。
「さっきのは、言霊と音霊っていうんだよ。
理央の言葉が、本当かどうか?確認して、
あんたの気持ちが嘘じゃないって分かったから、
取りだしたのよん。」
ん?って頭の上に?マークが何個も乗ってるような感じの理央。
理解してもらおうって、サラサラ思ってないから、私。
そしたら、私に今度は異変。
これは私の想定通りの事。
私はブツブツと言いだして、口から包帯のような布を、
エンドレスのように両手で、引っ張り出してきた。
まるで手品でしょうw
床の一部に白い包帯のモノが山盛りになるくらい、
その布は私の口から出てきた。
「理央、来なさいな。」
私は理央をクイっと、首で来いって感じで表わして、
そのたんまり溜まった包帯には、ミミズが小さく這ってるような、
文字か?絵なのか?
わかんないッ様な、にょろにょろした線が縦にいっぱいというより、
気持悪くて、それが体内から出てきた事によって、
気分が悪くなるような曲線ばかり、描かれていた。
溜まりにたまった包帯のようなモノに曲線がいっぱい縦に、
描かれたこの物を、床に飛び降りて、ある所へ運んだ。
理央も私に取りあえず、ついてくる。
たぶん、怖かったんだろう。
同じ部屋の中といえど、私にひっついてないと、
不安だったと思う。
私は立ち止った
理央も立ち止ったけど、段々後に下がっていく。
そこは、さっきの目玉の生贄の場所だった。
私の後ろにひっついていた、理央が少し後ずさりしていた。
私はその生贄を前にして、布をこんもりと手に持ちながら、
引きずりながら、背中の方にいる理央に視線を感じながら尋ねた。
「理央、その記憶はあなたにとってどんなもの?」
「え?」
私のフインキを感じたのだろう。
怖いって言う、こいつ何もんだっていう不安感。
彼の顔を見なくても分かる。
少し振り向く感じで。私もう一度理央に聞いた。
「理央にとって、この記憶はどうしたいの?」
「どうしたいとは・・・?」
「いるの?要らないの?」
「いる!で、でもママのことは。。。」
「ママのことは・・・?」
「まだいい。知ってもらなくて。。。
その時が来たらまたその時で・・・」
「消したい?消したくないの?」
「消さないで。リリィお願い。
史登との事は全部僕にとって必要なんだ。
だから、僕の中から、消さないで。」
「わかった。ユークリッド入ってきて、そこに居るんでしょ?」
「・・・っへへ。」
私はどこも見ないで、ずっといる存在に言った。
え?どこ?って顔の理央は、
可哀そうだけど、またまた驚いた顔をして、
とりあえず扉の方を向いた。どこから聞こえてるか?わかってないのだが。
「ユークリッド、頼んだものは?」
続けて言う。
「あるよ、ほら。」
ユークリッドなるものは、扉の方にゆらゆらして立っていた。
そして、足音とか殆ど、立てないで、
ここはフローリングだが、音を立てないで、
リリィのところに向かってきた。
「理央、驚かしてごめんね。こいつは私の相棒なの。
お行儀悪い子だけど、私に免じて許してやって頂戴。」
ユークリッドは私リリィよりも、いや、理央よりも数十cmも身長が高く、
線の細い男で、髪の毛はリリィと同じ黒で牧師みたいな上下つなぎのような、
ところどころ白の線が入った黒い服を着て、大きなとんがりハットを被っていて、
髪の毛は黒のザンバラって感じで、薔薇の匂いのする男だ。
やぁ!と私と理央に声をかけ、両腕に抱えたモノを床にそっと置いた。
「あっ!」
理央は驚いて、床に置かれたものの方へ動きだし、座りこんだ。
「そう、史登よ。」
私は、理央に言った。
「会いたかったでしょ?
本物だから、大丈夫よ。
ユークリッドに言って、連れて来てもらった。
理央、心配なら起こしてあげて。」
理央は、うんと言って、史登の上半身を起こして、
「起きて、史登。僕だよ。」って何度も言っていた。
「ユークリッド、無茶はしてないでしょうね?」
史登を置いて、私の傍に来たユークリッドを少し睨むようにして言った。
「大丈夫だよ。寝てるときに持ってきたから。
少し、薬は使ったけどね。
理央君。キスしてあげると起きるよ。たぶんだけど。」
ククって気味悪い感じで笑って、理央を見ながら言った。
ユークリッドは近くで見ないと、わからないが眼鏡をかけている。
その眼鏡をいじりながら、立っていた。
「僕は眼鏡をはずすと、何も見えないから、大丈夫だよ。」
理央が、何を気にしてる理由がユークリッドには察知したみたいで、
気まずそうではあったが、私も背にしてるし、
とりあえず、大丈夫だから起こしてあげてと、私も言ってあげた。
返事がないまま、でも理央の動作は背中で感じる。
ユークリッドは見ないと言っていたが、あいつこそ、嘘つきの権化みたいな
野郎だから、どんな方法を使っても見てるだろうとは思ったが、
理央には悪いけど、内緒に私はしておいた。
彼、可愛いねっとユークリッドは私の耳元で言った。
私は、黙ってろ!って心で語り、ユークリッドを睨んだ。
ユークリッドは、おぉ怖ってな表情をして、
私の手のモノを拝見と言って、眼鏡をかけてジロジロ見てきた。
「これが彼から出た霊?」
「そうよ。」
「へぇ〜、結構素質あるんじゃないの?」
「そうね、あんたの代わりにはなるんじゃないの?」
「司祭を怒らすと怖いからね。黙ってるよ。」
私はまたユークリッドはを睨んだ。
やっと彼は静かになった。やっと大人しく私の隣で立つ事を選んでくれた。
(まだかよ。。。早くしないと、これが。。。)
これ以上は待てないかも?って、私は少し焦りもあった。
彼から取った霊二つを具現化して、これを早く使わないと、
これ自体が消えちゃうから。
催促をしようとした時、史登はうっと声をあげた。
(起きたか?)
「史登、僕だよ。理央。わかる?」と、懸命に声をかける理央。
「ユークリッド、何したのよ。こんなに起きないって。」
「う〜ん。少し気持ち良くなる薬っていうか・・・」
「あんたね・・・正直にいいなさいよ。」
また不安そうな顔の理央が目に見えるようだった。
もう、勘弁こんなの繰りかすの!って思いながらも、
一応励ます私。
「大丈夫よ、ユークリッドは医者だから。非合法な物は使わないから。
単に麻酔系の薬を使っただけだから。心配しないで。
何かあったら、私はすぐわかる。
それにこいつをタダではおかないし。
こうやってるときのユークリッドは、やましい事のない証拠だから。」
「あっ!史登!」
史登がやっと目が覚めたみたいだった。
頭を振りながら、少し呻いたが理央の顔が目に入った途端、
史登は理央を抱きしめていた。
(こっちは時間がないんですが。。。)
なんて、私のイライラはそっちのけで、二人は抱擁を交わしてる様子。
そんな私のいら立ちをユークリッドはわかるから、
フフって鼻で笑ってるみたい。
手が空いたら、殴ってやると心に決めて、
取りあえず、大きく私は咳ばらいをした。
「ウォフォッン!」
やっと二人の視線が、私に来た。
私は振りむけないんだって、言えないから。
「お目覚め?史登さん。私はリリィ。こっちの大男はユークリッド。
よろしくね。
時間が無いから、さっさとするけれど。
理央から話は聞いたわ。あなた達が、理央の母親に引き裂かれた時、
あなたはどう思ったの?」
「?」
「時間が無いの!早く答えて!」
この女、なんで怒鳴ってるんだ?って思われてるでしょうけど。
そこは流石相棒、ユークリッドがフォローに入る。
「君たちが見つかった時の事だ。
理央君に対して、君はどう思ったかを教えてほしい。
素直な気持ちを伝えてくれ。
頭がボーっとしてるかもしれないが、
時間がないんだ。答えてくれないか?」
(相棒やるじゃないのさ。)
黙ってたらいい男なんだけどね、こいつも。
そんな感想を抱きながらも、言ってやると調子に乗るから、
言わないでおく。
「私たちはやるべき事があるの、その為にはあなたの協力がいる。
理央があなたにとって、今はどうでもいい存在なら、
答えなくてもいい。心で言って頂戴。
そうじゃないなら、口で言ってほしいの。
理央、あなたは私の隣に立って頂戴。」
理央の不安そうな顔が私にもわかる。
弱々しいオーラ。
私は理央を、私のそばに呼んだ。
どうせ、ここに立たなきゃいけないから。
後先になっただけの話だし。
理央は彼を残すのを心苦しい感じで、史登を見ながら、
私の傍に来た。
「俺は、変わらないよ。リリィさん。」
「言葉にして頂戴。それじゃ私には分からないわ。」
「俺は誰がどうであっても、理央を離さす気はないし、
誰よりも一番に思ってるつもりだ。
それは変わらない。」
「愛してるのね。理央を。」
「あぁ、一度も忘れた事なんてない。」
「ありがとう、史登さん。助かったわ。
少し、ユークリッドがおいたをするけど、
少し我慢してね。」
私はユークリッドに、私が理央にした事と同じ事をするように、
眼で合図した。
彼も承知とばかりに、史登の傍に行き、史登の顔を押さえて、
片手を史登の口の中に突っ込んだ。
「うっ!」
史登の苦しそうなうめき声が出た。
理央は史登の方を振り向こうとしていたところを、
私は前を向け!って大きな声で命令した。
理央はウサギのようにビクっとして、耳を垂れるように、
しょぼんとして、前を嫌々向いていた。
史登のうめき声は少し、理央より長く続いたが、
やっと霊が二つ浮んできた。
それをゆっくりフワフワ浮ばせ、ユークリッドは私にこの二つの霊を
見せてくれた。
すごいだろって言わんばかりの顔が、何気に嬉しそうな感じで。
「ユークリッド、悪いけど食べないで、出してね。
分かってるわよね。」
「司祭の前で食べたら、俺、破門だろ?
する訳ないじゃない。少し待ってろ。リリィ。今出すから。」
ユークリッドは、私と同じように霊を二つ口の中に入れた。
理央より数倍大きい霊だった。
ユークリッドにやってもらって正解だった。
私なら、もっと時間がかかるだろう。
理央もすごいって顔してる。
私は理央に説明してあげた。
「私が理央にした事を史登にして、ユークリッドは私と同じ事をしてるのよ。
理央より大きいでしょ。それだけ気持ちが大きいのよ、あなたに対して。
よかったわね。理央。」
「そうなの?」
「うん。」
「心の中に空洞が出来たのと、同じ事。
この中にまたあなたたちは、新しい二人の思い出を入れる事が出来る。
あと少しだから、我慢してね。理央。」
さっぱり何の事だかわからない、史登だけど。
説明は理央からしてもらってって感じに、私はなっていたから。
彼には全く触れずにいた。
可愛そうだから、理央を彼の元に戻れと指示をして、
そこにじっとしてろって言った。
ユークリッドから布が出てきた。
同じニョロニョロな線がいっぱい書かれた布だ。
量が多いかったが、ユークリッドは、頑張って全部出し切ってくれた。
そして、それをわたしの腕の上に乗せてくれた。
「よし、集まった。ユークリッド。始めるわ。
魔法円の設置をして。簡易でいいわ。問題ないでしょ。」
「そうだね。乗せるだけだからね。」
ユークリッドと意見が合ったところで、彼は魔法円の設置をした。
丁度、この生贄が中央にある円は、古代ソロモン王の紋章と言われる、
円の中に複数の四角と三角形がまじり、
ヘブライ語で書かれた聖書詩編7章の文字が円のいたるところに書かれていた。
ユークリッドは四方の壁に清めの儀式をする。
段々円の淵が明るくなる。
ユークリッドは、東西南北の門を開け、物見の塔への守護神達に挨拶をし、
そして、私たちを諸界の狭間という世界に連れていくことが出来た。
空中に4つの5芒星が青白く光る。
後の二人は円の中に居る事も確認した。
私はそこから言われるまでじっとしてろと命令した。
二人には視えていないだろうが、私たちには視えている世界があって、
それは小さな正方形の箱二つを中心として、
造られた想念の世界でもあった。
そして、ユークリッドは、チャントと呼ばれる歌を歌った。
神々に捧げる歌でもあった。
それが終わると同時に私は言った。
「全ての中心より上下内外至るところ全ての中心より力を受けよ。
諸界の狭間において、全ての世界に置いて我らを助けるべく。
かくあるべし。」と。
私がいい終わると、私の手にあった布が一本ずつ時間差で天井高く飛び、
そして、生贄に布の上に更に勢いよく、巻きついていく。
シュッシュッと音を立てながら、目の前の生贄に巻きついていった。
まるで、自分の意志があるかのようで、多分、後の二人は何がなんだか、
分からない状態であろうけれど。
門が閉まるのまでに時間がない。
私は、とにかく進めていく事に集中した。
「カーヴァンクルの魔犬は出すかね?」
クスクス笑いながら、ユークリッドは私に耳元で囁いた。
「あんた、殺されたいの?」
「冗談だよ。リリィ。生贄が女だとどうしても、調子が悪くてね。」
「年取りすぎじゃない?燃費悪そうだしね。」
ムカつく答えにはムカつく答えで応戦してる私。
でも、ユークリッドがこんな事言う時は、まだ時間があるからという
私への無言の合図だった。
こんなくだらないやり取りの間に布は全て、生贄に巻きつき、
今までの眼は全て隠れて、今度はニョロニョロの線がたくさん書かれた、
布に巻きつかれている状態だった。
ただ、釘で押さえつけられている部分だけに、眼の布は姿を視る事ができた。
そのニョロニョロの文字の上に私は、私の紋章を自分の右手の人差し指を噛み切り、
血を出して、絞りながらはっきりと分かるように書いた。
ユークリッドが釘を左回りに回りながら、抜いていく。
計13本。
ユークリッドは、抜いて私に渡してくれた。
私は言った。
「布よ、巻きつけ。力よ、呪縛されよ。光よ、明らかにせよ。
さぁ、封印せよ。」と。
13本に刺された布は、生贄に急速なスピードで巻きつく。
ランダム的な感覚で、同じように時間差を作って。
全てが巻き終わった時、時間が一時止まった感覚。
私とユークリッドだけは、瞬きもせず、その布を凝視していた。
すると、布は床に溶けていくように少しずつ消えていく。
段々、溶けてなくなると同時に、私は右回りに13本の釘も元ある場所へ
刺していった。
その13本の釘は、布が消えると同時に、布と同じように、
床へ溶けていくように段々下へ落ちていった。
まるで、全てのモノが地球の真ん中に力を封印するために、
戻っていくような感じで。
私はやっと息をつく事が出来た。
時間までに間に合ったから。
そして、言った。
「ユークリッド、門を閉めて頂戴。全部終わったわ。」
「わかった。」
ユークリッドは神々に終わりの挨拶をし、
そして、東西南北の門を閉めていった。
すると、先ほどまで宙に浮いて視えていた青い5芒星も、
下に地球の元に溶けていくように段々薄くなって、
しまいには無くなって消えてしまった。
やっと私は二人に振り無事が出来た。
「終わったよん、これであなた達は大丈夫。」
私とユークリッドが、家にえが見えるように二人の前から少し、
自分たちの位置をずらして、見えるようにしてやった。
理央と史登は同時に声をあげた。
「あっ!」と。
それは仰天ともいえる、ひっくり返るような大声で驚いていた。
「マ、ママ!?」
理央は避けんだ。
理央が生贄にかけようろとした時、ユークリッドは足を出して、
わざと理央を転ばすように仕向けた。
私はそれを怒らない。
何故なら、今ここで生贄に起きてもらっては問題があったからだ。
「まだ起こさないで。
悪いけど。理央。」
こけた理央を見下ろしていった。
ユークリッドが、私にワインを注いで持ってきてくれた。
お疲れって言いながら、そして自分もグラスにワインを注いで、
二人で、乾杯をして飲んだ。
「の、飲んでる場合じゃなッ!」
「起こしたら、失敗になるよ。」
ユークリッドは、理央の言葉をさえぎるようにしていった。
「ごめんね。今から説明するわ。
時間がなかったのよ。
だから、勝手に進めちゃったけどね。」
ワインを飲んだら、少し気が楽になって、
理央にも優しく言える自分に戻ってた。
(なんとか間に合って、成功した。)
フーっと息をついて、へたり込む理央の目の前にかがみこんで、
またニコっとしてやった。
「あんた達の言葉は真実だった。
私はそれを否定したくない。
だから、簡単なのは、あなたのママゴンの記憶を消して、
これは後々だけど、あんた方を認められる包容力を持てば、
問題ないと思わない。
一時だけど、あの記憶はママゴンは消えてるから。
当分、ばれない様に二人ともしてね。
当面、あんたん家では、やんないことね。
ばれる可能性あるから。
後々、あんた達が大人になって、ちゃんと自活できるようにでも、
なれば、カミングアウトしても理解できるようにしてあげたの。
それまで、一時あの記憶は封印させてもらった。
次思い出す時、それはあんた達にとって良い方へ、
彼女の思考が行くように力を向けた。
そのためにも、今は力が馴染むまでそっとしておいて欲しいの。
おわかり?」
今出来る言葉での説明は、したつもり。
ユークリッドもそうそうと眼を閉じで、我ながらすごいとでも
言わんばかりの大きな態度(私にはそう見える)で、
私の話に頷いていた。
初めに史登が唇を切った。
「信じていいのか?」
私はスッと立ちあがって、史登を見降ろしながら言った。
「なんなら、起こしてみる?
知らないわよ。私。
後で困ったって言っても、助けてやんないから。
私が助けるのは一度だけ。
どうする?史登さん。
どうせダメなら、一度は私に賭けてみない?」
こういう時、ユークリッドは、気が利く。
私にキセルに火をつけて、持ってきてれた。
私は仕事の後の一服ッて感じで、フーっと煙を吐いた。
うさんくせぇとでも思ってるんでしょって感じで、
見てるのは、わかってるんだけど、初めだからそういう態度でも、
仕方が居ないのはわかってる。
(さぁ、どうする気?)
もう一服。フーと煙をはき、ユークリッドが灰皿まで用意してくれてる。
そこに灰をコンっと落とした時。
答えたのは、理央だった。
「いつまで?マ、ママはこうしてるの?」
「明日まで、ちゃんとユークリッドがあんたの家まで、
送っていくわ。」
「信じていい?」
「自分で考えて。」
少し考えて、ママを見ながら。
涙も浮かべてたかもしれないけど。。。
理央はちゃんと言った。
「リリィさんの言葉信じるよ。僕。」
「あら、すごい信用ね。私。」
敢えて嫌みで答えてやった。
「だって、僕の話ちゃんと聞いてくれたし。。。」
「ダメな時は、文句を言いに来る!」
「アハハ、私逃げてるかもよ。」
ウっと答えに詰まる理央。
こういう小動物系は苛めると楽しい。
「その辺にしといたら。」
「あらら、ユークリッドに言われたわw
私も年かしら?w
もしかして、理央に惚れた?
ユークリッド。
あ、そうそう。この人もお仲間だから。
それに友達少ないし。仲良くしてやってよw」
私は笑いながら、言ってやったけど。
ユークリッドは、キセル吸う私にまた灰皿を向けてくれた。
そして、灰をまた落とす。
彼は眼鏡をいじりながら、フフって口元歪めて笑った。
「理央がそういうなら、俺も信じるよ。」
ふ〜んって顔で、肩越しに史登を見た。
「上等ね、二人とも。いい根性よ。
私、そういう子大好きなの。
安心して。私は嘘は嫌いだから。」
ヘタってる理央に合わせて、私は屈んでほっぺにキスしてあげた。
そして、既に立ち上がっている史登にも、同じところにキスしてあげた。
「んじゃ、契約成立ね。
明日が楽しみね。
んじゃ、乾杯しましょ。」
ユークリッドが史登と理央にワインの入ったグラスを渡した。
史登はこれは。。って顔したけど。
「大丈夫よ。キリストの血よ。
祝福の時は、飲むべきものよ。
んじゃ、乾杯〜!」
そう言って、私はグラスを高く上げた。
ユークリッドも、同様にして、口にワインを含んだ。
まるで一気飲みのようにも、私のには感じたが。
「ユークリッドさんは身長高いんですね。
史登より大きいみたい。」
理央がグラスを持ちながら聞いた。
「ユークリッドは190以上はあるわよ。
さぁ、飲んで飲んで、
理央に言ったけど、71年モノよ。」
私は、二人が飲んでくれるのを楽しみに待った。
史登には少し知識があるみたいだった。
へ〜っと感心してるみたいで、そこから迷わずグッと飲んだ。
理央は舐めるようにペロッペロッと味わった。
私は二人の様子を微笑ましく眺めていた。
そして言った。
ユークリッドが、私をチラっと見たから。
「ありがとね、飲んでくれて。
悪いんだけど、ここから普通に帰してあげられないの。
いったん、いい子でお寝んねしてくれるかしら?
二人とも。」
私の発言に驚いた二人は、私の顔を眼を見開くような目で見たが、
もう遅かった。
身体の自由が利かないみたいで、立っていた史登は膝をガクっと
ついて倒れかけていた。
理央はもう、半分意識が無かった。
「・・・・・・・」
「言葉にならないでしょ。史登さん。
理央には言ってるけど、ユークリッドは、医者なのよ。
少しの間、あんた達には眠ってもらうわ。
ちゃんと二人とも、無事に帰してあげる。
だって、大きな子供二人なんて、私には邪魔で仕方がないのよ。
おやすみなさい。」
ニコって笑って、史登の唇に私は口づけた。
(これでもう、意識はない。)
その通りに、彼は倒れた。
もうすでに眠りこけてる理央にも、口づけた。
「よくがんばったわね。理央。
また会いましょう。」
「ユークリッド、ここから出るわよ。」
彼は無言で私に頷き、そして、私たちは彼らを少し振り返って、
眠っているのを確認し、重い扉を開けて、この部屋から出ていった。
史登と理央を残して。
2010-04-06
記憶の彼方 後篇 1
記憶の行方 後編-1
僕がこんなセックスするのが好きだったとは、
自分でも思わなかった。
(それも男同士で・・・)
親が聞いたら、絶対卒倒するだろうなって、
思いながら、やってる。
それでも足らないみたいで、
史登をオカズに家の部屋の中で、
一人でやってたりする。
史登も初めの印象とは全く違って、
もっと僕はぶっきらぼうな奴だとばかり、
思っていたが、史登は凄く優しく僕に触れてくる。
(始めだけなんだけどね・・・)
席変えるんじゃなかったって、
ちょっと後悔したけど、仮に前の席のままなら、
僕はずっと史登を見つめてばかりで、
周りにすぐばれてしまう危険もあったかもしれない。
僕は、あれから迎えの車を呼ぶことは一切なかった。
あの日から、僕は殆ど毎日っていうほど、
史登の家に通っている。
それに、史登も来てくれって言うし、
僕も当然行きたかったから、
双方の意見が合致しての事。
それに僕の家より何かと彼の部屋便利で、
あの広い家の中でも一番端で、
いわば、離れのようなものでもあったから、
何をしていても、史登の家族に何か言われる事はなかった。
彼の家は平屋であって、すごく広くて庭も合わせると、
何坪あるのか?僕も全部の庭を見せてもらった事もないから、
分からない事が多い。
一度だけ、皆と離れてて、寂しくない?って
僕は史登に聞いたことがあった。
僕も一人には慣れているけれど、
僕に家はそんなに大きくないし、
(一般からしたら大きい方だと思うけど。。)
ちゃんと、扉を開けて誰かを呼べば、
その人は来てくれるくらいの距離感だ。
そんなことしなくても、内線があるから、
今は全く問題ないけど、僕はすごく怖がりでもあるから、
もし、この内線が通じなかったら?って
不安があって、試した事があった。
来てくれるか?どうか心配だったけれど、
僕の部屋から人を呼んだら、ちゃんと来てくれた。
その名前以外の人達も、心配で来てくれたから、
内心ほっとした。
僕の母以外は、僕の声に反応して、
僕の事を心配してくれたんだろう。
ちゃんと来てくれた。
僕が史登のような部屋だったら、どうだろうって
いつも考えてしまう。
誰か来てくれるんだろうか?って。
史登がいつも居てくれるから、僕はその時は安心できるけれど、
彼が居なかったら、どうなんだろうって。
それと、僕が居ない時の彼はどうなんだろうって、
考えて聞いてみたんだ。
「火事とか来たら、一番に逃げられるんだぜ。」って
彼は普通に話してくれた。
確かにベランダも広くて、
その近くには大きな名前は分からないけれど、
大きな青々とした木がスクスクと伸びていて、
そこから蔦って、下に降りる事も出来そうだ。
昔はよく、ここを蔦って、庭で遊んでいたって
事も、彼の口から聞いた話だった。
木登りも上手だぜって、史登は僕に自慢してた。
(木登りもってなんだよ。もって・・・)
何、想像してんだよって、史登に頭をコツンと小突かれて、
赤面してる自分が少し恥ずかしかった事もあった。
フンっ!って顔を背けてやっても、
可愛い奴って史登はいつも言ってくれて、
それが僕は嬉しかったりで、史登が嫌いになるどころか
これはどういう気持ちなんだろうって?って思ってしまう。
そんな僕の気持ちなんてお構いなしに、
史登は、またいつものパターンのごとく、
僕に求めてきて、ついついやってしまったりするんだけど・・・
初めてやった時から、感じちゃったりしてた自分が、
(最初は確かに痛かったけれど。。)
ほんとはおかしくて、変態なのかもしれないとか、
自分が自分じゃなくなっていったりとか、
史登の家の人にもし、見つかったらとか、
不安が全くないわけじゃない。
根っから、男が好きって訳でもなくて、
ちゃんと女の子と付き合ったりとか、
今まででもあったけど、こういう風に身体の関係までは、
経験がなくて、史登は僕の初めての男。
史登も同じで彼女も居たらしいけれど、
僕の前に一人だけ告白されて、少し付き合った男が居るって、
この間言っていた。
でも、キスまでで、最後までいかなかったって。。。
(女の子とは経験あるらしいけれど・・・)
どうして僕なの?って聞いた事何度もある。
「好きだから。」とか「可愛いから。」とかしか、言わない。
じゃ、僕が可愛く無くなったら?好きじゃなくなるのかな?って
これから年取ったら、どうなんだろうとか。。。
考えればきりがない位に、問題が山積してて
頭がゴチャゴチャになってしまう。
そういう僕を見て、史登はいつも言う言葉がある。
「その時はその時で考えればいいさ。」って。
説得力があるようでないようで、
なんだかなって思う時がいっぱいあるけど、
最近は僕の方が、どういうつもりで抱いてるのか?って、
気になって仕方がないような感じがする。
僕自身でさえ、自分の気持ちがはっきりしないまま、
なし崩しに、史登との関係を続けてしまっている罪悪感もあるし。。。
初め、怖かったけど、史登は優しくいつも抱いてくれてるし、
大事にされてるのが、僕を有頂天にさせてるのも、
わかってるけれど。
僕自身は、セックス自体に興味があったというより、
何かと構ってきていた、史登自身に興味があったというか、
いや、それ以上にもっと大きなものが心を占めていたと思う。
それは、母親への復讐というか、当てつけみたいなもの。
僕の母親も、史登と仲良くなることは賛成だったから、
史登の家から帰るのが、遅くなっても全くって言っていいほど、
怒ることがなかった。
それは今でもそうだ。史登と一緒と言えば、何でもOKくらいな
調子で事情も何も聞かずに許してくれる。
僕はそんな母親が馬鹿に見えて、
確かに史登とのセックスは、やればやれるほど良くなってきてて、
僕も史登が、肉体と恋愛と込みで好きなんだと思うし、
思春期の僕的には、ちょうどいい性欲のはけ口であったりするから、
この関係は、悪くないと思ってる。
(女だとややこしいし・・・)
でも、学校でも史登とは話す事は無い。
無視と言っていいほど、口を聞かない。
暗黙の了解というか、今じゃ彼のアイコンタクトだけで、
彼が何が言いたいかくらいの察知はできるようになってる。
だから、彼と学校でセックスしたいとまでは、
僕は思っていないし、仲良くしていたいとも思わない。
(史登はどうかわかんないけど。。。)
学校では冷たい態度でもある、史登だけど、
その分、史登は家に戻ると態度が豹変して、
僕からねだらなくても、キスやセックスを常に迫ってくる。
言葉使いまで変わってきて、少し上品になる。
僕はここでの史登の言葉使いで、
かなり萌えたりしてる。
学校とのギャップがありすぎて。
僕だけの秘密だと思うと、少し自慢したくもなる。
それにベタベタの甘々でねちっこくて、
僕を抱いても離さない史登なんて、誰も思いつきもしないだろうし、
見た事ないだろうしし、きっと僕が初めてだと思う。
いつも、あの誰も周りに人を寄せ付けない刺棘しいフインキの彼が、
こんなに僕を求めたりとか、僕で勃起したりなんて、
上品になってどこのお坊ちゃん?なんて想像は、
他のやつらには絶対出来ないだろうし、
してほしくもなかったりする。
こんな僕でも少し嬉しいのが、僕が困ってたりとか、
僕に声をかけてくる人間で下心あり!って史登が感知した場合は、
どんな時でもちゃんと僕を守ってくれたりするんだ。
そう言う時、僕は史登に愛されてるかもって、
勘違いしてしまいそうになる。
この一瞬だけは、彼は僕のモノで、僕も彼のモノでありたいと、
密かに願っていて、愛おしく感じる。
確かに好きだって言ってくれる。
僕も好きだと思う、彼の事。
でも、人間の心なんて、その先どうなるかなんて、
誰もわからないはずだし、変わらないなんて保障はどこにもない。
現に僕の母親がそうだ。
あんな優しかった母親が、子供を一人女で育てるのが大変とはいえ、
人を今度は利用するようになって、這い上がる事を覚えて、
今の地位を築いていった。
慣れとは怖いもんで、僕も母もそれが普通になってきてるようで、
そんな浅ましい自分の心を、もし史登が見たら、
彼は僕を嫌いになってどこかへ行ってしまうんだろうか?と、
思ったり、違う人を好きになって、僕は母と同じように、
捨てられて、母のような人間になってしまうんじゃないか?
それに、彼に捨てられたら、僕自身どうなってしまうか、
ちゃんと心のバランスってやつは、取っていけるんだろうか?
他のやつと史登がやっていても、僕は普通にしていられるかな・・・?
どうにかなってしまったり、しないだろうか・・・。
(史登に色々言われても、僕はあいまいにしておきたい。)
僕にはそういう汚いところが、きっとまだまだある、
そんな僕を史登には知られたくなかったし、見せたくなかった。
母はのし上がる事で、父に対する復讐をした。
僕はどうだろう。。。彼になにかするんだろうか?
母の子供だから、あの女の子供だからこそ、
どんな事でも平気でやりかねないあの人の子供だから。。。
僕にも可能性があるってことを、僕自身が分かっていなくては
いけないとおもった。
だから、自分の気持ちをはっきりわからないというより、
はっきりさせたくないのかもしれない。
そうすることで、とりあえず上手く行ってるこの関係さえ、
潰してしまいかねないのかも。。。
このままの関係が続いて、僕を好きだっていう史登がずっと
いてくれたら、僕はそれでいいと最近思えるんだ。
彼の言うように「今を楽しむ」って意味でもあって。
それに仕事上でどうしても繋がりが持ちたかった、母親にとって
僕と史登の関係は、これ以上にない位いい関係なのでは?って
鼻で笑ってしまう事さえある。
どこか僕の心の中に、母親にしてやったりなんて気持ちもあって、
自分の息子が同性愛者で、ついでに男と毎日しまくってるなんて、
まさか考えた事もないだろうし、
聞いたら腰を抜かすんじゃないか?って
想像するだけでも、今まで何かと僕だけかもしれないが、
母親には裏切られた感情を持っていた僕としては、
優等生で素直でと自慢の自分の息子が、
アウトローな少数派になってしまっている事を
どんな風に思うだろうと。。
そんな時が来たら、あの自慢の美貌さえ、
どんな風に変わっていくのか?
この目でしっかりと見てやりたいと思っていた。
僕は心の中だけだけど、ククって笑っていた。
(僕にも裏切れたら、母はどうなるんだろうww)
「何、考えてるの?」
(あっ!)
急に現実に戻って冷めた感覚がきた。
とっさの反応で、閉じてた目を気だるくゆっくり開けて、
史登を見上げた。
いつもの事だけど、今日も学校の帰りで、お約束のごとく僕は史登と、
一緒に彼の家・彼の部屋にいて、入るなり僕をベッドに
いきなり押し倒し、馬乗りになって、
今はとても邪魔な僕の制服や自分の制服を、
そこらに放り投げて、シャツのボタンを外しながら、
僕の身体を舐めてたり、キスしたりと好き勝手にやっていた。
途中で止めるとすごく史登は怒るので、僕はされるがままの状態で、
やらせていた。
初めはあんなにビビってたのに、慣れてきたのか知らないけれど、
今までもあまり僕が乗り気でなかったり、
気が散漫になってることは、そんなに多くはないけど、
無いとは言えなかった。
それに少々の愛撫だと、身体が感じて気持ち良くて、
ビクッと反応しながらも、自分の思考は彼に集中してなくて、
声で演技というか、されながらでも、
激しくなければ、彼を怒らせる事はなかった。
僕が集中してなくても、平気なんだって思ってから。
それに好き勝手やってるし、僕の態度なんて、気にも留めてないって
思っていたから。
でも、彼が挿れるよって言ってくるから、
その時は気持ちをちゃんと、僕は彼に戻して愛し合ってたから。
僕はさっきまですごく気持ちいい中で、
彼は僕に好きと僕の耳元で囁いてくれたり、
口づけしてくれてたりしていた。
虚ろな状態で頭の中がボーっとしながらも、
別のところに意識があって、集中していなかったのは事実だった。
史登は、初めて僕にあんなセリフを言った。
まさに今、その最中だったりするのだが、
僕が集中してない事に、気がつかない訳なんてなかっただろうが、
何も言わなかったのに、今日初めて言った。
愛撫も途中でやめて、僕の顔を両腕で挟むんで、
僕をじっと見ながら、言った。
その真剣な史登の真剣な目が、僕は少しドキっと反応してしまった。
いかにも違う事を考えてましたっていうのが、ばれてしまうくらいで。
僕も少し上半身を起こしながら、彼の目を見た。
前から分かっていただろうけど、
今日はこれ以上我慢が出来なかったんだろう。
史登に済まない気持ちで、いっぱいだった。
(僕が悪いな。。謝らなくちゃ。。)
今の彼の表情は、見るからにご機嫌斜めだった。
僕の声が演技って思われたかも。。。
(ちゃんと感じてるんだけど。。。)
ちゃんと感じてるんだからって言わなくちゃって、
ここは言うべきところだろッ!って言葉にしようとしても、
史登の様子が少し今までとは違ったので、
ばれてると分かっていても、謝る選択より普通に会話しなくちゃって、
方向に考えがいってしまった。
素直になればいいのに、どうしてこういう時に限って。。。って
思いながらも、自分の言葉は心とは裏腹な事ばかり言ってしまう。
楽しかったから・・・
僕は、クスって彼に微笑みながら、
史登の唇に僕のを軽く重ねた。
「どうして?。」
「心、ここにあらずって感じだったから。
僕とするのは、もう飽きた?。」
いつにもましてムスっとしながら、史登は僕に言った。
2つダブってるというのと、言葉使いが悪いというのが、
学校でのイメージであったりするが、
僕に見せる彼の表情は、いつも想定がに可愛いところが多くて、
新鮮で飽きるなんて有り得ないけど、
事実こうやって、僕が史登とのHの最中に、
母親や色んな事を考えたりしてるのは、、
これが初めてじゃないって、だからごめんなさいって
もうしないからって、言ってあげないと僕はいけなかったはずなのに。
僕の口は、そう言わなかった。
僕はまだ、彼が許してくれるという甘えがあったのかもしれない。
自分がその立場だったらどうなのか?なんて、
全く考えなくて、偏った自分のエゴでしか、
彼に対しても、考えてなくて、どんどん自分の思いとは別な方へと、
進んでいってしまって、後戻りできなくなってきた。
拗ねながらも僕を必ず信じてくれるという僕のエゴ。
史登の顔をちゃんと見ていなかった僕の彼に対する甘え。
史登は僕の事が好きという自分の驕りが、
どんどん僕を人として間違った方へと進ませていた。
「好きだよ。史登。君だけだから。」
こう言えば、史登は大概の事を許していた。
今回もまた、僕は飽きもせず同じ手を使っていた。
僕はにっこりと史登に笑いかけ、キスして舌を絡ませた。
史登の舌を僕は求めた。
でも、今回は違った。
「ダメだよ。そんな言葉で騙されないから。」
(えっ?)
史登は、膝で立ち上がり、僕と密着していた身体をいきなり剥いだ。
そして十二分に漲って反り立った自分のモノが僕の目の前に。。。
(す、すごい・・・)
こんなのがいつも僕の中に入ってるのか?と想像するだけで、
恥ずかしさと僕の喘ぎ声がフラッシュバックされて、
顔が火照ってくる。
(この体勢って、フェラしろってことかな・・・?)
僕より一回り以上も大きく血管の浮きだったモノを、
僕に見せつけながらも、僕の口にも突っ込んでこない。
僕から行っていいものか?どうか?
判断しずらい状況で、僕の動きは止まっていたが、
最初に動いたのは、彼の方からだった。
僕の顔を引き寄せる事もなく、
近くにあった小さなテーブルのコップを手に取り、
水を飲みながら自分の下に組み敷いてる僕を睨んでいた。
その表情は今までとは全く別で、僕が彼を怒らしてしまったと、
自覚させられる表情だった。
今日の彼は不可解な事が多かった。
いつもなら、こんな時に水を飲むなんて事はなかった。
僕も今なぜ水?と思ったが?
その表情は、今まで見た事もないほど、
不気味な感じで、僕は内心ドキドキとしていた。
僕は、史登との距離を開けようと、
身体を少しずつベッドの上の方にずらしていった。
彼が怖かったから。
どうしても、ごめんなさいが僕の口から出ない。
本当にこのままでは、怒らせてしまう。
僕が危惧した事が全て本当になってしまうじゃないか!って、
そんなの許せない!
早くなんとかしなくてはって、気持ちだけで焦ってばかりで
どんどん空回りしている自分に、胸焼けしそうだ。
「どうしたの?怒ってるの?」
そうじゃないだろって自分を心の中で叱責するが、
当然彼からも返事はない。
当然だろ。聞きたい言葉はそうじゃないんだから。
今日の彼は意外が多くて、僕の想像を遥かに超えていた。
史登は僕の顎を抑えてながら、僕に自分が飲んだ水を上から口移しで、
流し込んできた。
僕が少しずつ開けた、史登との身体と身体の距離なんて、
何の意味もなく、僕の顔を動かないように痛いくらい固定して、
僕にも無理矢理、水を飲ませた。
「ッんん!」
ゴクっ!
(あっ?)
史登の口から僕の食堂まで真っ直ぐに水が流れ込んできた。
水がきちんと僕の喉を流れ込んでくるように、
史登の舌が僕の喉の奥まで、押し込んできた。
史登の舌が僕は息が出来ない状態で、
少し僕にとって、それが苦しかった。
そう、ある意味、こんな形の強引なキスみたいなのも、
二人にとっては初めての事。
彼が怒ってるんだろうって、わかってるんだから・・・
その謝るチャンスも作れず、チャンスがあっても生かせず、
彼のやるがままにされてる僕。
後悔と反省と同時に、何か異物が喉を通った気がした。
(もしかして。。。そのために喉の奥まで舌を?)
史登は僕の顔から、手を離した。
僕は口元に手をやりながら、史登を見上げた。
何かを確かめたいような僕の顔・・・
眉根を歪めた僕のこの態度に、少し憂さが晴れたのだろうか?
彼はニヤリと片方の口元を少し歪めて、
僕をニヒルな年上の男となって、僕を見降ろした。
何も彼は言わない。
(やっぱり・・・何か入った。。)
僕の口元にある手は自然というか、いつのまにか微妙に震えていた。
史登は僕を無理矢理、両肩を押して、僕をベッドに押し倒し、
僕の目の見ながら、何か意味ありげな笑みを浮かべて、
そして、僕は彼を見た。
「理央が悪いんだぜ。
ちゃんと言わないから。
それに、俺としてる時に集中しないッて、
俺に失礼だろw
そう思わね?」
史登はクスクス笑いながら、僕の口元にある手を除けながら、
僕にやんわりとキスしながら言った。
「理央が俺しかいないっていうのは、当たり前のことで。
でもさ、ずっと俺がいないとダメにしないと、
俺が気に入らないんだよ。
理央が分かってくれると思ってさ、わかっててもずっと黙ってたけど、
そうでもなさそうだし、そういうの俺的にもう限界なんだよね。
だから、理央が悪いんだぜ。
ちゃんと言ったら、許してやるのにさ。」
(何言ってんの?何飲ましたんだよ?)
謝るどころか聞く事もままならない。
僕は全く聞けなかった。
確かに僕は、いつも許してくれていたから、
今日も大丈夫だと思っていた。
それが甘かった。
史登は僕に対して、何でも優しかったけれど、
今日はその怠慢な僕の気持ちが、史登の機嫌を損ねさせた。
そうなった時の彼の姿を僕は、今まで見たことがない。
だから余計に不安と怖さが、僕の心臓を締めつけ、痛くする。
「どうした?不安?怖い?
大丈夫だからさ。理央には俺は甘いのはわかってるだろ。
そんなに怖がらなくてもいいから。
もう少し気持ちが良くなるからさ。
俺の従兄、医者なんでさ、
そっからもらったやつだから。
安全だし。楽しい方がいいだろ?理央もw」
史登は、僕の首筋や頬や指を、チュッチュッとキスして、
舌で舐めながら、僕を見て笑うというより、ニタニタしていた。
「・・・・ッ!!」
いきなり変化が、僕の体に起きてきた。
僕は本当にごめんって言いたかったんだ。
でも、今は身体全体がデレンっと重たくなって、
力が入らなくて、口も上手く回らなかった。
「あはは、理央は効きが早いみたいだね。
こういうの初めてだから、興奮しない?
俺、こういうの好きかもw」
「・・・」
「あ、そっか。身体がだるい?
力入んないか?
でも、これから楽しくなるよw」
少し待ってと言って、史登は身体を捩って
近くの小さなテーブルの引き出しを開けて、
何やら取り出してきた。
(な、何?糸?わかんない。。)
フフン♪と今にも鼻歌を歌いだしそうな史登。
彼の両手にあるのは糸ではなく、縄だった。
(ま、さか・・縛るとか・・・?)
僕の顔や反応を見ながら、嬉しそうに史登は
僕の力の入らない両手を上に持ち上げて、
両手首をそんなにきつくはないが、
ほどけないようなくらいの強さで縛った。
僕の体は段々熱く痺れるようになり、
動きにとろくて、両手を塞がれた事によって
何十倍にも匹敵する制限と彼の圧力をかけてきた。
(縛られるなんて、初めてだ・・・
こういうの、僕、好きじゃない。)
僕には喋る事も、彼に反抗も謝る事も、
もう出来なかったけど、
目で一生懸命、止めてという言葉を彼に、
送ったつもりだった。
史登は見て見ぬふり、完全に僕の気持ちを無視して、
自分がしたいようにしている。
足も手も重たくて、上手く自分で動かす事ができないのに。
僕は、本当は括られるなんて、すごく嫌だったのに。。。
史登が僕をこれでもか!って言うほど、
ねっとり舐める目で見つめる瞳が
僕を視姦するかの如く、彼の目線が行くところが、
肌で熱く燃えるように感じて、身体の奥がこげそうになっていた。
段々、僕の霞のかかったような目を刺すようにして、
その矢のような瞳は僕の目・頬・耳・首筋をグサグサっと
刺していき、刺された部分からガクガクと揺さぶられるほどに、
今まで感じた事のない刺激と貪るほどの快楽になるには、
そんなに時間はかからなかった。
史登は僕の胸をペロペロと舌を這わせて、さらに僕のモノを
最初はゆっくりと擦りながら、段々と力を強めてしごきだしていく。
「ダメェ・・・。もういや・・・・・・」
僕はさっきまで違う事を考えてても平気な愛撫でさえ、
狂ったように喘いで、とうとう激しくもがいて、
力の入らない足でも、グッとシーツを足の指で掴んで、
布がちぎれそうなくらい、力が震えながらも入った瞬間、
僕のモノは、彼の手を勢いよく飛び出して、
彼の顔に精液を発射させてしまった。
「もう、イッちゃったのw?」
史登は少し驚いて聞いた。
自分の顔に飛んできた、白濁液を手で拭きながら、
そして、それを僕の前で舐めるのを見せながら。
(早すぎる。だけど出したくて、出したくて・・・
いくらでも出してしまいそう・・・)
僕は放心状態だった。
一気に体中が熱くなって、はぁはぁと息を弾ませながら、
僕のがついた手をペロっと舐める史登の姿に、
ドキっとするほど色っぽさを感じて、
僕の視野は霞んではいるけれど、彼の動きだけは目が離せなくて、
少し涙ぐみながら、僕は無言で頷いた。
僕の両足は、重い状態のままだけど、
出した後の余韻で痺れている。
史登にもこの振動は、伝わってるんだろうか?
僕には全く余裕なんてなかった。
休む暇なく彼は僕に、与えてはくれなかったから。
彼は立て続けに僕の身体を強引に攻め続けた。
史登はずっと、僕のモノを握ったまま
手で緩急つけながら、扱きながら、
僕の胸をチロチロ舐めてながら、
今までで最高にやらしい目で僕を見ていた。
(こんな史登、初めて・・・)
「ダ、ダメッ!そんなにしたらッ・・・」
「また、イッちゃう?w」
無邪気な子供のような顔しながら、やってる事は、
僕にとって、拷問に近い事ばかりで。
僕がアンアン言いながら焦れているのが、
史登には面白くて仕方がないようだ。
(もう、やだ!こいつッ)
僕の身体が自由にならない事をいいことに。。
人に見られたら、たまったもんじゃないこの姿。
そうさせてるのは、目の前にいる男。
でも、そんな彼の手つきに、僕はどんどん深い悦に入っていく。
(身体が、めちゃくちゃ熱い。)
僕は切羽詰まった声を上げて、涙を流しながら、
史登に懇願した。
腰が自分の意志とは関係なく、勝手に浮いていき、
足をガクガクと震わせてもがいていた。
「ダメだよ。眉根をそんなに寄せたら、皺になるよw
それにそんな悩ましい顔してw」
面白がってるのか?
なおも史登は僕のモノを弄って楽しんでるようだった。
雫が垂れ流れる上のてっぺんを指でピンと弾いたり、
割れ目に指をクッと入れて擦ってみては、僕の反応を横目で確認した。
史登の口が僕のモノを咥えて、またいったん離し、
僕のモノの裏側の筋目に沿って、舌を這わせていった。
僕は、史登に握られたまま、彼の手の中ですぐに熱く脈動して
ピクピクと揺れ動く。
「チュウチュウ、ジュルジュル」といったいやらしい音を
史登はわざと僕に聞こえるように立てる。
何かやる度に、僕の反応を観察する史登。
僕は既に、彼の実験台で玩具だった。
「感覚がすごく敏感になるんだろ?
音もすごく大きく聞こえてたり?w
感度いいもんね。普通にしててもさ。
理央はw」
僕を咥えたまま、彼は僕に語る。
それがまたすごくこそばゆく、
僕は身をくねらせるのが精一杯だった。
(咥えたまま、喋んなって・・・
自分がされたら、怒るくせに・・・)
僕が悪いけど、余りの無視のされように、
僕だって、我慢ができない。
溢れる僕の涙を舌で吸い取り、いい子だと言いながらキスをする。
指で僕の乳首を弾けば、僕の身体はビクッと弓反りになり、
握られた僕のモノもビクンっと反応して、露を零す。
クルクル捏ねては、指で摘まんで、爪でひっかく。
される度に僕は頭を左右に振り回し、
声にならない恍惚の音を口から出して、
容赦ないまでの彼の僕を責め立てる刺激に乱れた髪は、
顔にべったりとくっついて、気がつけば汗だくになっていた。
彼はまだ僕のモノを吸い続ける。
そして奥までそれを頬張り、上から滴り流れる雫を舌ですくいながら、
愛おしそうに愛情たっぷりに、下から上へと舐めあげていく。
それを何度も何度も繰り返して、僕のモノは史登の唾液で
べちょべちょになっていった。
「んッんッんッ・・・」
僕はまた登りつめて、僕のモノは赤黒くいきりだっていく。
「ダメだよ、今度はイカさないから。」
「ふ・ふみッ・・」
史登は僕のモノの根元をぐっと掴んで、僕に言った。
僕のモノは、溢れ出る雫でお尻の方まで垂れ流れていて、
今度は僕の両足を抱えて、史登はお尻の奥まで丹念に舐めていく。
肉の合わせ目にヌルっと舌を奥に滑り込ませたりしながら。。。
舌を奥まで伸ばしながら、奥まで舐めてほぐしながら、
上下に舌を動かし、史登の熱い息が僕の股に吹きかかる。
それだけでイッてしまいそうになるが、
史登がギュッと掴んで、イカせてくれない。
グチュグチュ、やらしい音を立てながら、
舌で激しく掻きまわし、僕の感じるポイントを刺激する。
僕は少しでも多くの快感を得ようと、自然と腰が動いていく。
史登は僕が根を上げるまで、舌が疲れるまで、
零れる露が零れつくすまで、僕のモノをねちっこく吸いたて、
僕に荒く甘い愛撫をして弄んでいった。
「んんっ!!!」
僕は全身をワナワナと震わせながら、臀部の筋肉をキュっとすぼめた。
「こらっ!、ちゃんとほぐさないと。
イカせてあげないよ。」
僕の足を下ろして、彼の指が合わせ目の奥に一本、二本と挿ってきて、
前後に前後に動かしていく。
ゆっくりしたり、早くしたり速度を変えて出し入れしていく。
史登の狙いは僕の的を射ていて、いつにもまして激しく動き熱く感じた。
「あああぁぁぁぁっ、ああッ」
たまらない喘ぎ声を、僕は知らず知らず漏らして、
身体は弓の反り返ったり、腰を揺すっていた。
史登は僕のモノを弄理ながら、もう一方の手で自分自身に手をやり
しごきながら、僕の身体の肉襞の全体を、
彼の僕より立派な亀頭で激しく擦り始めた。
「これ、気持ち良くない?」
ガクっと身体が引き締まるように全体に力が入った。
僕の上半身が急にせり出すように仰け反った
史登は緩急をつけながら、ゆっくりしたり激しくしたり。
僕の頭ががくんがくんと、後ろにのけ反って、
身体が引き攣って強張る。
僕は史登が欲しくて欲しくて、我慢が出来なかった。
足に指はシーツをキュッと、足の指先まで痺れる快感。
彼のちょっとした悪戯が、
僕の全身を駆けめぐるような電撃のような衝撃が、
僕の身体をよがらせ、意識をも飲み込んでゆく。
「はぅッ!も、もう・・・・・いッ」
段々、僕の喘ぎ声が裂け声となり、
そして切羽詰まってすすり泣くような声にと変わっていった。
身体が彼を欲しがり、狂おしそうに上体がうねり、
腰はせり上げ、身悶えた。
(ああッ・・いい・・・・・いいよぉぉ・・・ふみ・・と)
「っ!」
史登は急に動きを止めた。
もちろん、僕のモノを握ったままで。
僕のモノを微かに震えて固くいきり立っていた。
そして、別の生き物のようにプルプルと熱く脈動している。
(えっ?どうして?)
僕は眉を寄せ、彼を困惑の目で見上げた。
息苦しくて、堪らない。
なんとか。。。という気持ちでいっぱいだった。
僕は史登に眼で訴えた。
早く挿れて欲しい。
痛くしていいから・・・喘ぎながら、
彼の目を必死で見続けた。
史登も何か察知してくれたと、その時は思った。
「ク・・・・・クゥ・・・・・・・」
史登は、僕のモノに少し歯を立てて噛んできた。
脳天に直撃するような刺激に、また僕は身悶える。
今までのお返しなんだろうか?
史登も僕の気持ちを少しは察知したのだろうか?
条件を僕につけてきた。
「んじゃ、今までの事、謝って。
それとどうしてほしいか、ちゃんと言って。
じゃないとこのままにしておく。」
やっぱり史登には全部ばれていて、そして分かっていて、
その結果今日は、特に僕に怒ってるんだ。。。
(僕が彼を侮辱したんだ・・・
でも、やつも相当だと思うんだけど。。。)
だけど、僕は素直に従った。
この、血管が浮き出るほど、熱くなったモノをなんとかして欲しくて。
そして、彼のモノ欲しくて、この熱い身体を慰めて欲しかったから。
限界超えて、オカシクなりそうだったんだ。
「・・・・・ご、ごめ・・ごめん・なさい。
・・・・も・・・・もう・・・ゆるして・・・・ああッ・・・
「きこえない。もっと大きな声で!」
さらに輪をかけて、史登は僕に意地悪な要求をする。
僕は手にかけら縛りさえも振りほどかん力で、
腰をグッと力を入れて、突き上げるようにのけ反り、啼き叫んだ。
「史登のお、おち○ちんで、い、いかせて・・・・・
お願い・・・・ゆ・ゆる・・ゆるして・・・!!」
僕は何を口走ってるのかさえ、分からないくらい
頭が真っ白で、怒っている史登に許してもらうために懇願した。
「僕のが欲しい?」
史登はまだ、僕をじらす。
(も、もう、勘弁して・・・)
僕は息もたえだえに声を震わせて、
髪を振り乱し、史登に涙を流しながら、
ぼやけた視界の中で彼を見据え、何度も頭を振って
僕の今の気持ちをがんばって訴えたつもりだった。
身体の奥から熱いマグマのようなものが燃え上がる、
それも限りなく、終わりがみえなくて、怖い。
僕は異常な熱さに、口が半開きのような状態で、
息たえだえにして言った。
彼の力の前に、僕は完全に屈した。
「史登のち○んちん、入れて。お願い。いっぱい突いてッ!!」
事前に用意周到というか、でも彼の行動はすごく速かった。
コップの置いてあるテーブルのどこからか?
用意していたナイフを僕に見せた。
初めは、人に刃物を向けるなんて!って思ったけれど、
そこまで、僕を怒っているのか?とかも。。。
でも、そうじゃなかった。
史登はそれで、僕の両腕の紐をさっと切り、僕の手を自由にした。
少し、手に後が残る。
解放感はあったけれど、縛られた跡が、生々しくて困る。
今度の彼の命令は、動けない僕の体を人形のように扱い始めた。
僕の開いた両足を子供のようにオシッコをさせるみたいに
抱えさせて、その姿を維持するように強要してきた。
「全部見えてるよ。
理央はホント、やらしいよなw
他の奴に見せんなよ。こういう姿。」
恥ずかしい状態をキープさせられて、
薬盛られて、正気で入られない。
イかせてもらえず、
僕のモノはずっと、勃ちっぱなしだ。
これがどれだけ辛いか?
史登、考えた事ある?って言って、
殴ってやりたいくらいだ。
(でも、これでやっと解放される・・・)
これからの事を想像すると、
少し期待もあり、でもせがみたい気持ちがあり、
今は、彼の言う事を聞かなくてはいけない立場だから。
強くは言えない。
やっと、彼によってほぐされた僕の奥の肉襞の中に、
ズブズブっと一気に押し込んだ。
「はぁぁ!」
さっき想像したイメージと期待と入り混じって、
僕は仰け反って、大きく喘いだ。
(えっ?何か違う・・・)
確かに気持ちがいいけれど、いつもの彼の感覚じゃない!
分かるのは何か僕の中に入った事だけ。
(史登は?)
いつもの体勢じゃない!
だけど、身体が反応する。
また、僕の期待が外れた?
(何?これ?)
「あん、あん、あん・・・・・・」
声が勝手にでてしまう、それなりに感じてるから。
僕の中に入ったモノが一定の感覚で、
リズミカルに細かく僕の中を動く。
段々、僕の中が抉られるような動きに変わって、
こんなのじゃ全然足らないけれど、僕の喘ぎ声がとまらない。
僕の腰だけが違う生き物のように、勝手に動き出す。
「やらしい子だな。理央はw
これローターってやつだよ。
これでもいけそうじゃない?
だけど、どんな事しても、理央は可愛いし綺麗だ。」
(何?この違和感!い、嫌だ!)
「ぬ・ぬいて・・・はや・・・・・ぅ」
「だめだよ。俺は、理央にまだちゃんと、謝ってもらってない。」
(気持ち悪い。。ローターって。。。)
確かに気持ちはいいけど、モノ足らないし、
僕が欲しいのじゃない。
どうりで、変な機械音がするって思った。
意地悪そうな顔して、僕を見ながら史登はローターの操作をする。
早める度に僕の身体はガクガクと激しくうねり、ゆっくりにすると、
僕はシーツを掻き毟るほど、身悶えて昇りつめる。
「い、イク・・・・・イクッイクゥ・・」
(これでイクのは嫌だけど、何とかしたい・・・)
僕は限界だった。狂いそうだった。
史登に握られながらも我慢が出来ず、
僕は一気に白濁液をそこらじゅうに暴発させた。
ハァハァハァと息も荒く淫らに身体がヒクヒク痙攣する。
ローターのせいで、身体が休まる事なく、ビクッビクッと、
機械的に僕の身体は、跳ねるように曳くつかせていた。
「ククッ、だめだろ。
俺より先にイクなんてw
さっきイッたばかりじゃないか。
お仕置きになってないなぁ。」
そういいながら、僕の胸をまたねっとり舌で舐めて、
僕が放出した白濁液を舐めて、僕の口元に舌で付けていく。
「理央のだよ。
手、舐めて。」
史登が僕の出した白濁液がついた指を、
僕の口の中に突っ込んでくる。
苦い味を実感しながら、彼の細くて長い綺麗な指を、
僕の舌と唾液で、全部舐めてベトベトにしてやった。
彼は満足そうに僕を見ていた。
(極Sだ、こいつ・・・
てか、このローター早く取ってよ。)
何もされていないのに、僕のモノはまた、ムクムクっと
亀頭を持ち上げていく。
それを見た史登は指で、亀頭のピンと指で弾いて、割れ目を
ペロっと舐めてチュっと吸った。
またニュルニュルと溢れだしてくる。
チュウチュウと舌で掬い取っては、感触を味わう。
僕の体の奥から、また込み上げてくる波みたいなものが上がってくる。
やっと解放されたと思ったら、
また、腰の辺りがズンっと重くなってきて、
血が一気に頭の中まで昇り、沸騰しそうな感覚だ。
(ま、まただ・・・こいつ、僕を殺す気?
そこまで、悪い事した?ぼ、僕。)
顔だけじゃなく、僕の全身が朱に染まり、
背中を仰け反り、手足の指先に力を入れて、
シーツを掴む事で、僕はなんとか耐えた。
「ご、ごめ、ごめん、史登。
ごめんな、さい。史登。
・・・・・も・・・も・・・・ゆ・ゆる・・・して・・・・・」
また僕は何も考えられない。
常にローターが僕の身体を刺激して、
ガクガクと身体は震え、
何度出しても、足りないこの欲求不満。
「仕方がないな。。。
理央は俺が求めたら、いつでもちゃんと身体開くんだぞ?
わかってるよな?
もう、するなよ。
言ってる意味、わかるな?
でも、汗が光って、マジ綺麗。
なんか卑猥だよな。理央。」
僕は無言だけど、何度も首を縦に振った。
何に対して、首を縦に振ってるのか?
分かってないけど。
もう、この状態を救ってくれるのは、彼しかいないから。
「ごめん・・・も・・もう・・・
どうにか・・・・して・・・」
僕は顔をのけぞりながら、
彼の股間に自分のを押しつけながら言った。
「よし、いい子だ。
ご褒美だ。」
史登は僕にほっぺにキスをしながら言った。
(やっと・・・)
「ああッ!」
史登が僕の中に挿れてきのだとわかったと途端、
全身にやっと欲しかった震えるわななきの波が一気に、
僕に押し寄せてきて、それまでの快感が嘘くらい小さく感じて、
彼の太くて熱いモノが、グッと自分の腰に力を入れて、
僕を大きく一突きした。
僕はまた自分の腹の上に白濁液をぶちまけてしまった。
それと同時に、史登も一回僕の中に放出した。
「一緒にイケたな。
よかっただろ。
今日は何度イけるか、数えてみる?w」
史登はさっき僕の中に出したのに、
やっとイケたのに、まだ足らない。
もっともっと、欲しかった。
「い、いっぱい突いて。いかせてっ・・・・・・・」
「ほんと、理央ばやらしいなw
俺のでイキたい?」
腰を高々と上げて、史登のモノを自分の手で勝手に探り当て、
両手で握り、自分の中へ入れようと無我夢中だった。
(イッたばっかりなのに、もうこんなに堅い。。。
これでイキたい。。。)
「史登じゃないと、やだ・・・」
いつの間にか、泣きじゃくっている僕は、
何度も何度も頭を縦に振った。
可愛い奴と言いながら、史登は自分のモノを、
僕の中に深々と押し込み、ゆっくり突き上げ、突き入れる度に、
僕はせつなげな甘ったるい喘ぎ声を出していた。
ローターと彼の前後の挿れたり出したりの行為によって起きる
摩擦が僕の全身を性器のように、どこもかしこも敏感に変えていく。
溢れ精汁がくチュクチュとやらしい音を立てて、彼の大きなモノが、
リズミカルに摩擦していく。
僕の口からは喘ぎ声から、完全によがり声に変わり、
ローターも感じるけど、史登の段々早くなって強烈なインパクトを
与える男根の動きに、僕の腰は上下を振りながら、
口から悦の音が発せられ、部屋中に漏れていく。
「こ、こんなの初めて・・・・・気持ちいいっ・・・」
史登の腰の動きが変化をつけてくる。
パンパンと音が響くくらい、僕の身体と史登の身体がぶつかれば、
今度は、腰を廻して、ひねって、僕を翻弄していく。
「あんっ、あんっ、い・・・いやぁ・・もっと・・・・・」
下から史登にひしとしがみつきく僕。
妙に余裕な感じが悔しいけれど、
僕には、今はそんな余裕なんて何一つない。
イキたくて、ちゃんとイキたくて、
どうにかなってしまいそうだ。
「もう少し、足開いて。理央。
そしたら、もっと奥に入れてあげる。」
僕をギュっと抱きしめながら、史登が耳元で囁いた。
僕はもう拒否る事なんてできない。
彼の言われるがままに開けるだけ足を開いた。
史登は僕を見ながら、また何か言いそうだったから、
左の人差し指を彼の唇にそっと軽く当てた。
その意味を理解してくれたのだろうか?
彼の身体は、グッと僕の中に身体との密着度を高くし、
肌と肌の熱、陰毛同士が擦れてる。
その摩擦だけでも、淫靡でゾクゾクする。
僕のモノが、何度イッても頭を擡げて、精汁を溢れだしながら、
プルプル震える。
同時に、史登は自分のモノを根元まで、
僕の奥に方まで、一気に押し込んできた。
一回軽くイッて、そしてまたこの有り得ないくらいの堅さ。。。
(まだMAXじゃないのかも。。。)
想像するだけで嬉しいやら、怖いやら・・・だけど。
ジーンと頭が痺れて、頭の中が真っ白になる。
彼は真剣な眼差しで、僕の腰を抱え込み、
ズンズンと突き動かしていく。
まるで躍動する彼の腰の動きが、矢のように深く太くて、
脳天に突き刺さる程の痺れと疼きとが、
僕の股間をめがけてぶつけてくる。
「お、おっき・・・・おっきぃ
ふと・・・ふとくて、か・・ぁたい・・・・・」
僕はキュッと身体が反り返った。
それと同時に彼も反応する。
僕の中が一瞬、強く収縮したからだ。
彼を咥えこんだ、僕の奥の肉襞が痙攣し、
襞や内肌が、キュッと彼のモノに強く締めあげていく。
「やっぱりいいよぉ、理央の中は。最高だ。
よく締まるし。元気だし。絡みついてくるみたいでw
好きだよ。理央。」
軽く僕にチュとする史登。
それだけで僕は暴発してしまいそうになる。
「あッあッあッー。」
でも今はまだイキたくない。
もっともっと彼が欲しい。
何回イッても足らない。
「突けば突くほど、理央の中は絡んでに粘膜が密着してきて、
僕を離さないよ。まだ奥がありそうだw」
とても楽しそうに、史登は喋り続ける。
機嫌が直ったのかな?
史登は自分で上下に動かしながら、時のはぐりぐりと円を、
描くような感じで身を重ねて来た。
「あ、あたって・・・るぅ・・・・
お、おくぅ・・・・・」
「だろ?ローター入って、俺が突いているから。
相乗効果で気持ちいいだろ?」
「はあッ!はあッ!」
大きく開いた僕の口から、よだれのように唾液を垂らしながら、
僕は彼に必死に捕まって、彼の問いさえ聞こえないほど、
感じて、突かれる度に身体を弾ませ、彼の動きに合わせて、
腰を振って、彼にひっかき傷が出来るのでは?というくらい、
しがみついて、髪は顔の汗でひっついたまま、
よがりまくっていた。
「アッ、アアア、アッ、イイ、イイ・・・・・・」
史登は目いっぱい太くて長い彼自身を、
ストロークを利かせて、僕の中を出し入れする。
「なまめかしい声しやがって・・」
僕の声に煽られてる?
ひときわ激しく前後してくる史登。
膝を支えにして、激しく前後上下に腰を振る。
僕と彼との接合部分が、史登のモノが慌ただしく、
出たり入ったりを繰り返すから、すごくい摩擦の熱と、
激しくうごめいていく。
(す、すごい汗・・・史登。。。
あっ!)
「ひぁッ、あっあっあ・・・・・あっ、あんあんあん!」
今日の僕たちはおかしかった。
史登も僕の中でのピストン運動は力強くて、
どんどん僕を攻してくる。
僕はシーツの上でのたうちまわって、
シーツを掻きむしって、もだえて、泣き声混じりで、
叫びに近い声をあげてながら、彼の勢いに流されないよう、
意識を持っていようと、だけど。
だけど、もう限界だった。
史登の大きく堅いモノも、そろそろって頃だった。
「わ、悪いけど、また全部飲めよ。
中でイきたい。」
僕は聞いてなかった。
彼にしがみつくので、精一杯だったから。
でも、これだけはわかった。
史登の大きなモノが、射精の脈動を始めてるってこと。
最後の一撃のように、史登は僕の中に叩き込むと、
史登の身体がビクッ震え、彼の熱くて煮えたぎっているような液体が、
僕の中に噴出された。
ビュッビュッと大量に僕の中に噴出された。
その度に、低い声で呻く音が聞こえた。
少しだけ遅れてから、大きな波が僕を襲う。
僕の身体には意識が飛びそうなくらいの、痙攣が始まった。
彼が噴出するごとに、ピクピクと身体を震わせた。
二人の汗ばんだ身体が光って、脳天まで溶けそうな痺れに
身体をピクピク震わせていた。
<改ページ>
初めは、こいつを利用して、
母親へ嫌がらせでもしてやろうかと、
本当に考えていた。
あの母親の子供だから、
人を利用するなんて、なんてことないって考えていた。
そういう意味で史登と話をしたわけではないが、
母にとって僕の事よりも、大事に思う史登が、
少しうざい存在であったのは確かだった。
あんなにやってもまだ、足らなくて。。。
あれから、また3回もやってしまっていたりする。
夕飯も食べずに・・・
(あ、お風呂で一回やったな。。。プラス1って感じかw)
部屋が離れてるから、トイレとかも風呂とかも揃っていて、
便利なところ。
そこで、二人で弄りっこしてたりしてたら、
結局やってしまっていた。
我ながら、呆れてしまうが、
史登も史登で、薬とか道具は面白くないって言ってた。
(自分が使い始めた癖に・・・)
そんな事しなくても、イカせられるって言ってたし、
何より、回数も大事だけれど、
彼はヤッた後の、イチャイチャが好きみたいで、
僕を抱いたまま、離してくれない。
おかげで、今日はお泊りになってしまった。
ま、史登の家だからいいけど。
男同士だしね。
(なんか、色んな事言われた気がする。。。
全く覚えてないけど。。。)
普段はわからなかったけど、
彼も僕と同じで、人恋しいところがあるのかなって、
今日なぜか思えて、仕方がなかった。
(僕らって、似たもの同士なのかな・・・)
初めて会った時から、史登は僕の気持ちとか、
本音とか見えてたんだろうか?
二人の時は、ベタベタで、好きだっていつも言ってくれる。
大事にしてくれる。
すごく分かる。それが、嘘じゃないって事。
彼が一生懸命な時に、僕が変な事しちゃったから、
その気持ち踏みにじったから、怒られたのであって。。。
それもちゃんと理解できる。
(確かに僕も悪いけど、あれはないだろうって
思ったけど、好きじゃないとできないよな。。。
僕も。)
さっきまでの二人の乱れ様とは、打って変わって
今の二人は、一つの身体とも思えるように、
寄り添いながら、あの壮絶なセックスをしていたベッドの上で
僕たちは、横になっていた。
まだ、生まれたままの姿で二人とも。
史登は僕の胸に顔をあてて、気持ち良さそうに寝ている。
まるで、僕の心臓の音を聞いてるみたいで。
彼の体温がすごく、心地よくて、
こんなゆっくりした時間なんて、今まで殆どなくて、
やったら、すぐ帰るみたい感じだったから。
服なんて、着てられなかった。
食事は部屋の前に置いておけって、
史登が内線で誰かに指示していて、
その通り、部屋の前に置いてあった。
その時は、もうやってなかったから、
よかったけど。。
気だるくて起きられない僕に史登は、
口移しでご飯を食べさせてくれたり、
あ〜んとかって言いながら、
二人で笑いながら食べた。
お礼に僕がベッドでは、彼の要望通りに
胸で抱っこしてあげてる状態。
僕には母性本能とかあるかどうか?
わからないけれど、今の彼はすごく可愛くて、
なんとかしてあげたいって思える人。
そう思えるようになると、ドキドキして寝てられない。
これは僕だけの秘密。
彼に言って、笑われたら恥ずかしいから。
そんなことで、彼は笑う事はないと思うけど。
でも、この気持ちは内緒にしておくんだ。
(この部屋にいるのには、何か理由があるのかな。。。)
他を見たことはないから、
なんとも言えないし、聞いた事もないから
わからないけれど。。。
危ない時に避難がすぐ出来るっていうのが、
理由じゃないように、おもえてきたんだ。
もし何かあって、彼が何か苦しんでるんだったら、
一緒に苦しんであげたいって思える。
今なら、心からそう思える事を、
僕にもそういった心がまだ残ってるって事を、
教えてくれたのは、史登だった。
彼に会って、僕は変わったのかもしれない。
もしかしたら、母のようにならなくても。。。って
彼がいたら、僕はそうならなくてもいいのかもしれないって
怖かった大人の世界にも、少し明るい未来や希望を
僕は持ってもいいのかな?って。
確かに今日は、散々酷いことされたかもしれないけど、
だけど、嫌じゃなかった。
気持ちよかったし、彼に散々焦らされて、
死にそうだったけどw
だからって、冷たいモノなんて全く感じなかった。
言葉は覚えてないけれど。。。
彼が僕を抱いてる時の顔は、真剣そのものだった。
少し、彼を信じてもいいのでは?って
思ってしまった。
それだけは、あのとろんとした僕の目でも、
はっきり覚えていて、少し嬉しかった。
僕の為に、こんなにって・・・
もしかしたら、毒されてる?って、
思ってるところもあるけれど、
それだったら、据え膳食わぬは男の恥じゃないけど、
史登なら、僕は毒されても全然平気で、
むしろ嬉しいかもしれないって、きっと思う。
こんな寝方をする彼は初めて見る。
(お泊り初めてだし。。。)
もしかしたら、僕のように
彼の心にもきっと何かあるんだろうかって。。。
もしあるのなら、僕は救ってもらえたと思う。
僕にも何か出来たら。。。
僕が彼に救ってもらったように。。。
(いい夢見てたら、いいな。)
そう思うと、僕の胸で寝ている彼が、
すごく愛おしく感じて、
本当に彼の事が好きなんだと思う。
起きないように、史登のおでこにチュ♪ってしてみた。
すごく、照れた。
首まで真っ赤だろうな。
ま、僕たち今日は、それ以上の事しちゃってるけど。。。
僕は、そっと彼が起きないように、彼の頭を両腕でゆっくりと抱えて、
まるで、ワイルドの小説・サロメがヨカナンの首を抱えるみたいに。
僕はサロメじゃないけれど、
史登を誰にも渡したくないっていう
サロメほど、刹那的ではないけれど、
そんな気持ちが、自分に芽生えた事を知った。
ワイルドの小説は好きだ。
サロメの気持ちが全く理解できなかったけど、
今の僕に近い感情だったのかな。。。?
ワイルドはどう思って書いたんだろう。
もう一度、読み直すこともこれからの課題にしようと思った。
「これって、やっぱり恋?
な〜んつってw」
史登が寝ているのを再確認して、
小さい声だけど、ちょっと言ってみた。
自分で言いながら、照れてたりしてる僕。
歪んでるかな?とか、変?とか。。
思いながらも、えへへってちょっと笑ってみたりで。。。
どっちでもいいやって、今は思える。
何がいいかなんて、その人の人生によって、違うんだから。
自分の物差しで考えればいいって。
自分の気持ちに理屈をつけないで、
素直になろうって、彼の前だけでも素直になろうって。。。
「俺も。」
(えっ?)
いきなり口を塞がれた。
僕はびっくりして、目を開けたままだった。
史登が僕の頭を自分の手で、
自分の顔に近づけて。。。
なんでだろう・・・
史登と同じように、僕も目を閉じて、
何度もキスを重ねた。
毎日やってるのに、いつもなぜか新鮮な気持ちでキスしてる。
少し、強引な彼が好きなんだ。
僕も彼の顔に手をやり、貪るように何度も何度も、
彼に唇を重ねた。
それは息苦しくなるほどに。。。
「んっ・・・」
はぁっと、甘い吐息を吐きながら、
彼を見つめる僕。
キスをしながら、彼は僕より上の方に身体を、
動かして、僕を見降ろす位置に来ていた。
「史登、ごめんね。
僕、いつも許してくれるって甘えてた。
本当にごめんなさい。」
(やっと言えた。)
言いたかった言葉が言えて、涙が出そうになった。
でも、僕はこらえた。
泣いたら、彼とフェアじゃないって思ったから。
史登は何でもお見通しなのかも知れない。
僕の頭を軽く撫でて、いい子だって言ってくれた。
この言葉が今の僕にはすごく、心地がいい。
それだけで、彼の全てを愛してしまえる。
史登はまた後でなって言って、
僕に自分を抱っこさせて、また眠りについた。
寝つきはいい方なんだってことも、初めて知った。
だって、すぐ寝るんだもん。
(今度も、いい夢見れてたらいいな・・・)
僕は、僕より一回りも二回りも大きな男だったけれど、
この時間だけは、すごく小さな小動物系に見えて、
可愛かった。
(本人に言ったら、怒られるけど。。。)
学校でも少し、喋ってみようか。。。
彼と一緒なら、僕は違う自分になれるかもしれない。
絵とかも、教えてもらおうかな。。。
(共通の趣味っていいよね。
あ、史登は趣味じゃなかったっけw)
それと、聞きたい事がもう一つあって、
僕たちは恋人同士なんだよね?って、
(僕はそのつもりなんだけど・・・)
今日初めて、心が通じたような感じがして。。。
(僕ってやっぱり、変かな?)
でも、ちゃんと史登が答えてくれる。
そんな未来の希望に少し期待して、
彼を抱きながら、僕も眠りにつく事にした。
体力温存しないと、彼と付き合えないからねw
2010-04-02
記憶の彼方ー前篇ラスト
記憶の彼方ー前篇ラスト
僕、椿理央は今日を境に、初めての事ばかりが、
僕の身に起きてしまっていて。。
まず、学校をさぼりたいなんて思った事も初めてで、
途中で家に帰りたいって思うのも初めてで、
まして、保健室でサボるつもりが、
人を追いかけて、屋上まで上って、
その人とキスをしたりするのも初めてで、
また、その相手が男だって言うのも初めてで、
キス自体も僕は初めてだったりして。
人の唇の感触が、すごく弾力があって、
ねっとりというか、一度重ねてしまうと、
吸いついて離れなくなってしまうくらい、
気持ちが良くなってしまっていて。。。
それ以上に、人の舌が僕の舌に絡んでくるのが、
初めはニュルっとした気持ちで、
えっ?って思ったけれど、
柔らかくて、でも少しザラっともしていて、
その舌が僕の喉の奥まで、届きそうなくらい、
僕の口の中を丹念に調べるように、
触れていき、その度に相手の唇が、
僕の唇を圧迫するような力強さで、
僕に迫ってきていて。。。
そして、それは凄く息苦しいんだのだけれど、
相手の息遣いが僕の顔に当たる度に、
僕は背中がゾクっと仰け反るように、
背中を反らしてしまって、
その結果、相手と僕との体の密着度は高くなっていき、
相手の腕や体をギュッと掴んでいないと、
その場にヘタってしまいそうだった。
唇と唇が離れても、ツーっと一本のねっとりした線が、
お互いの舌を通して、まだ繋がっていて、
その繋がりが切れないように、僕は自ら舌を前に出したりしていて、
キスをするとそういう事もあるんだって、
今日初めて知って。
でも、僕の両足には、相手の太股が割り込まれていて、
僕の大事なところを、それほど強くは無いけれど、
上下にこするように刺激してきて、
そんな事も人にされるなんて、
僕はほんとに初めてで、自分でもあまり触ったりする事が
なかったのに、まして赤の他人でまして相手が男で、
がそんなところを、こする事が出来るなんていうのも、初めてで。
その度に、僕は今まで自分でも聞いた事のない、
甘ったるい音を口から出していて、
僕がまるで女の子が出すような、
甘えた音を出す人間だったなんて事も初めて知った訳で。
相手も、僕の甘えた少しキーの高い音を聞く毎に、
段々堅くなっていく自分のモノを僕の足に押しつけてたり、
その過程がわかるというか、段々堅くなっていく様子を、
体感して、少し怖かったのも、初めてで。
でもって、相手が自分の家に来る?と誘ってきて、
うんと頷き、その通りしている自分も初めてで。
僕は、今日は初めてだらけで、
自分の中で何がどうなっているのか?
体に気持ちがついていくのに、必死だった。
僕は、初めて諸角の家に来た。
校門で待っていろと言われたから、
僕はその通りにした。
そして、彼は僕の荷物も持って、
校門に現れた。
ちゃんと早退扱いの手続きまでしてくれてたみたいだった。
やる事全てにそつがないというか・・・
彼にありがとうとお礼を言って、頭を僕はまた下げた。
彼は「いいよ。そんなの。」って言いながら、僕の頭を撫でてくれた。
僕より一回りは大きい手。
少し、熱かった。
体温が。。。
諸角は、校門の近くでタクシーを拾って、
僕を乗せて、自分の家まで連れて行ってくれた。
そして、僕は諸角の家の彼の部屋にいるらしい。
彼は、お茶とか用意してくるから、
ゆっくりしておけって言ってくれた。
彼の家は、世界でも有名な日本画家の家の子らしい。
彼も絵を描くみたいだ。
彼は2年ダブってるけれど、それは海外で日本画を教えていたという事を
僕は、向井地から聞いていた。
その通りみたいで、この彼の部屋から見える庭は、
どこかの画集にでも載ってるかのような、
見事な日本庭園だった。
でも、彼の部屋は洋室。
二階とかは無いみたいで、全て平屋のようで、
廊下はフローリングと言えばかっこいいが、
ようは板張りだ。
この部屋から全体は見えないが、
青々とした木々の品の良さから、凄く大事にされているんだって
事がわかった。
学校で見る木々も好きだが、ここの木々はまるで無駄がない。
洗練された形で、これ以上の完成は有り得ないって感じの簡素さ。
だけど、木々の個性は全く失っていない。
一枚一枚の葉が、太陽に僕はここだって、
ちゃんと主張している。
だから、学校の木々より葉っぱが分厚く、青々としていて
大きく、堂々としている感じを僕は受けていた。
(木々はここまで、簡素化されても、個性を出せるんだ・・・)
その中で生きてきた彼は、諸角は一体どういう人間なんだろう。。。
初めは母に言われた義務で、
僕は、彼に話しかけたが、
あの熱を持った彼。。。
いつも寝てばっかりで、やる気無さそうって思っていた彼が、
僕という人間をあそこまで熱くさせる彼。
初めてだらけで、僕は少し混乱していたのかもしれないけれど。
この混乱の先には何があるんだろう?
調和?それとも破壊?
なんだろう。
そして、完璧な日本庭園に反する、彼の洋室の部屋。
ゴチャゴチャしてはいないが、
ベッドと机とパソコンの機器類みたいなのが、コロコロに転がっていたりして、
でも、簡素化した完璧さという意味では、
結構広そうだけれど、あっさりした感じだから、
ある意味、家の造りと共通したところはあるのかもしれない。
でも、一見見渡した限りでは、絵の道具なんてどこにも見当たらなかった。
ギギッ!
扉の開く音。
(あっ!)
僕は窓の向こうの木々から、後の扉へと振り向いた。
諸角が足で扉を開けていた。
(うっ!行儀悪いかも・・・)
僕はかけて、扉を開けるのを手伝った。
諸角は両手が塞がっていた。
お茶とかお菓子とか色々持ってきてくれていた。
諸角はサンキュっといって、僕をニッとみた。
「声かけてくれたら、僕は手伝ったのに。」
「いいよ、いいよ。これくらいw。」
諸角は、笑ってお盆に乗せた飲み物らを、
そこらに置いて、俺の頭を撫でた。
頭を撫でられるのは、嫌じゃなかった。
むしろ、気持ちいいくらいで。
「どうして、ついてきたの?。」
諸角は、僕の頭を撫でていた手を僕の腰にいきなり手を廻してきて、
僕が逃げないように、そして僕の体の動きを自分の思い通りにさせようとしていた。
いきなり、密着する諸角の胸と僕の胸。
そして、また彼は僕の足に自分の堅いモノを押し付けてきた。
(うわっ!もう、こんなに。。。)
僕とは一回りくらい、体の大きさも違うから、
あらゆる所が、僕より大きく感じて、
それだけでも、恥ずかしくて顔が赤くなってしまっていると思う。
(首も赤いかも。。。)
僕は目線を反らすので、精一杯だった。
と、とりあえず、何か喋らないと。。。
こういう事は、僕は凄く不慣れで、
一生なくてもいいって思っていたくらいだった。
なぜって?
無駄だと思っていたから。
そんなこと知らなくても生きていけるって
思ったから。
母を見ていてそう感じていた。
そんな自分にこんな状況が来るとは、
夢にも思わなくて。。。
「こ、来いって言ったから・・・。」
「俺が?。」
コクっと僕は頷いた。
ホントは違う。
この熱の先はなんなのか?
どうして、僕を助けたのか?
どうして、あの場所にいたのか?とか。。。
色々聞きたい事はあったけれど、
言葉にするなんて、僕には百万年早い位、僕は未熟だ。
「んじゃ、俺が股広げろって言ったら、するの?。」
(えっ?ま、また?
またって?)
「あっ!」
バタっ!!
彼は間髪入れずに、僕をベッドに押し倒してきた。
目と目が合う僕たち。
僕はどんな顔してるんだろう?。
赤い顔してるんだろうか?
それとも恐怖?
まだ、何にも彼への返答をしていないのに、
僕はあられもなく押し倒されて、両手を握られ動けなくされてる。
いや、僕は動けなかったんだ。
諸角の視線が鋭い矢のように僕に、何本も何本も突き刺さってきて、
僕はその矢で、体の部位を刺されているみたいだった。
まるで、自分が蝶の標本のようにされているみたいで。
彼の目は真剣だったんだと思う。
目が合えば合うほど、その矢は鋭さを増して、
僕の体にどんどん刺さり、動けなくしていく。
彼は僕に唇を重ねてきた。
その口付けは、なんというか・・・
すごくねっとりしていて、
初めて数回彼とキスをした中で、一番濃厚というか、
巧妙に舌先で僕の舌に絡ませて、
急に僕の舌を吸い上げたり、上唇を舐めてみたり、
舌先を転がしながら、口の粘膜や歯の裏側等を
ゆっくり味わうかのように、それは柔らかい肉を彼の舌で丹念に舐め上げて、
僕の唇から離した。
「あっ・・・ひゃっ!」
言葉と同時に僕の身体は、大きく波打ちピクッと反応した。
僕の口から、唾液が垂れているのが分かる。
でも、僕は動けない。
彼はその唾液さえも吸い上げて、僕への愛撫は頬を伝い、
首へと繋がっていく。
「あんっ・・・」
僕の体は反り返るように、震えていた。
そして、自分がまたこんな音が出てしまう事事態信じられなかったけれど、
彼は、その音を聞くごとに舌の動きを執拗に巧妙に、
僕の体に這わせていった。
自分の息が段々荒くなっているのがわかる。
彼は僕のシャツのボタンをすぐに外して、
僕の胸のぽつんとした突起を親指と人差し指でこねるように。
そしてしごくように、弄る。
つついてみたり、または舌でレロレロと舐めて転がしてみたり、
強く吸ってみたりで。。。
僕の反応を楽しんでいる。
「乳首、舐めても指でもどっちでも感じるんだ。」
「はぁはぁ・・・」
僕は、こういう事は本当に慣れてなくて、
恥ずかしくて、声も上ずっていて、
そんな声を誰にも聞かれたくないから、
でも、下から込み上げてくるむずむずとしたこそばゆさと恐怖で歯を食いしばるので、
精一杯だった。
「我慢しなくていいよ。誰も今居ないから。
鳴いてみて。俺に聞かせてよ。
誰も聞いた事ないんでしょ?その声。」
彼はそう言って、眉間のところに軽くキスをした。
(楽にさせてくれてるんだろうか・・・?)
少し、肩の力が抜けたっていうか、
僕は大きく息を吸う事が出来た。
「理央って、初めて?
その顔、エロすぎw」
(え、エロ?)
誰に言ってる?
自分にまさか言われてるなんて思ってもいなくて。
こんな僕に無関係な言葉が投げ掛けられていても、
反論なんて出来る状態じゃなかった。
「あ!あっ!ああっ。」
その感覚はいきなり来た。
僕の目は瞳孔が開いたように見開いた。
諸角は僕をずっと観察するかのように見たままだった。
平たい上にあるポツっとした突起を、
親指で転がしたり、人差し指も使って
摘まんで引っ張ってみたりしながら、
彼の手は、下へ下へと動き、僕のモノにで触れてきた。
少ししか勃ってなかった僕のモノは、
彼の手によって、どんどん堅くなっていく。
彼の手が上下に速度を段々早くこすりたてていく。
ピクピクと震え動き、少しずつヌメヌメと生温かいものが
こぼれ流れていく。
(段々、熱くなってくる・・・)
どうにかしたい・でもどうにもできないこの状況に、
僕の腰は浮き上がって、太股がプルプルと震える。
「両足、開いて。」
諸角は僕の耳そばで、囁くように言って、
一瞬消えたように思えた。
僕の息は荒い。
はぁはぁとしか、音がでなくて、
ウンともなんとも言ってない。
「あぅっ!」
喉が反り返る。
何が起こったか?
わからなかった。
凄く生温かくて、段々音が聞こえてくる。
「グチュッ、グチュッ。」
(舌の感覚!)
少し上半身を起こして、僕は見た。
諸角は、僕のを咥えて、それも音を立てながら、
しゃぶっていた。
「や、やめて。それは!」
僕は、やっと少し正気になれたのかもしれない。
諸角の頭をどかせようとした。
「どうして?こんなになってるのに?」
諸角は顔を上げて、僕のを握りながら、でも小刻みに指を動かしていて。
「あーッ!」
諸角は唇の弾力と舌の器用な動きで、唾液を僕のに滑らせて、
根元を指で少しきつく上下にしごきながら、
後の袋も優しく撫でてさすったりしていた。
「結構、いい形だよね。」
唇をはずして、諸角は僕のを眺めて言った。
僕はもう余裕なんてなくて。
イキたくて、仕方がなかった。
どんどん、流れ落ちる精汁なんてお構いなしに、
諸角は、唇は離しても、手は離してくれなかった。
髪を振り乱して、仰け反る僕を見ながら、
彼は僕のに軽く息を吹きかけ、舌先でツンツンとてっぺんを
小突いてみせて、そして一気に根元まで頬張った。
「いいよ。イッて。」
まるで、それは魔法の呪文で、
彼がそう言うと、僕は彼の口の中で一気に果てた。
「グチュグチュ、クチュクチュ、ピチュ、ピチュ。」
そんな音で僕は目を覚ました気がする。
(気を失ってたのかな?。
変に痛気持ちいいっていうか。。。
なんだろう?この感覚。。。)
「そんなに良かった?俺のフェラ?」
お!気がついたか?みたいな感じで、
諸角は僕に声をかけた。
いつの間にか?僕は仰向けにされていて、
でも、何されてるか?
わかんなかった。
(頭がボーっとする。考えられないよぉ。。)
「2本入るようになったし、そろそろいいかな。。?」
さっぱり意味がわからなかった。
諸角は、僕の体というか、
下半身を持ち上げて、お尻を高々と突き出す格好を、
僕にさせた。
「ほんとは、前がいいんだけど。
最初だからな。
見えたら、怖いだろ?」
(?)
もう、されるがままの状態だった。
羞恥心とかって何?って感じで。。。
今が昼か夜か?それもわからなくて。。。
「ひやっ!」
(何?この冷たいの?)
首だけ、後の諸角を見た。
僕の目は視点が定まっている状態じゃなかった。
その時だった。
いくらほぐしてあるとはいえ、
僕は初めてだったから、
僕の中に凄く堅い反り返った異物が入ってきたのと同時に、
痛烈に痛い!って感覚が出てきた。
とろんとして視点の定まらない目は、
一瞬にして現実を知ることになり、
目尻から、痛みで涙が出てくる。
「っっ!!!」
「力抜いてろって。まだ全部入ってないから。」
諸角はそういって、縮みあがって、小さくなった僕のを手でしごきながら、
僕に覆いかぶさりながら、耳元で囁いた。
僕は殆ど、息が出来ない状態だった。
このズキズキとした痛みが迫ってきて、
もしかしたら、切れてたり、血が出てたりと、
不安になって怖くなって、
余計に力が入ってしまう。
「大丈夫だから、すぐ良くなるから。
俺に任せて。」
涙が止まらない僕に囁き、後から耳や頬にキスして
僕の緊張を取ろうとしてる諸角。
優しいのはわかってるんだけれど、
余りの痛さに。。。
彼は徐々に道を開くように、ギシギシといいながらも、
僕の中に入ってきた。
その度に僕の腰骨は、割れそうな感覚で、軋んでいくようだった。
「ごめっ。そんなに締めないで。
くい千切られそう。」
(そんなこと、言ったってどうしていいかわかんない。。。)
僕は大きく息をし続けた。
苦しくて、息が出来ないようになったから。
堅って〜なという言葉が、後から聞こえても、
どうにもできなくて、力なんて入れてるつもりもなくて。。。
涙が止まらなくて、溢れるばかりだった。
「ちゃんと、全部入ったよ。
わかる?俺が入ってるの?」
フーッと息を彼は吐きながら、僕に語りかけてきたが、
僕はそんなのも聞いてる余裕なんてなかった。
(早くなんとかしてほしい!)
「動くよ。」
そう言って、彼はゆっくりとピストン運動を始めた。
「だんだん、良くなるから。
力抜いてね。」
彼はまた、軽くキスを僕の頬にして、
動きだした。
彼に開けられた僕の溝が、段々と熱を帯びてきて
猛烈に摩擦しだす。
(い、息ができない!苦しい。。。)
僕は、自分が割かれるような痛みで、
この行為は拷問に近かった。
彼は自分の下半身を段々勢いよく、僕にぶち当てて
突き立てていく。
「ごめん、や、優しくないかも。。。」
女のモノより、締めつけ内壁はピッタリ絡みつく僕の中は、
熱くて、より一層の興奮があるらしい。
これは後から聞いた話だけれど。
「ああ、うー、うぅぅッ」
僕は悲鳴にも近い声を上げていた。
中がミシミシと軋むんだ。
「やっぱり、いいよぉ。
理央の中。
想像以上だね。この締まりと絡みつきは。」
(な、何言ってんの?こいつ!)
こっちはめちゃくちゃ必死なのに。。。
シーツにしがみ付いて、なんとか終わってもらうまで、
堪えるのに僕は耐えられそうにないかも。。。とか
違う事を考えていようとか。。。
この辛いのに、なんとか我慢する事だけを考えていた。
「く、く、くぅ・・・」
僕の声からは嗚咽しかでてこなかった。
彼は僕のも一生懸命しごいてくれていた。
体と体がパンパンパンっとぶつかる音が響く。
そして、後からは彼の汗と荒い息遣いが、
背中に伝わってくる。
(僕で感じてるんだ・・・)
なんとも不思議な気持ちで、
これがまるで他人事のような感じで、
でも、この痛みは自分自身に来ているもので。
(普通に抱き合うだけとかじゃ、ダメなんだろうか。。。)
「あッ」
諸角が突くところを変えてきた。
凄く奥に当たった感じがした。
今までの裂かれるだけの痛みじゃなくて、
段々と、擦れる毎に、突かれる事に気持ち良い快楽になっていった。
「もしかして、ここ、感じる?」
「わ、わかんないけど。。。
痛いとかじゃ。。。」
彼は息を弾ませて、少し嬉しそうに僕に聞いてきた。
(あっ!少し大きくなってる?)
僕の中に彼が少し大きくなったように感じた。
もっと深いところを、ドンっと僕の中を抉るようにして、
彼の堅いモノは奥へと、杭のように打ち続けた。
「たまんないッ、理央の中は。
ほんとよく締まる。んんッ、うッ。」
「な、なんか来るッ!な、なんかッ」
全身から汗を滴らせながら、欲情のままに絶頂を目指して、
彼は体を酷使して、登りつめようとした。
「いい感じじゃん、一緒にいけそうだね。」
「あんッ、くぅぅん、いッ、いいッ
あッ、あッ、いいッー。諸角!」」
僕はいつの間にか、痛みよりも痛気持ちいいという、
変な快楽が体に襲っていて、体がガクガクさせていた。
僕自身も小さくなっていたのが、
勃ってて、さっき出したばかりなのに、
また、精汁がこぼれていて。
「ぼ、僕どうなるッの?
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、あ、あッ」
突かれる度に来る、全身に流れる電気の痺れの波に、
彼の体にすがりながら、耐えていた。
身体が弓なりになって浮き上がったような状態だ。
「ぼ、僕、もう。。もろ。。ず。。み」
「わかった、い、一緒に。」
「あぅ、ああぁ、もうーーー」
彼の挿入の速度が忙しく短くなって、
やがてグっと彼の腰を入れて深いところを突いてきた。、
より一層、僕は奥を突かれて、僕自身もさっきイッたばかりなのに、
また彼にイカされていた。
僕の身体の中には、グッと腰を入れたことによって、
壊れた水道のホースのように暴れた、彼のモノからびゅッびゅッと、
勢いよく出るものを僕は感じた。
そして、ハッハッという荒い息が、彼の口から洩れていた。
僕は、短く喘いで一瞬固くなった身体だったが、彼のモノが出される事によって、
僕の締まりはより一層締まり、諸角の背中に爪を立て、全身を痙攣させて、
朱に染まった僕の頬や首筋・全身はピクピクと痙攣していた。
(冷たッ)
見た事の無い天井。
ものすごい身体のダルさ。
ここはどこだろうと、身体を起こそうとした瞬間。
強烈な痛みが身体の背骨を通して、
全身に走る電撃を受けた。
「寝てろって。」
ベッドの横には諸角がいた。
タオルを持って、僕の顔を拭いてくれていたらしい。
そういえば、ベトベト感が全くない。。。
(全身、拭いてくれたんだ。)
「大丈夫か?」
諸角は、僕の頬を自分の手の甲でそっと優しく撫でながら、
語りかけるように優しく言ってくれた。
(そう言えば、なんとなく目も優しい感じがする。)
「初めてなのに、一緒にイケたなw」
笑いながら彼は言った。
僕は、一気に顔が赤くなった。
さっきまでの事が、思い出されてしまったからだ。
顔を見せたくなくて、身体の向きを変えたかったが、
痛みがあって動けないから、
ふくれっ面と布団でガバっと顔を隠すしか、対抗する手段がなかった。
おいおいっていう感じで、諸角は布団を下げて、
僕に軽くキスしてくれた。
僕は彼とのこの軽くしっとりとした弾力のある唇でのキスが、
凄く好きだった。
「痛いだけじゃ、嫌だろ。」
(確かにあの痛さは半端じゃない。。。)
僕はコクっと頷いた。
諸角は、タオルを近くの窓の桟に置いて、
僕の顔を両手で摩りながら、キスをしてくれた。
舌を絡めるキス。
優しい舌の感触だけで、僕の腰が反応してしまいそうになる。
舌と舌が絡まって、気持ちがいい。
唇を離された後、僕は思わず喘いでしまった。
今日はいつもの何倍も敏感になっているように思う。
フフっとわらって、僕の額に軽くキスをしてくれた。
僕のふくれっ面はもうとっくに治っていて、
諸角を見る度に、なぜかキュンとしたものが胸に込み上げてきた。
「理央の家には連絡しておいたから。
今日はうちに泊まるって言っておいたし。
俺、理央と色々話がしたいんだよ。」
彼の表情は、僕をいちいちドキドキさせる。
平常心を保つのが、とても難しかった。
「僕と?」
「そう。。。」
「席が隣だったから?」
何か順序がてんでバラバラな感じがしないでもないが、
あんなすごい事をして、
今更こんな事聞いてどうするんだろうって
我ながら、馬鹿さ加減に可笑しくもなるんだけど、
聞かずにはいられなかった。
初めの目的の一つでもあったから。。
「何か飲む?」
「あ、今はいいよ。後でで。」
「今は、何時なの?」
また、口元だけを歪めて、僕を見て笑う彼。
な、なんだよっ・・って思いながらも、
視線を外せない僕。
「今、夜の9時。」
「え、ま、マジ?。」
僕は、余りの時間の遅さにびっくりして、
一体僕は何時間寝てたんだ?って思うと、
起きなくちゃって思ったんだ。
そしたら、案の定。。。
身体に激烈な痛みが走った。
うっと顔が青ざめてしまうくらいの痛み。
だから寝てろってと言われながら、
ゆっくりベッドに身体を支えながら、欲にしてくれた彼。
(思わずHしてしまったけど、案外いいやつなのかも。。。
助けてくれたし。。。)
僕は、諸角が配慮してくれた事に感謝して、礼を言った。
「今日もだけど、今までも色々とありがとう。
それと今日は、諸角君の言葉に甘えさせてもらうよ。」
「史登だよ。」
「ふ、ふみと?」
「うん。」
僕は少し照れくさかった。
あんな事しておいて、って言われるかもしれないけれど、
まさか、諸角を史登と呼ぶ事があるとは思わなかったから。
ちらっと諸角を見てみる。
彼も少し照れくさそうだった。
(なんか変な感じだな。。。)
諸角が史登と呼べというから、そう呼ぶが、
その史登は、近くのコップを口に入れて、
そのまま、僕に顔を近づけてきた。
彼の舌を伝って、僕の喉に飲み物が伝わってくる。
ついでに彼の柔らかい舌も僕の舌を誘うように絡んできて、
僕は、もっとという気持ちなのだろうか?
彼をもっともっとと求めるように、奥へ奥へと舌を伸ばしていく。
(今日一日でキスからHまでやってしまった。。。)
今までの事が走馬灯のように頭に流れてくる。
ぱぁッと彼の口から、僕は離れた。
ドキドキが彼に伝わるのが怖かったから。
喉はゴクっと鳴らしながら、
飲み物を身体の中へと運んだ。
口元から少し垂れた、はみ出しものの飲み物。
史登はそれを残さず、吸い上げるように、
僕の口元に舌を寄せ、ペロっと舐め上げた。
軽くまたキスをしてくれた。
ちゅッと音がした。
それだけだけど、また僕の奥底にある炎が燃え上がりそうで、
怖かった。
「?」
(喉に飲み物だけじゃないモノが。。。)
「だるさを軽減する薬だから。変な薬じゃないよ。」
「そ、そうなの?」
「びっくりした?」
「うん、少しね。今日は初めてな事がいっぱいあったから。。。
正直、頭が少し混乱してて。。」
史登は、僕の髪や顔を撫でながら、僕の話を聞いていた。
「じゃ、今日起きた事も、混乱のせい?。」
ちょっと怒ったのかな?
僕の顔や首筋を軽くキスしながら、史登は僕に尋ねてきた。
彼は服というか、部屋着みたいなのを着ているけれど、
僕は?といえば、まだ裸のままであったりして・・・
彼の手は僕の胸の突起物に触れた。
史登の指の腹が優しく、僕のそれを捏ねまわすように弄る。
僕はまた、何も考えられなくなる。
自分でも分かる。
彼の指の動きに合わせて、自分の腰が淫らにくねくねと
揺らす様を・・・
「ううン、ああッ、あッ」と僕は声を漏らす。
「もう、こんなに感じるんだ。やらしぃいなぁ・・」
ニヤッと笑いながら、史登は僕を弄るのをやめない。
史登の手が僕の身体を擦りながら、
下へと伸ばしていく。
「あっ、だっ、だめッ・・・・・」
僕は小刻みに震えていた。
この振動は史登にも、伝わっているはず。
史登がどんな表情をしてるかなんて、
全く頭になくて、でも史登にしがみ付かないと
この震えは止まりそうもなくて。。。
「お、お願い。キスして・・・」
そう、史登に言った。
そうしたら、震えが止まればいいのにって、
願いも込めながら。
史登は僕の上に覆いかぶさり、二人の身を重ねて、
しっかりと激しく僕は史登の首にしがみつき、
史登は僕を両手でしっかりだきしめて、
二人の唇を重ねて熱く甘い吐息を洩らしていった。
「はぁん。。。あんッ。」
余計に身体の奥のモノが燃え上がりそうだったけれど、
史登の答えを僕はまだ言っていなかった。
でも、史登の今までの行動の答えも僕は問うてもいなかった。
「史登は、どうしてあそこにいたの?。
どうした助けてくれたの?。」
僕は史登の首に手を廻したまま、聞いた。
少し、間が開いたけれど、
史登は答えてくれた。
「理央がいたから。」
「僕がいたから?。」
「理央が教室を出て行くのを見ていたから、
後を付けただけだよ。」
「何か言おうとしたの?あの時。」
「理央はどうして、あそこにいたの?」
「一人になりたかったから・・・」
「じゃ、今は?。」
(今?)
僕は目をつぶった。
史登は、学校と家とじゃ、
人格が違うくらい、優しくて穏やかで、
あんな、僕が今までムカつくような言葉を吐くような
人間じゃなくて・・・
「史登は、こんなことする人、他にもいるの?」
「いないよ。」
即答だった。
「言ってただろ。可愛いってw」
またクスッと笑った。
でも今は嫌みじゃない。
史登は本当に優しいんだ。。。
って思える。
まだ、話して何時間も経ってなくて、
身体の関係になってしまったけど。
「それに、身体の相性も良さそうだし。俺と理央は。」
また、顔が赤くなるような事を平気で言う。
ギュッと僕は、史登にしがみついて言った。
「僕だけって言ってくれるなら。」
そして、ほっぺに軽くキスしてあげた。
「当然、理央だけだよ。ずっと可愛いって思ってた。
好きだよ。理央。
こうしていたかったんだ。理央と。」
史登は僕をそのまま寝かせて、
僕に何度もキスをして、
僕の胸を悪戯して、僕のモノに触れる。
キスをしながら。。。
また、僕はとろけてしまいそうな、あの熱を身体の奥の奥を、
激しい力で突き上げられて、濃厚な史登の体液を一滴残らず飲みほして、
これまで感じた事のない全身が、総毛立つ感覚に全身が痙攣していくんだ。
僕、椿理央は今日を境に、初めての事ばかりが、
僕の身に起きてしまっていて。。
まず、学校をさぼりたいなんて思った事も初めてで、
途中で家に帰りたいって思うのも初めてで、
まして、保健室でサボるつもりが、
人を追いかけて、屋上まで上って、
その人とキスをしたりするのも初めてで、
また、その相手が男だって言うのも初めてで、
キス自体も僕は初めてだったりして。
人の唇の感触が、すごく弾力があって、
ねっとりというか、一度重ねてしまうと、
吸いついて離れなくなってしまうくらい、
気持ちが良くなってしまっていて。。。
それ以上に、人の舌が僕の舌に絡んでくるのが、
初めはニュルっとした気持ちで、
えっ?って思ったけれど、
柔らかくて、でも少しザラっともしていて、
その舌が僕の喉の奥まで、届きそうなくらい、
僕の口の中を丹念に調べるように、
触れていき、その度に相手の唇が、
僕の唇を圧迫するような力強さで、
僕に迫ってきていて。。。
そして、それは凄く息苦しいんだのだけれど、
相手の息遣いが僕の顔に当たる度に、
僕は背中がゾクっと仰け反るように、
背中を反らしてしまって、
その結果、相手と僕との体の密着度は高くなっていき、
相手の腕や体をギュッと掴んでいないと、
その場にヘタってしまいそうだった。
唇と唇が離れても、ツーっと一本のねっとりした線が、
お互いの舌を通して、まだ繋がっていて、
その繋がりが切れないように、僕は自ら舌を前に出したりしていて、
キスをするとそういう事もあるんだって、
今日初めて知って。
でも、僕の両足には、相手の太股が割り込まれていて、
僕の大事なところを、それほど強くは無いけれど、
上下にこするように刺激してきて、
そんな事も人にされるなんて、
僕はほんとに初めてで、自分でもあまり触ったりする事が
なかったのに、まして赤の他人でまして相手が男で、
がそんなところを、こする事が出来るなんていうのも、初めてで。
その度に、僕は今まで自分でも聞いた事のない、
甘ったるい音を口から出していて、
僕がまるで女の子が出すような、
甘えた音を出す人間だったなんて事も初めて知った訳で。
相手も、僕の甘えた少しキーの高い音を聞く毎に、
段々堅くなっていく自分のモノを僕の足に押しつけてたり、
その過程がわかるというか、段々堅くなっていく様子を、
体感して、少し怖かったのも、初めてで。
でもって、相手が自分の家に来る?と誘ってきて、
うんと頷き、その通りしている自分も初めてで。
僕は、今日は初めてだらけで、
自分の中で何がどうなっているのか?
体に気持ちがついていくのに、必死だった。
僕は、初めて諸角の家に来た。
校門で待っていろと言われたから、
僕はその通りにした。
そして、彼は僕の荷物も持って、
校門に現れた。
ちゃんと早退扱いの手続きまでしてくれてたみたいだった。
やる事全てにそつがないというか・・・
彼にありがとうとお礼を言って、頭を僕はまた下げた。
彼は「いいよ。そんなの。」って言いながら、僕の頭を撫でてくれた。
僕より一回りは大きい手。
少し、熱かった。
体温が。。。
諸角は、校門の近くでタクシーを拾って、
僕を乗せて、自分の家まで連れて行ってくれた。
そして、僕は諸角の家の彼の部屋にいるらしい。
彼は、お茶とか用意してくるから、
ゆっくりしておけって言ってくれた。
彼の家は、世界でも有名な日本画家の家の子らしい。
彼も絵を描くみたいだ。
彼は2年ダブってるけれど、それは海外で日本画を教えていたという事を
僕は、向井地から聞いていた。
その通りみたいで、この彼の部屋から見える庭は、
どこかの画集にでも載ってるかのような、
見事な日本庭園だった。
でも、彼の部屋は洋室。
二階とかは無いみたいで、全て平屋のようで、
廊下はフローリングと言えばかっこいいが、
ようは板張りだ。
この部屋から全体は見えないが、
青々とした木々の品の良さから、凄く大事にされているんだって
事がわかった。
学校で見る木々も好きだが、ここの木々はまるで無駄がない。
洗練された形で、これ以上の完成は有り得ないって感じの簡素さ。
だけど、木々の個性は全く失っていない。
一枚一枚の葉が、太陽に僕はここだって、
ちゃんと主張している。
だから、学校の木々より葉っぱが分厚く、青々としていて
大きく、堂々としている感じを僕は受けていた。
(木々はここまで、簡素化されても、個性を出せるんだ・・・)
その中で生きてきた彼は、諸角は一体どういう人間なんだろう。。。
初めは母に言われた義務で、
僕は、彼に話しかけたが、
あの熱を持った彼。。。
いつも寝てばっかりで、やる気無さそうって思っていた彼が、
僕という人間をあそこまで熱くさせる彼。
初めてだらけで、僕は少し混乱していたのかもしれないけれど。
この混乱の先には何があるんだろう?
調和?それとも破壊?
なんだろう。
そして、完璧な日本庭園に反する、彼の洋室の部屋。
ゴチャゴチャしてはいないが、
ベッドと机とパソコンの機器類みたいなのが、コロコロに転がっていたりして、
でも、簡素化した完璧さという意味では、
結構広そうだけれど、あっさりした感じだから、
ある意味、家の造りと共通したところはあるのかもしれない。
でも、一見見渡した限りでは、絵の道具なんてどこにも見当たらなかった。
ギギッ!
扉の開く音。
(あっ!)
僕は窓の向こうの木々から、後の扉へと振り向いた。
諸角が足で扉を開けていた。
(うっ!行儀悪いかも・・・)
僕はかけて、扉を開けるのを手伝った。
諸角は両手が塞がっていた。
お茶とかお菓子とか色々持ってきてくれていた。
諸角はサンキュっといって、僕をニッとみた。
「声かけてくれたら、僕は手伝ったのに。」
「いいよ、いいよ。これくらいw。」
諸角は、笑ってお盆に乗せた飲み物らを、
そこらに置いて、俺の頭を撫でた。
頭を撫でられるのは、嫌じゃなかった。
むしろ、気持ちいいくらいで。
「どうして、ついてきたの?。」
諸角は、僕の頭を撫でていた手を僕の腰にいきなり手を廻してきて、
僕が逃げないように、そして僕の体の動きを自分の思い通りにさせようとしていた。
いきなり、密着する諸角の胸と僕の胸。
そして、また彼は僕の足に自分の堅いモノを押し付けてきた。
(うわっ!もう、こんなに。。。)
僕とは一回りくらい、体の大きさも違うから、
あらゆる所が、僕より大きく感じて、
それだけでも、恥ずかしくて顔が赤くなってしまっていると思う。
(首も赤いかも。。。)
僕は目線を反らすので、精一杯だった。
と、とりあえず、何か喋らないと。。。
こういう事は、僕は凄く不慣れで、
一生なくてもいいって思っていたくらいだった。
なぜって?
無駄だと思っていたから。
そんなこと知らなくても生きていけるって
思ったから。
母を見ていてそう感じていた。
そんな自分にこんな状況が来るとは、
夢にも思わなくて。。。
「こ、来いって言ったから・・・。」
「俺が?。」
コクっと僕は頷いた。
ホントは違う。
この熱の先はなんなのか?
どうして、僕を助けたのか?
どうして、あの場所にいたのか?とか。。。
色々聞きたい事はあったけれど、
言葉にするなんて、僕には百万年早い位、僕は未熟だ。
「んじゃ、俺が股広げろって言ったら、するの?。」
(えっ?ま、また?
またって?)
「あっ!」
バタっ!!
彼は間髪入れずに、僕をベッドに押し倒してきた。
目と目が合う僕たち。
僕はどんな顔してるんだろう?。
赤い顔してるんだろうか?
それとも恐怖?
まだ、何にも彼への返答をしていないのに、
僕はあられもなく押し倒されて、両手を握られ動けなくされてる。
いや、僕は動けなかったんだ。
諸角の視線が鋭い矢のように僕に、何本も何本も突き刺さってきて、
僕はその矢で、体の部位を刺されているみたいだった。
まるで、自分が蝶の標本のようにされているみたいで。
彼の目は真剣だったんだと思う。
目が合えば合うほど、その矢は鋭さを増して、
僕の体にどんどん刺さり、動けなくしていく。
彼は僕に唇を重ねてきた。
その口付けは、なんというか・・・
すごくねっとりしていて、
初めて数回彼とキスをした中で、一番濃厚というか、
巧妙に舌先で僕の舌に絡ませて、
急に僕の舌を吸い上げたり、上唇を舐めてみたり、
舌先を転がしながら、口の粘膜や歯の裏側等を
ゆっくり味わうかのように、それは柔らかい肉を彼の舌で丹念に舐め上げて、
僕の唇から離した。
「あっ・・・ひゃっ!」
言葉と同時に僕の身体は、大きく波打ちピクッと反応した。
僕の口から、唾液が垂れているのが分かる。
でも、僕は動けない。
彼はその唾液さえも吸い上げて、僕への愛撫は頬を伝い、
首へと繋がっていく。
「あんっ・・・」
僕の体は反り返るように、震えていた。
そして、自分がまたこんな音が出てしまう事事態信じられなかったけれど、
彼は、その音を聞くごとに舌の動きを執拗に巧妙に、
僕の体に這わせていった。
自分の息が段々荒くなっているのがわかる。
彼は僕のシャツのボタンをすぐに外して、
僕の胸のぽつんとした突起を親指と人差し指でこねるように。
そしてしごくように、弄る。
つついてみたり、または舌でレロレロと舐めて転がしてみたり、
強く吸ってみたりで。。。
僕の反応を楽しんでいる。
「乳首、舐めても指でもどっちでも感じるんだ。」
「はぁはぁ・・・」
僕は、こういう事は本当に慣れてなくて、
恥ずかしくて、声も上ずっていて、
そんな声を誰にも聞かれたくないから、
でも、下から込み上げてくるむずむずとしたこそばゆさと恐怖で歯を食いしばるので、
精一杯だった。
「我慢しなくていいよ。誰も今居ないから。
鳴いてみて。俺に聞かせてよ。
誰も聞いた事ないんでしょ?その声。」
彼はそう言って、眉間のところに軽くキスをした。
(楽にさせてくれてるんだろうか・・・?)
少し、肩の力が抜けたっていうか、
僕は大きく息を吸う事が出来た。
「理央って、初めて?
その顔、エロすぎw」
(え、エロ?)
誰に言ってる?
自分にまさか言われてるなんて思ってもいなくて。
こんな僕に無関係な言葉が投げ掛けられていても、
反論なんて出来る状態じゃなかった。
「あ!あっ!ああっ。」
その感覚はいきなり来た。
僕の目は瞳孔が開いたように見開いた。
諸角は僕をずっと観察するかのように見たままだった。
平たい上にあるポツっとした突起を、
親指で転がしたり、人差し指も使って
摘まんで引っ張ってみたりしながら、
彼の手は、下へ下へと動き、僕のモノにで触れてきた。
少ししか勃ってなかった僕のモノは、
彼の手によって、どんどん堅くなっていく。
彼の手が上下に速度を段々早くこすりたてていく。
ピクピクと震え動き、少しずつヌメヌメと生温かいものが
こぼれ流れていく。
(段々、熱くなってくる・・・)
どうにかしたい・でもどうにもできないこの状況に、
僕の腰は浮き上がって、太股がプルプルと震える。
「両足、開いて。」
諸角は僕の耳そばで、囁くように言って、
一瞬消えたように思えた。
僕の息は荒い。
はぁはぁとしか、音がでなくて、
ウンともなんとも言ってない。
「あぅっ!」
喉が反り返る。
何が起こったか?
わからなかった。
凄く生温かくて、段々音が聞こえてくる。
「グチュッ、グチュッ。」
(舌の感覚!)
少し上半身を起こして、僕は見た。
諸角は、僕のを咥えて、それも音を立てながら、
しゃぶっていた。
「や、やめて。それは!」
僕は、やっと少し正気になれたのかもしれない。
諸角の頭をどかせようとした。
「どうして?こんなになってるのに?」
諸角は顔を上げて、僕のを握りながら、でも小刻みに指を動かしていて。
「あーッ!」
諸角は唇の弾力と舌の器用な動きで、唾液を僕のに滑らせて、
根元を指で少しきつく上下にしごきながら、
後の袋も優しく撫でてさすったりしていた。
「結構、いい形だよね。」
唇をはずして、諸角は僕のを眺めて言った。
僕はもう余裕なんてなくて。
イキたくて、仕方がなかった。
どんどん、流れ落ちる精汁なんてお構いなしに、
諸角は、唇は離しても、手は離してくれなかった。
髪を振り乱して、仰け反る僕を見ながら、
彼は僕のに軽く息を吹きかけ、舌先でツンツンとてっぺんを
小突いてみせて、そして一気に根元まで頬張った。
「いいよ。イッて。」
まるで、それは魔法の呪文で、
彼がそう言うと、僕は彼の口の中で一気に果てた。
「グチュグチュ、クチュクチュ、ピチュ、ピチュ。」
そんな音で僕は目を覚ました気がする。
(気を失ってたのかな?。
変に痛気持ちいいっていうか。。。
なんだろう?この感覚。。。)
「そんなに良かった?俺のフェラ?」
お!気がついたか?みたいな感じで、
諸角は僕に声をかけた。
いつの間にか?僕は仰向けにされていて、
でも、何されてるか?
わかんなかった。
(頭がボーっとする。考えられないよぉ。。)
「2本入るようになったし、そろそろいいかな。。?」
さっぱり意味がわからなかった。
諸角は、僕の体というか、
下半身を持ち上げて、お尻を高々と突き出す格好を、
僕にさせた。
「ほんとは、前がいいんだけど。
最初だからな。
見えたら、怖いだろ?」
(?)
もう、されるがままの状態だった。
羞恥心とかって何?って感じで。。。
今が昼か夜か?それもわからなくて。。。
「ひやっ!」
(何?この冷たいの?)
首だけ、後の諸角を見た。
僕の目は視点が定まっている状態じゃなかった。
その時だった。
いくらほぐしてあるとはいえ、
僕は初めてだったから、
僕の中に凄く堅い反り返った異物が入ってきたのと同時に、
痛烈に痛い!って感覚が出てきた。
とろんとして視点の定まらない目は、
一瞬にして現実を知ることになり、
目尻から、痛みで涙が出てくる。
「っっ!!!」
「力抜いてろって。まだ全部入ってないから。」
諸角はそういって、縮みあがって、小さくなった僕のを手でしごきながら、
僕に覆いかぶさりながら、耳元で囁いた。
僕は殆ど、息が出来ない状態だった。
このズキズキとした痛みが迫ってきて、
もしかしたら、切れてたり、血が出てたりと、
不安になって怖くなって、
余計に力が入ってしまう。
「大丈夫だから、すぐ良くなるから。
俺に任せて。」
涙が止まらない僕に囁き、後から耳や頬にキスして
僕の緊張を取ろうとしてる諸角。
優しいのはわかってるんだけれど、
余りの痛さに。。。
彼は徐々に道を開くように、ギシギシといいながらも、
僕の中に入ってきた。
その度に僕の腰骨は、割れそうな感覚で、軋んでいくようだった。
「ごめっ。そんなに締めないで。
くい千切られそう。」
(そんなこと、言ったってどうしていいかわかんない。。。)
僕は大きく息をし続けた。
苦しくて、息が出来ないようになったから。
堅って〜なという言葉が、後から聞こえても、
どうにもできなくて、力なんて入れてるつもりもなくて。。。
涙が止まらなくて、溢れるばかりだった。
「ちゃんと、全部入ったよ。
わかる?俺が入ってるの?」
フーッと息を彼は吐きながら、僕に語りかけてきたが、
僕はそんなのも聞いてる余裕なんてなかった。
(早くなんとかしてほしい!)
「動くよ。」
そう言って、彼はゆっくりとピストン運動を始めた。
「だんだん、良くなるから。
力抜いてね。」
彼はまた、軽くキスを僕の頬にして、
動きだした。
彼に開けられた僕の溝が、段々と熱を帯びてきて
猛烈に摩擦しだす。
(い、息ができない!苦しい。。。)
僕は、自分が割かれるような痛みで、
この行為は拷問に近かった。
彼は自分の下半身を段々勢いよく、僕にぶち当てて
突き立てていく。
「ごめん、や、優しくないかも。。。」
女のモノより、締めつけ内壁はピッタリ絡みつく僕の中は、
熱くて、より一層の興奮があるらしい。
これは後から聞いた話だけれど。
「ああ、うー、うぅぅッ」
僕は悲鳴にも近い声を上げていた。
中がミシミシと軋むんだ。
「やっぱり、いいよぉ。
理央の中。
想像以上だね。この締まりと絡みつきは。」
(な、何言ってんの?こいつ!)
こっちはめちゃくちゃ必死なのに。。。
シーツにしがみ付いて、なんとか終わってもらうまで、
堪えるのに僕は耐えられそうにないかも。。。とか
違う事を考えていようとか。。。
この辛いのに、なんとか我慢する事だけを考えていた。
「く、く、くぅ・・・」
僕の声からは嗚咽しかでてこなかった。
彼は僕のも一生懸命しごいてくれていた。
体と体がパンパンパンっとぶつかる音が響く。
そして、後からは彼の汗と荒い息遣いが、
背中に伝わってくる。
(僕で感じてるんだ・・・)
なんとも不思議な気持ちで、
これがまるで他人事のような感じで、
でも、この痛みは自分自身に来ているもので。
(普通に抱き合うだけとかじゃ、ダメなんだろうか。。。)
「あッ」
諸角が突くところを変えてきた。
凄く奥に当たった感じがした。
今までの裂かれるだけの痛みじゃなくて、
段々と、擦れる毎に、突かれる事に気持ち良い快楽になっていった。
「もしかして、ここ、感じる?」
「わ、わかんないけど。。。
痛いとかじゃ。。。」
彼は息を弾ませて、少し嬉しそうに僕に聞いてきた。
(あっ!少し大きくなってる?)
僕の中に彼が少し大きくなったように感じた。
もっと深いところを、ドンっと僕の中を抉るようにして、
彼の堅いモノは奥へと、杭のように打ち続けた。
「たまんないッ、理央の中は。
ほんとよく締まる。んんッ、うッ。」
「な、なんか来るッ!な、なんかッ」
全身から汗を滴らせながら、欲情のままに絶頂を目指して、
彼は体を酷使して、登りつめようとした。
「いい感じじゃん、一緒にいけそうだね。」
「あんッ、くぅぅん、いッ、いいッ
あッ、あッ、いいッー。諸角!」」
僕はいつの間にか、痛みよりも痛気持ちいいという、
変な快楽が体に襲っていて、体がガクガクさせていた。
僕自身も小さくなっていたのが、
勃ってて、さっき出したばかりなのに、
また、精汁がこぼれていて。
「ぼ、僕どうなるッの?
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、あ、あッ」
突かれる度に来る、全身に流れる電気の痺れの波に、
彼の体にすがりながら、耐えていた。
身体が弓なりになって浮き上がったような状態だ。
「ぼ、僕、もう。。もろ。。ず。。み」
「わかった、い、一緒に。」
「あぅ、ああぁ、もうーーー」
彼の挿入の速度が忙しく短くなって、
やがてグっと彼の腰を入れて深いところを突いてきた。、
より一層、僕は奥を突かれて、僕自身もさっきイッたばかりなのに、
また彼にイカされていた。
僕の身体の中には、グッと腰を入れたことによって、
壊れた水道のホースのように暴れた、彼のモノからびゅッびゅッと、
勢いよく出るものを僕は感じた。
そして、ハッハッという荒い息が、彼の口から洩れていた。
僕は、短く喘いで一瞬固くなった身体だったが、彼のモノが出される事によって、
僕の締まりはより一層締まり、諸角の背中に爪を立て、全身を痙攣させて、
朱に染まった僕の頬や首筋・全身はピクピクと痙攣していた。
(冷たッ)
見た事の無い天井。
ものすごい身体のダルさ。
ここはどこだろうと、身体を起こそうとした瞬間。
強烈な痛みが身体の背骨を通して、
全身に走る電撃を受けた。
「寝てろって。」
ベッドの横には諸角がいた。
タオルを持って、僕の顔を拭いてくれていたらしい。
そういえば、ベトベト感が全くない。。。
(全身、拭いてくれたんだ。)
「大丈夫か?」
諸角は、僕の頬を自分の手の甲でそっと優しく撫でながら、
語りかけるように優しく言ってくれた。
(そう言えば、なんとなく目も優しい感じがする。)
「初めてなのに、一緒にイケたなw」
笑いながら彼は言った。
僕は、一気に顔が赤くなった。
さっきまでの事が、思い出されてしまったからだ。
顔を見せたくなくて、身体の向きを変えたかったが、
痛みがあって動けないから、
ふくれっ面と布団でガバっと顔を隠すしか、対抗する手段がなかった。
おいおいっていう感じで、諸角は布団を下げて、
僕に軽くキスしてくれた。
僕は彼とのこの軽くしっとりとした弾力のある唇でのキスが、
凄く好きだった。
「痛いだけじゃ、嫌だろ。」
(確かにあの痛さは半端じゃない。。。)
僕はコクっと頷いた。
諸角は、タオルを近くの窓の桟に置いて、
僕の顔を両手で摩りながら、キスをしてくれた。
舌を絡めるキス。
優しい舌の感触だけで、僕の腰が反応してしまいそうになる。
舌と舌が絡まって、気持ちがいい。
唇を離された後、僕は思わず喘いでしまった。
今日はいつもの何倍も敏感になっているように思う。
フフっとわらって、僕の額に軽くキスをしてくれた。
僕のふくれっ面はもうとっくに治っていて、
諸角を見る度に、なぜかキュンとしたものが胸に込み上げてきた。
「理央の家には連絡しておいたから。
今日はうちに泊まるって言っておいたし。
俺、理央と色々話がしたいんだよ。」
彼の表情は、僕をいちいちドキドキさせる。
平常心を保つのが、とても難しかった。
「僕と?」
「そう。。。」
「席が隣だったから?」
何か順序がてんでバラバラな感じがしないでもないが、
あんなすごい事をして、
今更こんな事聞いてどうするんだろうって
我ながら、馬鹿さ加減に可笑しくもなるんだけど、
聞かずにはいられなかった。
初めの目的の一つでもあったから。。
「何か飲む?」
「あ、今はいいよ。後でで。」
「今は、何時なの?」
また、口元だけを歪めて、僕を見て笑う彼。
な、なんだよっ・・って思いながらも、
視線を外せない僕。
「今、夜の9時。」
「え、ま、マジ?。」
僕は、余りの時間の遅さにびっくりして、
一体僕は何時間寝てたんだ?って思うと、
起きなくちゃって思ったんだ。
そしたら、案の定。。。
身体に激烈な痛みが走った。
うっと顔が青ざめてしまうくらいの痛み。
だから寝てろってと言われながら、
ゆっくりベッドに身体を支えながら、欲にしてくれた彼。
(思わずHしてしまったけど、案外いいやつなのかも。。。
助けてくれたし。。。)
僕は、諸角が配慮してくれた事に感謝して、礼を言った。
「今日もだけど、今までも色々とありがとう。
それと今日は、諸角君の言葉に甘えさせてもらうよ。」
「史登だよ。」
「ふ、ふみと?」
「うん。」
僕は少し照れくさかった。
あんな事しておいて、って言われるかもしれないけれど、
まさか、諸角を史登と呼ぶ事があるとは思わなかったから。
ちらっと諸角を見てみる。
彼も少し照れくさそうだった。
(なんか変な感じだな。。。)
諸角が史登と呼べというから、そう呼ぶが、
その史登は、近くのコップを口に入れて、
そのまま、僕に顔を近づけてきた。
彼の舌を伝って、僕の喉に飲み物が伝わってくる。
ついでに彼の柔らかい舌も僕の舌を誘うように絡んできて、
僕は、もっとという気持ちなのだろうか?
彼をもっともっとと求めるように、奥へ奥へと舌を伸ばしていく。
(今日一日でキスからHまでやってしまった。。。)
今までの事が走馬灯のように頭に流れてくる。
ぱぁッと彼の口から、僕は離れた。
ドキドキが彼に伝わるのが怖かったから。
喉はゴクっと鳴らしながら、
飲み物を身体の中へと運んだ。
口元から少し垂れた、はみ出しものの飲み物。
史登はそれを残さず、吸い上げるように、
僕の口元に舌を寄せ、ペロっと舐め上げた。
軽くまたキスをしてくれた。
ちゅッと音がした。
それだけだけど、また僕の奥底にある炎が燃え上がりそうで、
怖かった。
「?」
(喉に飲み物だけじゃないモノが。。。)
「だるさを軽減する薬だから。変な薬じゃないよ。」
「そ、そうなの?」
「びっくりした?」
「うん、少しね。今日は初めてな事がいっぱいあったから。。。
正直、頭が少し混乱してて。。」
史登は、僕の髪や顔を撫でながら、僕の話を聞いていた。
「じゃ、今日起きた事も、混乱のせい?。」
ちょっと怒ったのかな?
僕の顔や首筋を軽くキスしながら、史登は僕に尋ねてきた。
彼は服というか、部屋着みたいなのを着ているけれど、
僕は?といえば、まだ裸のままであったりして・・・
彼の手は僕の胸の突起物に触れた。
史登の指の腹が優しく、僕のそれを捏ねまわすように弄る。
僕はまた、何も考えられなくなる。
自分でも分かる。
彼の指の動きに合わせて、自分の腰が淫らにくねくねと
揺らす様を・・・
「ううン、ああッ、あッ」と僕は声を漏らす。
「もう、こんなに感じるんだ。やらしぃいなぁ・・」
ニヤッと笑いながら、史登は僕を弄るのをやめない。
史登の手が僕の身体を擦りながら、
下へと伸ばしていく。
「あっ、だっ、だめッ・・・・・」
僕は小刻みに震えていた。
この振動は史登にも、伝わっているはず。
史登がどんな表情をしてるかなんて、
全く頭になくて、でも史登にしがみ付かないと
この震えは止まりそうもなくて。。。
「お、お願い。キスして・・・」
そう、史登に言った。
そうしたら、震えが止まればいいのにって、
願いも込めながら。
史登は僕の上に覆いかぶさり、二人の身を重ねて、
しっかりと激しく僕は史登の首にしがみつき、
史登は僕を両手でしっかりだきしめて、
二人の唇を重ねて熱く甘い吐息を洩らしていった。
「はぁん。。。あんッ。」
余計に身体の奥のモノが燃え上がりそうだったけれど、
史登の答えを僕はまだ言っていなかった。
でも、史登の今までの行動の答えも僕は問うてもいなかった。
「史登は、どうしてあそこにいたの?。
どうした助けてくれたの?。」
僕は史登の首に手を廻したまま、聞いた。
少し、間が開いたけれど、
史登は答えてくれた。
「理央がいたから。」
「僕がいたから?。」
「理央が教室を出て行くのを見ていたから、
後を付けただけだよ。」
「何か言おうとしたの?あの時。」
「理央はどうして、あそこにいたの?」
「一人になりたかったから・・・」
「じゃ、今は?。」
(今?)
僕は目をつぶった。
史登は、学校と家とじゃ、
人格が違うくらい、優しくて穏やかで、
あんな、僕が今までムカつくような言葉を吐くような
人間じゃなくて・・・
「史登は、こんなことする人、他にもいるの?」
「いないよ。」
即答だった。
「言ってただろ。可愛いってw」
またクスッと笑った。
でも今は嫌みじゃない。
史登は本当に優しいんだ。。。
って思える。
まだ、話して何時間も経ってなくて、
身体の関係になってしまったけど。
「それに、身体の相性も良さそうだし。俺と理央は。」
また、顔が赤くなるような事を平気で言う。
ギュッと僕は、史登にしがみついて言った。
「僕だけって言ってくれるなら。」
そして、ほっぺに軽くキスしてあげた。
「当然、理央だけだよ。ずっと可愛いって思ってた。
好きだよ。理央。
こうしていたかったんだ。理央と。」
史登は僕をそのまま寝かせて、
僕に何度もキスをして、
僕の胸を悪戯して、僕のモノに触れる。
キスをしながら。。。
また、僕はとろけてしまいそうな、あの熱を身体の奥の奥を、
激しい力で突き上げられて、濃厚な史登の体液を一滴残らず飲みほして、
これまで感じた事のない全身が、総毛立つ感覚に全身が痙攣していくんだ。
2010-04-01
記憶の彼方-前篇5
記憶の彼方-5
僕は、ぼーっとしていた。
(頭、痛い・・・。)
僕は、倒れていたようだった。
ちょうど、右側を下にして、倒れていたようだから
右側全部が、ひりひりとして痛い。
僕は気がついたら、僕は自分の家に戻っていts。、
ちゃんと制服も、ハンガーに掛けられていて、
僕はちゃんとパジャマに着替えて、
自分のベッドの中に潜っていた。
毎日見ている自分の部屋だ。
「理央、大丈夫?やっと気がついたのね。
どれだけ心配した事か。。。。
迎えに行くって言ってるのに、
要らないって言ったり、
そうかと思えば、学校で倒れたなんて。。。
ママ、肝が冷えたわ。。。」
(え?ママが。。。?
そうなの?。)
僕はいまいち、状況がつかめてないでいた。
何故なら目を開けて、一番最初に見たのは母の顔だったから。
僕はとりあえず、ベッドから起きようとしているが、
右側だけが妙に、ヒリヒリして痛くって、
しどろもどろしていた僕を、母はベッドに座って、
僕が体を起こすのを手伝いながら、僕に話をしていた。
そして、何度も僕をギュッと抱きしめ、
何度も何度も「よかった。」と呟いていた。
顔は見えなかったが、最近は聞いたことが無い母の声だった。
少しゆっくりで、そしてお腹に響く、音楽で言うビブラードが
かかったような声だった。
(頭がクラッとする・・・この声。)
震えてるのかな?そんな事を思わせる声だった。
この声の主は、
僕の母、椿 純子だ。
男と同等に仕事をして、
アメリカでも紹介される、やり手の女社長が、
息子が倒れたくらいで、喚いていた。
(一応、心配してくれたんだろうか・・・?)
少し、嬉しかった。
仕事だけかと思っていたけど、
ちゃんと、今だけでも、
息子の事は気にしてくれていたんだって思えたから。
「僕。倒れたの?。」
「そうよ。いきなり倒れたって、
それ聞いて、急いで帰ってきたのよ。」
母は何度も何度も今度は、小さな聞こえるか聞こえないくらいな声で、
聞こえていてもたぶん僕くらいしか聞こえなかっただろう・・・
でも、僕さえ聞き取れない音としか聞こえない単語。
そんな声で囁いて、僕を長い時間ギュッと抱きしめてくれた。
母のそんな態度に、ちょっと照れくさくて、
誰も見ていないって分かっていても、
恥ずかしかった。
それも、拒否もできたんだろうけれど、
普通に嬉しく思えたから、
僕も母にだけ聞こえる小さな声で、
「ごめんね。ありがとう。」って
言ってあげた。
そして、僕もお返しに母に軽くハグしてあげた。
(やっぱり少し震えてるの?ママ?)
動揺した後の小刻みに震えている母の体と腕は、
少し細くて、これが大の大人と同等に渡り歩いてきた
女性の腕かと思うと、なぜか儚げな憂いを感じた。。
そして、その弱々しく感じた、僕を抱く母の力も
ギュッと強くなっていった。
久々の母子の抱擁だった。
やっぱり、母はどんなにすごくなっても
僕のたった一人の母親だ。
僕も素直に母をギュッと捕まえていたかった。
今だけでもいいから。。。
僕の目に少しウルッとした、
生温かいものがこみあげていたのは、
誰にも内緒だ。
僕だけの秘密。
「もう、無理しちゃだめよ。
ちゃんと迎えの車が行くって言ってるんだから。
おとなしく待っていてよ。」
母はそう言いながら、僕のおでこに自分のおでこをコツンと、
あててにっこり笑って、今日の事は、水に流しましょうって
目で僕に伝えてくれているように、
本当によかったって言葉も添えているような、
言葉が僕の頭によぎった。
僕も頬笑み返した。
そうやって、母と見つめ合ったと同時に
疑問がふと沸いた。
(僕はどうやって帰ってきたんだろうか?)
迎えが来たのか?
それとも誰か?
無邪気に喜んでる母に、
言いだせない僕だった。
(聞いていいのかな・・・?)
笑っていた僕の顔から、
少し、笑顔が消えた。
「あら、理央!
熱があるじゃないの!
きっと、雨に打たれて風邪ひいたのかもしれないわ。
お薬もってきてもらうから、
少し横になってなさい。」
そういって、母は内戦で薬の指示をだして、
僕の部屋の温度が上がるように、
機器を動かしてくれた。
(そういえば、少し寒気が・・・)
背筋がブルッとした。
そんな僕を見て、母はつかさず、
上に羽織るものを持ってきてくれて、
また隣に座ってくれた。
「お薬飲んだら、もう少し寝ましょうね。」
僕はうんって首を縦に振った。
(小さい頃に戻ったみたいだった。)
たまには病気もいいよな。。。
「忙しいのに、ごめんね。」
僕は母に今までに無いくらいしおらしく、
妙に素直になって言ってしまった。
クスッと笑った母は。
到着した薬を僕に飲ませて、
また、ベッドに寝かせてながら言った。
「私の大事な一人息子よ。
当然でしょ。
それに、送ってくれた方、
日本画の大家の諸角さんのお子さんって言うじゃない。
男前だし、彼が居なかったら、あなたどうなってることやら・・・」
僕は動けなかった。
まるで、金縛りとやらにあったようだった。
(も、諸角?この家に来たのか?)
「あら、気分が悪いの?理央?
顔色段々、悪くなってるわ・・・
大丈夫?
ちょっと待って、
先生を呼んであげる。」
急いで立ち上がろうとした母を、
僕はとっさに母の服を掴んで遮った。
母は?って顔で不思議そうに僕を見た。
「だい、大丈夫だよ。ママ。。。
それより、諸角がここに来たの?」
ぼくにとって今は熱より、あいつの話の方が僕には重要だった。
僕が寝ている間、何があったか?
知っておきたかったから。
あいつにだけは・・・って思っていたから。
そうだ!、思いだした。
僕はあいつの前で僕は倒れんだ・・・
「諸角さんが、あなたを連れてきてくれたのよ。
今度、お礼しなくちゃね。
あなたも元気になったら、ちゃんとお礼を言うのよ。
それに、彼と仲良くなっていて、損はないわね。
交際範囲は半端じゃないくらい広い人だから。」
この時、母は全く悪気とか無く、屈託なくその話をしていたと思う。
周りの人間は、普段の母の顔だというだろう。
「彼と同学年で同じクラスって、理央は本当に運のいい子だわ。
理央が起きるまで、居てあげてって言ったんだけどね。。。
色々お話がしてみたいわ。
彼。
理央もちゃんと、今度、ここにご招待するのよ。」
僕は何も言えなかった。
「ママ、びっくりしちゃったもの。
あなたの携帯から、諸角さんお電話してくださってね。
あなたが倒れたって、聞いて・・・
急いで帰ってきたのよ。
今日は全部、仕事キャンセルしてきたから、
ずっと、ママが一緒に居てあげるわ。
なんたって、諸角さんが来てくださったんだものね。
今日の会合なんて、どうってもないくらいの収穫よw。
珍しい名字だから、まさかって思ったけど。」
僕はどんどん、気分が悪くなってきた。
それでも、母の言葉は終わる事なく、
それ以上に調子を強めて、僕を見ないで
勝手に話を進めていた。
「理央も水くさいわw
諸角さんとお友達なら、早く言ってくれてたらいいのにw
ほんと、昔と変わってないんだからw
あの家の方々が電話するってあんまりないのよw
そんな人から電話なんて、滅多にない事だから、
でも少しだけでもお会いできてよかったわ。
それに、理央も目を覚ましてくれたしね。」
やっと僕に振りむいた、母はとてもニコニコしながら、話していた。
母は僕の変化に気づいてくれているんだろうか?
どうなんだろう・・・
こうなると、母は一方的だ。
「んじゃ、ママは諸角さんのおうちに、
お礼のお電話してくるわね。
早く、理央が目を覚まさないか?って
もう、焦っちゃうくらいよw
わざわざ、来てくださったんだものね。
お礼も兼ねて、お話して・・・
あ、理央は熱があるんだから、
ちゃんと寝ててね。
後で、代わりの者をよこすから。
静かに寝てるのよ。」
そう言って、さっさと僕の部屋から、
母は出て行った。
あの誰にも口を挟まさない勢いの母の言葉は終わり、
そとは、間逆な程のシーンとした僕の部屋の変わりよう。
残された僕は、凄く疲れだけが残って
バタっと仰向けで十の字に手を広げ、
そのまま倒れた。
何も感じないこの体。
虚しさもなく、単にぼーっと天井の一点の影だけを
僕は、ずっと見ていた。
(ママは、どっちだったんだろう。。。)
僕?それとも・・・?
答えは聞かなくても、とても明快だ。
今の僕は、モノに当たる元気もない。。。
脱力感でいっぱいだった。。。
はぁーと少し息を吐き、
目をゆっくりと閉じた。
(眠くなってきた・・)
薬が効いてきたのかな?
段々と、眠りがきつくなり意識が重く感じる。
さっきのは悪い夢なんだって
誰か言ってほしい。
否定してほしい。
だから、ほんとうじゃないんだって。
僕の体は大の字から段々と寂しさを埋めるように
自分で自分の膝を抱えるようにして、
小さくなって、ちいさくなって
強制的な睡眠に反抗することなく従った。
(本当は違うよって・・・誰か。。。)
出る涙もない。
所詮、こんなもんか。。。
やっぱり無駄は嫌いだ・・
「よ!大丈夫か?椿!」
その声は向井地。
「お前、倒れたんだって?ひょろっこい体してるからだよ!。
俺と一緒に走ったら、風邪なんて引かないぜ!」
僕はあれから、2,3日休んで、今日登校する事が出来た。
なかなか、熱も下がらなかったのと、
行きたくなかったっていうのあった。。。)
あいつに会うのが、すっごく嫌だった。
「ちょっと、調子悪かったんだよ。
それに雨降ってきて、焦っちゃってwww」
いつもの営業スマイル。
ちゃんと、向井地には通用しているみたいだ。
「ありがとう、心配してくれて。
嬉しいよ。」
「なんかあったら、ちゃんと言えよな。
友達なんだからさ〜。」
(ともだち・・・か・・・)
「そうだね、そうするよ。」
僕はまた笑みで返した。
向井地はへへっ、これって照れ笑いって感じ?
そんな感じで笑い返してくれた。
僕は、鞄から、机に荷物を移していた。
(いつもながら、こいつの笑いが一番落ち着く。。)
いいのか、それとも悲しい事なのか?
今の僕には、どうでも良い事でもあった。
「ところでさ〜、お前、なんであんなとこ、いたの?」
また、向井地が僕に話しかけてきた。
僕は鞄を机の上にかけ、授業の用意をしていた。
「え?」
「だって、諸角が助けてんでしょ?」
(なんで知ってるの?)
「そ、そうなんだ。僕、その時の記憶なくってw
忘れるっていうか・・・」
こいつが知ってるって事は、みんな知ってるの?
諸角が僕を助けたって事・・・
それ、みんな黙ってるの?
僕は急に周りの視線が気になりだした。
僕をずっと今まで、コソコソと見ていたんじゃないかって?
僕一人、気がつかなかっただけなのだろうかって?
恥ずかしいというより、悔しいというか、
その皆の変な好奇心的なものがもしあるなら、
僕は格好の餌食じゃないのか?って
隣の火事は楽しいって奴と同じで、
変な噂とか立てられてたら、
すぐにでも家に帰りたい気分だった。
でも取りあえず、向井地に確認しておきたかった
僕が居なかった間、この話はどこまで
皆の耳に伝わっているんだろうとか?
かんぐられてるんだろうとか・・・
「どうして、向井地君がそれ、知ってるの?」
なんともように装いながら、
向井地に聞いてみた。
ひきつった笑顔に見られていたら、
すごく嫌なんだが、言ってる場合じゃないって
よく分かっていたから。
「いや〜、お前出た後さ、諸角が聞いてきたんだよ。
俺に。お前でこだってさ?
お前ら、そんなに仲良かったっけ?」
分からないことだらけで、僕はまた頭の中が混乱して
吐きそうになった。
(保健室行こうかな・・・)
向井地の顔さへ、見てられないほど、
僕の顔は曇っていたと思う
「そんな事ないけど、そうだったんだ。。。
ま、誰かに見つけてもらって、僕は正解だったね。」
ハハッて愛想笑いして、向井地から目線を反らした。
とても、正気で普通にしてられない。
ほんとに気分が悪い。
誰の口からも、諸角の名前が出てくるだけで。。。
でも、まだ席を立てられない。
全部聞き出すためにも。
視線は机に向井地に見えない手は、
ずっと握りこぼしを作ったまま、
力を振り絞って、話を続けた。
「この事って、クラスのみんな知ってるの?」
「ん?どして?」
「いや〜、そういうの知られてるって、
ちょっとカッコ悪いかなって。。。」
もう、これ以上の虚勢を張る事ができないくらい、
イライラもしていたし、ムカつく気持ちも抑えられないし。。。
でも、向井地に当たるのはおかしいから、
自分をしっかりって自分で励ましながら、
適当に答えてみた。
向井地は、鈍感だからあんまり、僕の変化も分かんないだろうから。。。
「いや〜、俺に聞いてきたよ。
お前知ってる?って言われたし。
ま、あいつが俺に話しかけるのって
そうないからさ〜。
周りはあんまり気付いてないかもな〜
珍しい〜くらいじゃないかな?」
「そっか・・・みんなは知らないんだ。」
「でも、先生は知ってるぜ。俺が言ったからさ」
「そうなの?いつ言ったの?」
僕は、これじゃいけないって思っていたけれど、
口が止まらないっていうか。。。
どんどん、向井地に質問したくて仕方がなかった。
だって、あいつはいつも小出しにしか教えてくれないから、
イライラするんだ。。。
一気に喋ってたら、女みたいなんだろうけど、
それを期待してるわけじゃないけれど、
僕は気になって仕方がないから、一気に早く全部話して欲しかったんだ。
「先生は電話で話ししただけだけどさ。
でも、諸角がお前抱えてさ、ここに来たんだぜ。
倒れてるから、家に運ぶってさ。
んで、俺とあいつでお前の家まで、お前運んだんだから。
あいつ、おまえン家知らないからさ。
丁度、俺の迎え来てたからさ、俺の車で一緒に連れてったんだぜ。」
「本当?でも母は諸角の名前しか。。。」
「ああ、家ん中入ったの、あいつだけだし。
俺、車の中で待ってたしさ。
その後、あいつ一人で帰るっていうから、
それからは知らないけど・・」
気がついたら、僕はずっと向井地の目を離さずにはいられなくて、
体が凝固したように、固まっていた。
(あいつが?僕を抱えた?
んじゃ、ずっと抱えられたまま、車に乗ってたのか?)
その隣に向井地?
全く思いだせなかった。。。
誰かの腕に抱えられたままって。。。
そういうことだろ?
それで、抱えたまま、家に僕の部屋に入ってきたのか?
有り得ないだろ・・・普通。。。
僕は、顔を赤くなってるのが分かったから、
すぐに机に視線を向けた。
誰にもこの赤くなってる顔見られたくなかったから。
でも、あの諸角が僕をずっと抱えてたって事が
すごく、怖くなってきた。
一緒にいたのが、この鈍感な向井地でよかったのかどうか?
でも、他のやつと一緒に車って言われるよりは、
まだマシだったのかもしれない。
「安心しろよ〜、誰もいなかったって、そん時、俺だけだって。
んな、怖い顔すんなよぉ。俺だってさ、心配したんだぜ。
諸角に言われるまでさ、お前もう、とっくに帰ったって思ってたしさ。」
と言いながら、僕を慰めてくれてるんだろうと思うけど、
バンっと僕の背中を叩いて、ハハッてまた笑っていた。
ドキ!っとした。
背中を叩かれて、僕は急に恥ずかしくなってきた。
男の僕を軽々と持ち上げてる諸角って。。。
想像するだけで恥ずかしいを通り越して、
情けないっていうか、僕ってなんて間が悪いんだろうというか。。。
「鞄あるのにさ、帰ってないし、自分。」
だから、俺も少し待ってたんだぜ。お前ん事。」
向井地は悪くない。
優しいくらいだ。
「あ、ありがとう。世話になったんだね。
お礼を言うのが遅かったくらいだ。
今度、僕の家にでも来てよ。
お詫びというか、なんというか、御馳走するよ。」
「いや〜俺はいいけどさ。
諸角大変だったんじゃね?
ずっとお前抱えてたしさ。
見つけたのも、あいつだし・・・。
礼なら、あいつに言ってやれって。
男一人、抱えてって大変だと思うぜ。」
(やっぱりそうだったんだ。。。あいつが僕を・・)
「諸角って結構体力あんのなw
悪い奴じゃないしさ、見る目変えたわ。俺w
お前も、後で礼くらい言っといた方がいいよ。」
「そ、そうだね。後でお詫び言ってくるよ。」
「ありがとうね、向井地君。助かったよ。ほんとにお礼言うの遅くてごめんね。
でも、僕少し気分が悪いんだ、保健室いってくる。
ほんと、ありがとう。」
僕は立ち上がって、向井地にペコっと頭を下げた。
向井地はいいのいいのって感じで僕に手を振り、
気をつけろよぉって言って、僕を教室から送り出してくれた。
僕は、向井地に振り向きもせずピシャっと教室の扉を閉めて、
そして、ガクっと膝を折れて、そこにへたり込んでしまった。
今まで以上に鼓動が激しくなって、熱でもあるんじゃないかって程に、
顔が赤かったように思う。
(この姿も誰かに見られたくない!)
ふーっと、大きく息を吸った。
強制的に落ち着こうと必死だった僕。。。
この姿を誰かに見れれてないか?それも不安だった。
(はぁ、なんて事だ。。。一緒にいた奴が向井地じゃなかったら、
本当にどうにかなりそうだ。)
他の奴じゃなかっただけでも、良しとしたもんだろうか。。。
授業なんて、聞く気分じゃなかった。
(このまま、気分が悪いという事で、帰ってしまおうか。。。)
膝を抱えたまま、それも考えたが、
ま、気分が悪いと一応、向井地には
言ってきたんだ。
一回保健室行ってから、家に帰るのもアリだ。
(授業を聞くなんて、気分じゃない。)
それに、今の授業はもうとっくに、家で勉強して終わってるところだし、
今日一日位サボっても、問題はないし。。。
向井地は、鈍感で無神経なところはあるが、
嘘をつく奴じゃない。
向井地の言ってる事は、ほぼ正しいんだろう。。。
僕の気持ちが追いついてないだけだ。。
向井地は向井地で、心配してくれてたんだろうから。。
でも、僕の身が持たない・・・
あいつに抱えられて、家に帰っていたなんて。。。
今だけでも、気持ち切り替えなくちゃ。
でも、今日はもういい。。。
何がいいのか?わからないけれど、
今日は学校なんて、どうでもよかった。
諸角みたいにずっと授業中寝ていたい気分だった。
気持ちを落ちつけさせようと、神経が必死な感じだ。
とにかく、僕は今すぐ立ち上がって、
さっさと走って保健室へ行きたかったが、
そんな颯爽としていたら、誰かに怪しまれてしまうのも、
怖かったから、体が悪いって言うのを
見せつけるように、ゆっくりと歩き、
壁を伝ってゆっくり歩いて、保健室へ向かった。
しんどそうに歩くのも、大変なものだ。。
あっさりと教室で寝られる、あいつの性格が羨ましかったりする。
でも、到底僕にはそんな度胸はないから。
保健室でサボるくらいが関の山だ。
できるだけ、僕は保健室へ向かうため、
ゆっくりと階段を下りて行こうとした時、
何か胸にハッと思わせるものがあった。
誰にも視線を合わせないようにしていた僕だったが、
見ずにはおれない、痛いとも言える視線が僕に刺さってきた。
僕は思わず、上を見上げた。
諸角だった。
丁度、僕が階段を下へ行こうとしていた時、
逆に彼は階段を、上へと登ろうとしていた。
(彼は、教室じゃなかったのか?。)
目が合ってしまった。
(嫌な時に、一番嫌な人間合ってしまった。)
彼はずっと僕を見ていた。
僕は、一歩も動けなかった。
まるで睨まれたウサギのように、オドオドしてしまい、
もしかしたら、震えていたかも。。。
きっと怪しいとか変に思われたに違いない。
(無視するか。。それとも・・・)
どっちにも判断が出来ず、だからと言って動くのもままならなかった。
じっと見つめ合ってるこの状態を、誰か周りが見たら、どう思うだろう?。
きっと、僕だってそういうのを目撃したら、噂とかにはしないだろうけれど、
変に勘ぐってしまうと思う。
だけど、そんなことはほんと、一瞬の事で、
僕のぎこちなくじっとしたままの緊張感は一気に崩れた。
彼、諸角から動いた。
彼はプイッと首を返して、上を登って行った。
(あっ!)
反射か?糸につられて人形か?
僕もつられて、彼と同じように動いてしまった。
それも彼と同じ方へ。
彼と同じ方向行こうとした。
(マジ?っ)
自分で自分の行動に理解できない。
ついていくなんて。。。
ついていって、何がしたかったのか、わからないけれど、
見失うとダメだって、なぜか思ってしまった。
そんなに距離が離れているとは思っていなかったが、
なかなか、追いつけてないようにも思える。
妙に鼓動も早くなってきて、
しんどさが倍増する感じで、どんどん足も震えてるように思った。
(追いかける理由?なんだろ。。。
そうだ、お礼言ってないし、母親の伝言だってある。)
彼を追いかける何か理由がないと、
それにあの時、何が起こったか?
それも聞きたかった。
確か、あのいつもの木々のところで、
彼と出会って、それからの記憶が僕にはなかった。
家まで帰るところは、向井地から聞いた。
僕が倒れる時、諸角はどうしてあそこに来たんだろう?
それは、向井地は言っていなかった。
聞かれたけど、答えたとも言わなかった。
僕はあの時、何がどうなったか?
知りたかった。
僕より背が10cmは高く、僕みたいに華奢な感じでもなく、
そのせいか、歩いたりする速度も全く僕とは違うみたいだ。
(この上は屋上しかないはず・・・)
上には一歩通行だから、屋上へ行けばいい。。
僕は追いつくために走るのはやめた。
はぁはぁと、異常なくらい息が荒い。
僕はゆっくりと息を整えながら、上に向かって歩いていった。
保健室でサボるのも、屋上でサボるのも一緒だ。
どっちにしたって、今日はやる気がないんだし。。。
僕は、彼が行った屋上への扉に辿りつき、
鉄の塊のような扉を、よいっしょっと力を入れて
開けようとした。
(鍵かかってる?)
めちゃくちゃ重く感じる。。
病み上がりだからか?
力が入ってないのか?
扉は、なかなか開かなかった。
(あいつ、どうやって開けたんだ?。)
僕の力じゃ、全く歯が立たなさそうだった
(僕って、やっぱり情けない奴かも。。。)
ギギっ!
んしょ!んしょ!っと一生懸命力を入れて開けようとしていた
扉が一気にガバっと開いた。
(うわっ!)
僕は内側の取ってを持っていたから、
急に引っ張られる感じで、屋上につんのめってしまい
こけそうになった。
諸角が急に扉を屋上・外から扉を開けた。
(扉が開かなかったのに、諸角はすぐ開けられるんだ。)
男としても、少し悔しいけれど、
この貧弱な僕の体系とは似ても似つかない程の体格だから、
そりゃ、僕を抱えられる事も可能だろうな。。。
(やっぱり、情けない・・・。)
自分で諸角に抱えられるところも考えると、
非力な自分が悲しくなる。。
どうせ、僕なんて軽々だったろう。。。
ひょいと僕の体を左の腕に乗せ、僕の両足を自分の右腕に乗せて
僕は頭は諸角の胸にでも寄りかかってたらって考えると、
まるで、諸角に僕はお姫様だっこ、を皆の前でされていたんだという
恥ずかしさがこんな時に、頭に急に浮かんできた。
教室ではあいつ一人だったけれど、それまではどうだったんだろう。。。
他の人に見られていたら。。。
(恥ずかしすぎる・・・)
(いや、ここって恥ずかしがるところじゃないだろ!。)
そんな自分の心の葛藤なんか吹き飛ばすくらい、
僕がつんのめった先の光景は、パァーっ眩い位の日の光が、
目に飛び込んできた。
少し薄暗かった屋上までとは全く違う光で、
自分の顔が赤くなってるとかという気持ちはどっかに
消えてしまうくらい明るくて、
僕は燦々とした光の下で、眩しい光の方に目が釘付けになった。
(まぶしっ。)
でも、清々しくて気持ち良かった。
皆が授業中だという時間に、僕はこの光の中にいるんだって思うと、
凄く自由に感じて、悪いという気持ちよりも、
ずっとここに居たいなって思ってしまえてしまった。
(屋上でサボるやつもいるって聞いた事あるけれど、
なんとなく、分かるような気がする。)
雲は少し切れ切れに薄くうす〜く広がっていて、
上流は流れが早いのか?色んな形に変わっているみたいで、
あっという間に違う雲の筋がやってきていた。
今日は凄く天気がいいみたいで、空も絵具をザヴァっとこぼした様な、
まさに青っという色が空一面に広がって、
僕がウジウジ悩んでいた事とか、恥ずかしく思っていた事とか、
保健室がどうとかって、他人事のように思えてきて、
上の世界に見入るだけだった。
(綺麗だ・・・)
そこまで寒くもなく、ポカポカする暖かさを程良く冷ましてくれる風。
見れば見るほど、濃くなっていく青の世界に、
薄く広がる、多種多様の白い雲。
(空をこんなに近くで見るのは、久しぶりかも。)
空に恋してしまったくらい、ポーっとしていて動きたくなかった。
気持ちが良かったんだ。
人がどう思うと、この暖かさと、心地よい風。
僕は完全に一人のこの空間を独占していたように思っていた。
気持ち良すぎで、大声で誰にも聞かれないだろうけれど、
届かないかもしれないけれど、何か叫んでみたい気分になった。
そんな事したいと、今まで思った事なかったけれど、
そんな勇気もなかった僕だけど、今だけは違っていた。
大きく、すぅーっと息を思いっきり吸いこんでみた。
下のコンクリートが少し熱っぽけど、
丁度、扉の方の影になっていて、そこまで熱気がこみあげる事もなく、
程良く熱くて、力が沸いてきそうな感じだ。
僕の好きな木々はいつも、こんな風に息をして、
太陽を浴びてるんだって思うと、
僕も参加したくて仕方が無く、
思いっきり、息をフーッと吐いてみた。
体の中が空っぽになりそうなくらい、
気持ちがよかった。
お日様に顔を向けて、まるで自分も光合成してるようで、
成長しそうな気持ちになって、
もっともっとって感じで、両手を広げて、体中で光を受けていた時、
「お前、何してんの?」
僕の頭の後から、声がした。
諸角は、扉を閉めて僕に声をかけた。
(あっ!一人じゃなかったんだ。)
(僕一人で、なにやってるかな。。。)
余計に恥ずかしくなってきた。
何故ならいきなり、現実が目の前にやって来たから。
諸角をほっといて、僕一人でラジオ体操みたいな事して
気分良くしていたから。
(僕、馬鹿みたいだ。)
少し自分の行動を抑えて、諸角は今の俺の行動をどう思ってるだろうなんて
考えながら、背後の彼をそっと覗いてみる。
僕の事なんかお構いなしなんだろうか?
諸角が扉から手を離して、
自分のポケットから煙草を出して、火をつけいた。
(あいつ、タバコ吸うんだ。)
不良とは思わなかったが、やっぱり年が上なだけ、
僕が吸ったりするのより、似合ってるだろうし、
大人に見えて、ちょっとだけかっこよかった。
一息吸って、フーッと息を吐いた。
ギロっと僕を見る諸角。
(目が合うと、やっぱり怖いな。。。)
さっきの僕とはまた真逆な自分に戻り、
そして僕はやっと、諸角を追いかけていた理由が頭によぎっていた。
(な、何か言わなくちゃ。。。
そうだ!お礼だ。
お、お礼を言わなくちゃ。。。)
僕は、なぜかドキドキしてしまって、
ゴクっと唾を飲み込んだ。
変に意識してるんじゃない。
威嚇してるように見える諸角が怖いだけなんだ。。。
そう、思うように僕は考えた。
諸角はフェンスに両腕を引っ掛けて、
タバコは半分以上減っていただろうか?
でも、まだ咥えていて、
僕とは、さっきまで、ちょくちょくあっていた目も
合わさず、おとといの方向へ目を向けていた。
まるで、僕という存在が居ないというか、
無の存在でもあるかのように無視しているとでもいうか。。。
それが嫌でもわかるという、オーラがいっぱい出ていた。
せっかくの自分ひとりの時間を邪魔する人間は、
邪魔とでも言いたげそうであって、
こんな僕でもあからさまに分かる態度をしているというか、
そういう彼が凄くムカついたりしてるけれど。。。
まずは使命を果たさなくちゃって思って。。。
(ムカつくけど、今は我慢だ。)
でも、ここでは負けられない。
僕にも意地がある!
僕の口は自分の意志じゃないところで、
動いているようでもあったけれど。。。
「ぼ、僕。君に、諸角君にお礼を言わなくちゃって思って・・・」
(小さい?今の声?
聞こえてないかな・・・。)
諸角はまた煙草の煙を口からスーッと吐いた。
やっぱり僕の声は聞こえてないんだと、
今度はもう少し、大きな声で言わないとって。
「ぼ、僕ね。君におっ!。」
「俺に何?。」
僕の声に上書きするように、言葉を彼はかぶせてきた。
(な、何って。。。
嫌だけど、しなくちゃいけないから
やってるだけだよ。)
ほんとだったら、逃げたい気持ちでいっぱいだった。
でも、ここまで来て、何も収穫無しというのも、
後でまた、悩みの種になりそうだから、
早めにさっさとこの緊張を、僕は取りたかった。
「僕、君にお礼を言いに来たんだ。」
「お礼?。」
(全部言わせる気かよ。。)
ほとほと、奴が性格が悪いんだって、わかってきた。
フーッと大きく息を僕は吐いて、
僕が家に帰ってきていた事。
向井地から今日聞いた事を諸角に話を少しした。
「僕、記憶なくて、母からと向井地君に諸角君が助けてくれたって
聞いたから、お礼言わなくちゃって思って・・・」
ふーん、それでってな顔で、諸角は僕を見降ろしていた。
ほんと、嫌なやつって思ったけど、借りは作りたくなかったんだ。
「あ、ありがとう。助けてくれて。
おかげで助かったよ。」
全く彼は無反応だった。
(ち、ちくしょう。。。)
涙が出るほど、ムカついたけれど、
切れちゃこっちの負けだって思ったから、
僕はペコっと頭を下げて、お辞儀を彼にした。
日差しがどんどん、熱く感じて
自分の頭から湯気出てるんじゃないか?って
錯覚しそうで、目眩がしそうなくらい感じるこの空気。
下のコンクリートもどんどん熱を帯びてきて、
さっきの気持ちよさは、どこに行ったのか?と
不思議なくらい、僕は熱く熱く感じた。
(これ、終わったら、もう保健室直行だ。)
僕の額から汗がにじんでる気がした。
妙に汗ばんで、気持ち悪かった。
諸角の視線は僕に向けられていて、
でも僕は眩しくて、あんまりちゃんと彼の表情を見る事はできなかった。
(あの位置だと、涼しいのかな・・・)
なんて、訳わかんない事まで考えたりする始末で・・・
僕と諸角との感覚なんて、1mもあったらいいところだ。
そんな気温の差がある訳ない。
あるのは、やった側とされた側の違いだけだ。
「別にいいよ。そんなの。」
やっと、彼は口を開いた。
(なんだ、しゃべれるじゃんか。。。
最初っから言っとけよ。)
今は少し普通にしゃべれてるだろう。
気を取り直して、母からの伝言を言って、
さっさと僕は保健室だ。
「僕の母がお礼したいって言ってたから。
狭いとこだけど、よかったらまた、来てよ。」
(フーッ、やっと言えた。これで終わり。)
僕はやっと任務完了。
少し、涼しさを感じるくらい、
今は余裕が出てきた。
(僕だって、やればできるんだ。)
ちょっと自信持ってもいいよなって
思いながら、もう一度ペコっと、
ムカつくあいつに、頭を下げて、
じゃって、少し手を振り、
クルっと扉に向かって、
歩いていった。
屋上の扉には少し日よけみたいなものがあって、
ちょっとだけだけど、日差しが遮断されるようだった。
案の定、僕はこの扉を開けるのに、
しっくはっくしていた。
でも、さっきほど、重くは感じなかった。
(屋上の方が、開けやすいのかな?。)
そんな事も考えられるほど、余裕があったりして、
今度は保健室行って、そんで家に帰るんだって
少し、ルンルンな感情を持っていて。。。
顔もちょっと緩んでたかもしれなかった。
やる事やったしねって思ったから。
ガンっ!
(あれっ?)
扉が閉まった・・・
(えっ?)
気がついたら、日差し以上の大きな影が僕の後に出来ていた。
(えっ?えっ?何?
も、諸角?)
僕は、人の体温の熱を後に感じた。
(ここ出るのかな?でも、どうして閉めるの?。
僕が開けちゃ、まずかったのかな・・・。)
僕は微動だにも動けなかった。
何が悪かったのか?
ちゃんと頭も下げた。
土下座でもしろってか?
そこまでムカついてるのか?
だけど、後ろを振り返る自信もなくて。
また、ゴクっと唾を飲み込んだ。
僕の顔に汗が流れる。
熱さじゃない汗。
(早く、立ち去りたい。)
僕は今の願いはこれだけだった。
「椿は、俺にお礼してくれるの?。」
(はっ?)
意味、わかんないし。。。
何言ってんの?こいつ・・・
(お礼って、親が招待してこいって言ってんだから、当然だろ!。)
そう思ったけど、怒らせてもいけないって
とっさに考えて、僕は振り返らずに、
でも、少し震えていたかも知れないけれど、
普通に話を返した。
「母が、お礼したいって行ってたから。。。
それと助けてくれたし、向井地君も。。。」
彼の体温がすごく背中というか、首の辺りに当たるというか。。
妙にこそばゆくて、慣れない感覚にゾッとして、
あまり気持ちの良いものじゃない。
もう、熱さなんて感覚は麻痺していて、
日差しは大きくなって、熱くないはずなのに、
熱が下がらない感じで、僕はぎゅっと目を閉じていた。
「向井地がどうって?。」
(また質問かよ・・・)
いい加減にしてほしかったけど、
僕はこの諸角を撥ね退けてまで行く自信がなかったから、
とりあえず、穏便に何事無く、済ませてたくて。。。
「む、向井地君は、君の事を見直したって。。。
だから、僕もちゃんとお礼言わなくちゃって、思っただけだから。」
「それってさ、家に行かないとダメなの?。」
(えっ?)
僕は少し眉間に皺を寄せて、
肩越しに諸角を振り返った。
体も手もまだ扉を開ける為の体制のままだった。
ただ、彼の言ってる意味がさっぱり、
今の僕には理解できなくて、
その彼の言っている話が全く見えなくて。。。
思わず、彼の方を見てしまった。
(いけないっ!)
思った危険は当たったみたいで、
彼はまだタバコを吸っていた。
その煙を僕の顔に吹きかけてきた。
(やっぱり・・・)
僕は、ゴホッゴホッと急き込んだ。
凄く嫌な感じの煙で、
僕にとって、とてもじゃないけれど、気持ちがいいとは、
思えなかった。
母もタバコは吸うけれど、こんな匂いじゃなくて、
もっと良い匂いだから。
しまった事に、僕は急き込んだ際、
体も全部、諸角の方へ向けてしまった。
新鮮な空気が扉と体との間隔だけでは、
全然足りなかったから。
大きく息を吸い込んで、
やっと苦しい煙から、逃れられたと思うと、
目の前は、諸角の体格の良い体を、
僕は直視してしまった。
(う、うわっ!)
目の前に男の体があるって、
変な状態にびっくりして、少し後ずさりしてしまった。
ドンっ!
(あっ!)
ドンっと、自分の体で扉を開かないように、
もたれてしまった。
あ、後が無い僕。。。
殴られるんだろうか。。。
僕の鼓動がどんどん早くなる。
変にドキドキして、僕は諸角が怖くなっていた。
諸角は吸っていたタバコをそこらに捨てて、
両手で僕の頭の位置を固定させるみたいだったから、
殴りやすい位置に動かないようにさせられてるんだろうか?と
僕は、冷や冷やしながら、冷静になろうと、
今の状況を分析しようと、がんばっていた。
(体が近い・・それだけでも止めてほしい。)
目線だけでも、どこか違うところって
まるで、挙動不審な人間の目のように、
きょろきょろと僕は動かしていた。
(落ち着かないし、耐えられない、この空間。)
「俺、今欲しいんだけど、そのお礼。」
(はぁ?)
思わず、僕は彼を見上げた。
彼は口元だけ、歪めてニッと笑ってるみたいだった。
僕には全く理解のできない人種だという事だけは
よくわかった。
けれど、本当に今お礼って言われても、
何も出せるもの持ってないし、
お金も僕は、あんまり持たされていないから。
(これって所謂、カツアゲってやつなのだろうか?)
そういう体験も今までした事が無いから、
本当に、彼の言動一つ一つが怖かった。
僕の今までの経験では、全く理解もできないし、
分析も出来なかった。
ガクガクっと今度は足が震えてきた。
怖くて、怖くて、何を要求されるんだろうって。。。
母親に相談できないものだったら、
僕はどうしたらいいんだろう?
向井地なら、教えてくれるんだろうか?
誰でもいいから、助けてほしいとしか
思えなかったけど、そんな都合のいい事なんて、
そうあるもんじゃないって、
この時、やっと理解できた。
「ぼ、僕、そんなお金持ってないよ。。。」
僕は諸角との距離を作るために、
少し頭を下げて、彼がこれ以上近づかないように、
無駄かもしれないけれど、地面を見て言った。
(妙に近いんだよ、あいつ。。。)
「ぶっ!」
アハハハって大きな笑い声が、頭の上から聞こえる。
思わず、僕は顔を上げて、諸角を見た。
僕が一生懸命言った言葉がそんなに可笑しかったのか?
本当にこいつはムカつくやつだ!
僕は顔を真っ赤にして言い返した。
「わ、笑う事ないだろ!お礼が今欲しいっていうから・・・
正直に答えただけだよ。」
僕は恥ずかしくて半泣きだった顔を見られたくないから、
ふくれっつらのこの顔を横に向けた。
首まで真っ赤だったんじゃないだろうか?
気温の熱さより、体から出てくる熱の熱さと、
彼の訳のわからない言動で、僕の頭は本当にどうにかなりそうだった。
諸角は目頭を押さえながら、笑いをこらえるのに必死だったみたいで、
でも、僕がよそをプイっとしてから、笑うのをやめた。
「お前、ほんと、可愛いな。」
(ぎょっ!また出た、その言葉。)
僕が一番嫌いな言葉。
それもこいつに言われるなんて。。。
ふくれっ面ながらも、僕はキッと諸角を睨んだ。
(本当に無神経な奴!お礼なんて言うんじゃなかった。)
今頃、後悔の念が僕の感情に充満してくる。
こんな事、時間の無駄だ。
僕はもう、こいつに遊ばれるのは嫌だった。
それにもう、熱くて熱くて、涼しい保健室へ行きたかった。
(付き合ってられない。。。)
僕は扉に手をかけて、開けようとした時だった。
諸角の手の甲が、僕の顔の輪郭をなぞる。
(えっ?)
彼の手は冷たくて、でもゴツゴツしてて、
僕のとは全然違った。
僕の両目は彼の手の動きに釘付けだった。
何度も、彼は僕の顔、頬を僕より大きなその手で擦った。
(何事なんだ?これは・・)
僕の手は、震えていた。
両手で扉にペタっと貼り付いてるような状態で、
自分の体を支えるので必死にしがみ付いていた。
(蛙のような吸盤があれば、楽なのに。。。)
自分の体を支えるのが精一杯だった。
だけど、諸角の手の甲は、動きを止める事もなく、
今度は僕の首を擦る。
彼の手は凄く冷たかったけど、
僕の真っ赤な首には、程よい心地よさを与えてくれた。
さっきまでの熱さを彼の手が、冷ましてくれるようでもあって、
正直、気持ちが良かったんだ。
「あっ。。。」
(へ?僕の声?
あ、ありえない!!。
なんていう声だよ。。。)
さっきまでの変な緊張が全く無くなって、
ずり落ちそうになる自分の体を支えるのが精いっぱいで、
その上、諸角は僕の熱を冷ます気持ち良さを与えてくれて、
その結果、僕の口からはとんでもない声が出ていた。
全くの無意識状態だった。
諸角に聞かれたと思うと、余計に恥ずかしくって、
また、僕は頭を下げて、彼との距離を取ろうとした。
でも、今度は彼がそれを許してくれなかった。
僕の顎をクイっと持ち上げて、僕と諸角の距離は一層縮まったって
しまったように見えた。
彼はクスッと笑って、僕を見ながら言った。
「お礼、今欲しいんだ。くれるよね?」
(顔、近すぎ!)
なんて事よりも、僕には考えられない事が起きた。
諸角の唇が僕の唇に少し重なった。
軽く重なる程度の僕と彼の唇が合わさる行為は、何度も何度も続いて、
僕は、余りに驚きすぎて、全く目を閉じられなくて。。。
(えっ?、も、諸角?)
僕は何にも答えてないっていうか。。。
そんな事よりも、諸角が僕にキス?
これってキスってやつだよね。。。
僕は卒倒しそうになった。
またクラっと頭が揺れた間隔があったが、
諸角は僕の体を支えて、扉によからせて、
腰のあたりに腕を廻して、僕を支えるような感じで、
顔を上げさせるためかどうなのか?
分からなかったが、僕の頬を手の甲で摩ったり、
僕の唇を指でゆっくりなぞったりしていて。。
僕は起こってる事は理解できるけれど、
これって相手は普通は女の子じゃないのか?
でも、僕は男で彼も男で。。。なんてグルグル頭が回ってきて。。。
僕の体の奥から来る熱い何かが重なって、頭の中がぼーっとしていた。
(何なんだ?どうして?。)
僕は、これから起きる事が全く予想が出来なくて、
初めての事ばかりで、本当に怖かった。
でも、体は全く動かなくて、彼をドンと突き飛ばす事さえ、
今の僕には、そんな力も残っていなくて、
悔しいけれど、諸角に体を預けたままの状態だった。
僕の唇に触れた指は、本当に大人みたいに固くって、
でも、ひんやりしていて、僕とは全然違う肌の厚みと体温が
凄く、気持ち良かったりで。。。
諸角はまた、唇を合わせてきた。
ひっつくか、ひっつかないかっていう程度で、
僕の唇の形を確かめているのか?
僕にはわからないけれど、チュッチュッって、
軽く音を立てながら、何度も重ねてきた。
(これが僕のファーストキス?
女の子ともしたことないのに。。。)
そんな事も頭に浮かんだかもしれない。
でも、それより、軽く他人の唇が自分の唇に触れるだけで
こんなに気持ちが良くなるなんて。。。
彼の唇は固い感じだけれど、凄く弾力があって、
僕の口なんて、取って食われそうな感じもあったけど、
僕のサイズに合わせてくれてるというか、
すごく優しい感じを受けた。
こんなのは、初めての体験だった。
「はぁぁ。。」
僕の唇から諸角の唇が離れたと同時に、
僕の唇から、初めて知ったこの気持ちよさを、
まるで諸角に聞いてもらいたいかのように、
勝手に出てきた音。
今、気がついたんだが、
諸角の目は、すごく綺麗だった。
真っ直ぐに僕を見ていて、
なぜか、僕も彼の目を見ずにはいられなかった。
「お前、エロいし、ホントに可愛すぎ!
お礼、もう少しもらっていい?」
僕に選択権なんて、ある訳ない。
今の僕は彼にされるがままだった。
そう言って、彼は僕に唇を重ねてきた。
今度も、初めての経験だった。
にゅるっとした感覚。
凄く気持ち悪かった。
ガクっと腰が抜けそうになった。
(さっきと全然違う。。なにこれ?)
自分の力が入らない。
予想していたのかどうか?
すぐに諸角は、僕の足と足の間に
自分の太ももを割り込ませて、
僕を支えてくれた。
彼の舌が僕の口の中に入ってきて、
色んなところをなぞっていく。
歯の裏側とか、僕の舌に絡めてきて、
自分の口の中にも、僕の舌を入れてこいと言わんばかりで、
諸角の逞しい腕は僕の肩と腰をがっしりと抱いていて、
まるで固定されているかのようでもあって、
僕には自由がなく、彼の腕に、胸に、
すがって、耐えるしかなかった。
(息が出来ない。)
彼の舌は、熱くて、さっきの軽い触れるだけのとは、
大違いで、彼の舌が僕の口の中を全て奪い去るような
激しさを感じた。
弾力のある唇を、僕の唇に押しつけて、
ほどよい力で吸いつき、僕自身がどうなっているか?
彼の舌で一つ一つ確かめられているように感じて、
そして、僕の舌と絡ませ、強く吸いあげていく。
くちゅ、くちゅと音がする。
最初、自分の体の中で起こってる音とは、信じられなかった。
彼はやっと僕を解放してくれた。
プファーと息を吸いこんで、
少し、息を整えるのに時間がかかった。
まだ、はぁはぁと息が荒い僕。
何がどうなって、こうなったのか?
理解もくそもなく。
初めての事ばかりで、驚き以上に声も出なかった。
苦しくてか、それとも屈辱でか?
僕は、少し涙が出た。
諸角は、まだ僕を完全には解放してくれなかった。
僕の表情を見て、彼の顔少し変化した。
(え?こ、今度は何?。)
一番最初の彼の唇の感触が、
僕の滲んだ目の辺りに感じる。
彼が僕の涙を吸ってくれてるみたいだった。
(優しい・・・)
言葉は無かったけれど、彼の息遣いでなんとなく
分かった気がした。
彼は、彼なりに僕を気遣ってれてるんだって。。。
彼の唇は、僕の頬をも軽く唇でタッチしていき、
また、唇に軽く重なりあって、
今度は首や、耳に軽く愛撫していくような感じで、
僕に触れていった。
僕の両足に割り込んだ彼の太ももは、
軽く前後に動いて、僕を刺激する。
僕の口に触れては、耳を軽く噛んでみたり、
僕の首を吸いながら、鎖骨の辺りまで繰り返しては、
また僕の唇に重ねて舌を絡ませて、
彼の太股で、刺激をうけて。。。
背中がゾクゾクして、彼が触るところ、全てが熱くてジンジンしてきて。。。
もう、僕は何も考えられなった。
頭が真っ白だった。。。
まだ息も絶え絶えな僕。
どんな顔してるんだろう。。
でも、気持ち良すぎて、
初めて感じる変なこの気持ちよさに、僕は勝てなくて。。。
真剣に諸角を見ていた。
「俺ん家、来る?」
(えっ?)
僕をじっと見て、諸角は言った。
彼の声、音、体温、触れるところ、全てに今の僕は、
反応してしまう。
真っ赤になるという事で。。。
少し、間が開いたが、僕はコクっと頷いた。
「いい子だ。」
彼はそう言って、頭を軽く撫でて、僕の頬に軽くキスをして、
校門で待ってろと言った。
プラス、歩けるか?って心配してくれたけれど、
これが病気で体が熱くなってるんじゃないくらいは
僕にだって分かる。
大丈夫っと言って、諸角が屋上の扉を開けてくれた。
ありがとうと僕は彼に言い、下に降りようとした時、
諸角は僕の左腕を引っ張った。
ドキっとしたが、彼は僕の指先に握っていて、
そして、僕を見ながら軽くキスをした。
僕の体は、おかしいのか?またそこから熱が出る。
ドキドキするこの気持ちの先に何があるのか?
僕は知りたかった。
諸角の顔は、今まで見たことがないくらい
優しい顔だった。
こんな顔もするんだと、初めて知った。
この時、初めて僕は向井地と意見が一致ように思う。
諸角は、僕を抱きよせて、頬に軽くキスし、ペロッと舐めて
ぼくの唇に自分の唇を重ねてきた。
(この弾力が、堪らなく気持ちいい。。。)
僕は今本能で動いてるんだろうか?
重なる唇に自分から吸いついているように思えて、
離したくなくなる。
諸角が、先に唇を離した。
僕はえっ?という感覚になったけれど、
また、軽くチュっとしてくれた。
「校門で、良い子で待ってろ。」
そう言って、諸角は早々と下へ降りて行った。
僕はその姿を見送って、ゆっくり諸角に言われた通り、
校門に向かっていった。
僕は、ぼーっとしていた。
(頭、痛い・・・。)
僕は、倒れていたようだった。
ちょうど、右側を下にして、倒れていたようだから
右側全部が、ひりひりとして痛い。
僕は気がついたら、僕は自分の家に戻っていts。、
ちゃんと制服も、ハンガーに掛けられていて、
僕はちゃんとパジャマに着替えて、
自分のベッドの中に潜っていた。
毎日見ている自分の部屋だ。
「理央、大丈夫?やっと気がついたのね。
どれだけ心配した事か。。。。
迎えに行くって言ってるのに、
要らないって言ったり、
そうかと思えば、学校で倒れたなんて。。。
ママ、肝が冷えたわ。。。」
(え?ママが。。。?
そうなの?。)
僕はいまいち、状況がつかめてないでいた。
何故なら目を開けて、一番最初に見たのは母の顔だったから。
僕はとりあえず、ベッドから起きようとしているが、
右側だけが妙に、ヒリヒリして痛くって、
しどろもどろしていた僕を、母はベッドに座って、
僕が体を起こすのを手伝いながら、僕に話をしていた。
そして、何度も僕をギュッと抱きしめ、
何度も何度も「よかった。」と呟いていた。
顔は見えなかったが、最近は聞いたことが無い母の声だった。
少しゆっくりで、そしてお腹に響く、音楽で言うビブラードが
かかったような声だった。
(頭がクラッとする・・・この声。)
震えてるのかな?そんな事を思わせる声だった。
この声の主は、
僕の母、椿 純子だ。
男と同等に仕事をして、
アメリカでも紹介される、やり手の女社長が、
息子が倒れたくらいで、喚いていた。
(一応、心配してくれたんだろうか・・・?)
少し、嬉しかった。
仕事だけかと思っていたけど、
ちゃんと、今だけでも、
息子の事は気にしてくれていたんだって思えたから。
「僕。倒れたの?。」
「そうよ。いきなり倒れたって、
それ聞いて、急いで帰ってきたのよ。」
母は何度も何度も今度は、小さな聞こえるか聞こえないくらいな声で、
聞こえていてもたぶん僕くらいしか聞こえなかっただろう・・・
でも、僕さえ聞き取れない音としか聞こえない単語。
そんな声で囁いて、僕を長い時間ギュッと抱きしめてくれた。
母のそんな態度に、ちょっと照れくさくて、
誰も見ていないって分かっていても、
恥ずかしかった。
それも、拒否もできたんだろうけれど、
普通に嬉しく思えたから、
僕も母にだけ聞こえる小さな声で、
「ごめんね。ありがとう。」って
言ってあげた。
そして、僕もお返しに母に軽くハグしてあげた。
(やっぱり少し震えてるの?ママ?)
動揺した後の小刻みに震えている母の体と腕は、
少し細くて、これが大の大人と同等に渡り歩いてきた
女性の腕かと思うと、なぜか儚げな憂いを感じた。。
そして、その弱々しく感じた、僕を抱く母の力も
ギュッと強くなっていった。
久々の母子の抱擁だった。
やっぱり、母はどんなにすごくなっても
僕のたった一人の母親だ。
僕も素直に母をギュッと捕まえていたかった。
今だけでもいいから。。。
僕の目に少しウルッとした、
生温かいものがこみあげていたのは、
誰にも内緒だ。
僕だけの秘密。
「もう、無理しちゃだめよ。
ちゃんと迎えの車が行くって言ってるんだから。
おとなしく待っていてよ。」
母はそう言いながら、僕のおでこに自分のおでこをコツンと、
あててにっこり笑って、今日の事は、水に流しましょうって
目で僕に伝えてくれているように、
本当によかったって言葉も添えているような、
言葉が僕の頭によぎった。
僕も頬笑み返した。
そうやって、母と見つめ合ったと同時に
疑問がふと沸いた。
(僕はどうやって帰ってきたんだろうか?)
迎えが来たのか?
それとも誰か?
無邪気に喜んでる母に、
言いだせない僕だった。
(聞いていいのかな・・・?)
笑っていた僕の顔から、
少し、笑顔が消えた。
「あら、理央!
熱があるじゃないの!
きっと、雨に打たれて風邪ひいたのかもしれないわ。
お薬もってきてもらうから、
少し横になってなさい。」
そういって、母は内戦で薬の指示をだして、
僕の部屋の温度が上がるように、
機器を動かしてくれた。
(そういえば、少し寒気が・・・)
背筋がブルッとした。
そんな僕を見て、母はつかさず、
上に羽織るものを持ってきてくれて、
また隣に座ってくれた。
「お薬飲んだら、もう少し寝ましょうね。」
僕はうんって首を縦に振った。
(小さい頃に戻ったみたいだった。)
たまには病気もいいよな。。。
「忙しいのに、ごめんね。」
僕は母に今までに無いくらいしおらしく、
妙に素直になって言ってしまった。
クスッと笑った母は。
到着した薬を僕に飲ませて、
また、ベッドに寝かせてながら言った。
「私の大事な一人息子よ。
当然でしょ。
それに、送ってくれた方、
日本画の大家の諸角さんのお子さんって言うじゃない。
男前だし、彼が居なかったら、あなたどうなってることやら・・・」
僕は動けなかった。
まるで、金縛りとやらにあったようだった。
(も、諸角?この家に来たのか?)
「あら、気分が悪いの?理央?
顔色段々、悪くなってるわ・・・
大丈夫?
ちょっと待って、
先生を呼んであげる。」
急いで立ち上がろうとした母を、
僕はとっさに母の服を掴んで遮った。
母は?って顔で不思議そうに僕を見た。
「だい、大丈夫だよ。ママ。。。
それより、諸角がここに来たの?」
ぼくにとって今は熱より、あいつの話の方が僕には重要だった。
僕が寝ている間、何があったか?
知っておきたかったから。
あいつにだけは・・・って思っていたから。
そうだ!、思いだした。
僕はあいつの前で僕は倒れんだ・・・
「諸角さんが、あなたを連れてきてくれたのよ。
今度、お礼しなくちゃね。
あなたも元気になったら、ちゃんとお礼を言うのよ。
それに、彼と仲良くなっていて、損はないわね。
交際範囲は半端じゃないくらい広い人だから。」
この時、母は全く悪気とか無く、屈託なくその話をしていたと思う。
周りの人間は、普段の母の顔だというだろう。
「彼と同学年で同じクラスって、理央は本当に運のいい子だわ。
理央が起きるまで、居てあげてって言ったんだけどね。。。
色々お話がしてみたいわ。
彼。
理央もちゃんと、今度、ここにご招待するのよ。」
僕は何も言えなかった。
「ママ、びっくりしちゃったもの。
あなたの携帯から、諸角さんお電話してくださってね。
あなたが倒れたって、聞いて・・・
急いで帰ってきたのよ。
今日は全部、仕事キャンセルしてきたから、
ずっと、ママが一緒に居てあげるわ。
なんたって、諸角さんが来てくださったんだものね。
今日の会合なんて、どうってもないくらいの収穫よw。
珍しい名字だから、まさかって思ったけど。」
僕はどんどん、気分が悪くなってきた。
それでも、母の言葉は終わる事なく、
それ以上に調子を強めて、僕を見ないで
勝手に話を進めていた。
「理央も水くさいわw
諸角さんとお友達なら、早く言ってくれてたらいいのにw
ほんと、昔と変わってないんだからw
あの家の方々が電話するってあんまりないのよw
そんな人から電話なんて、滅多にない事だから、
でも少しだけでもお会いできてよかったわ。
それに、理央も目を覚ましてくれたしね。」
やっと僕に振りむいた、母はとてもニコニコしながら、話していた。
母は僕の変化に気づいてくれているんだろうか?
どうなんだろう・・・
こうなると、母は一方的だ。
「んじゃ、ママは諸角さんのおうちに、
お礼のお電話してくるわね。
早く、理央が目を覚まさないか?って
もう、焦っちゃうくらいよw
わざわざ、来てくださったんだものね。
お礼も兼ねて、お話して・・・
あ、理央は熱があるんだから、
ちゃんと寝ててね。
後で、代わりの者をよこすから。
静かに寝てるのよ。」
そう言って、さっさと僕の部屋から、
母は出て行った。
あの誰にも口を挟まさない勢いの母の言葉は終わり、
そとは、間逆な程のシーンとした僕の部屋の変わりよう。
残された僕は、凄く疲れだけが残って
バタっと仰向けで十の字に手を広げ、
そのまま倒れた。
何も感じないこの体。
虚しさもなく、単にぼーっと天井の一点の影だけを
僕は、ずっと見ていた。
(ママは、どっちだったんだろう。。。)
僕?それとも・・・?
答えは聞かなくても、とても明快だ。
今の僕は、モノに当たる元気もない。。。
脱力感でいっぱいだった。。。
はぁーと少し息を吐き、
目をゆっくりと閉じた。
(眠くなってきた・・)
薬が効いてきたのかな?
段々と、眠りがきつくなり意識が重く感じる。
さっきのは悪い夢なんだって
誰か言ってほしい。
否定してほしい。
だから、ほんとうじゃないんだって。
僕の体は大の字から段々と寂しさを埋めるように
自分で自分の膝を抱えるようにして、
小さくなって、ちいさくなって
強制的な睡眠に反抗することなく従った。
(本当は違うよって・・・誰か。。。)
出る涙もない。
所詮、こんなもんか。。。
やっぱり無駄は嫌いだ・・
「よ!大丈夫か?椿!」
その声は向井地。
「お前、倒れたんだって?ひょろっこい体してるからだよ!。
俺と一緒に走ったら、風邪なんて引かないぜ!」
僕はあれから、2,3日休んで、今日登校する事が出来た。
なかなか、熱も下がらなかったのと、
行きたくなかったっていうのあった。。。)
あいつに会うのが、すっごく嫌だった。
「ちょっと、調子悪かったんだよ。
それに雨降ってきて、焦っちゃってwww」
いつもの営業スマイル。
ちゃんと、向井地には通用しているみたいだ。
「ありがとう、心配してくれて。
嬉しいよ。」
「なんかあったら、ちゃんと言えよな。
友達なんだからさ〜。」
(ともだち・・・か・・・)
「そうだね、そうするよ。」
僕はまた笑みで返した。
向井地はへへっ、これって照れ笑いって感じ?
そんな感じで笑い返してくれた。
僕は、鞄から、机に荷物を移していた。
(いつもながら、こいつの笑いが一番落ち着く。。)
いいのか、それとも悲しい事なのか?
今の僕には、どうでも良い事でもあった。
「ところでさ〜、お前、なんであんなとこ、いたの?」
また、向井地が僕に話しかけてきた。
僕は鞄を机の上にかけ、授業の用意をしていた。
「え?」
「だって、諸角が助けてんでしょ?」
(なんで知ってるの?)
「そ、そうなんだ。僕、その時の記憶なくってw
忘れるっていうか・・・」
こいつが知ってるって事は、みんな知ってるの?
諸角が僕を助けたって事・・・
それ、みんな黙ってるの?
僕は急に周りの視線が気になりだした。
僕をずっと今まで、コソコソと見ていたんじゃないかって?
僕一人、気がつかなかっただけなのだろうかって?
恥ずかしいというより、悔しいというか、
その皆の変な好奇心的なものがもしあるなら、
僕は格好の餌食じゃないのか?って
隣の火事は楽しいって奴と同じで、
変な噂とか立てられてたら、
すぐにでも家に帰りたい気分だった。
でも取りあえず、向井地に確認しておきたかった
僕が居なかった間、この話はどこまで
皆の耳に伝わっているんだろうとか?
かんぐられてるんだろうとか・・・
「どうして、向井地君がそれ、知ってるの?」
なんともように装いながら、
向井地に聞いてみた。
ひきつった笑顔に見られていたら、
すごく嫌なんだが、言ってる場合じゃないって
よく分かっていたから。
「いや〜、お前出た後さ、諸角が聞いてきたんだよ。
俺に。お前でこだってさ?
お前ら、そんなに仲良かったっけ?」
分からないことだらけで、僕はまた頭の中が混乱して
吐きそうになった。
(保健室行こうかな・・・)
向井地の顔さへ、見てられないほど、
僕の顔は曇っていたと思う
「そんな事ないけど、そうだったんだ。。。
ま、誰かに見つけてもらって、僕は正解だったね。」
ハハッて愛想笑いして、向井地から目線を反らした。
とても、正気で普通にしてられない。
ほんとに気分が悪い。
誰の口からも、諸角の名前が出てくるだけで。。。
でも、まだ席を立てられない。
全部聞き出すためにも。
視線は机に向井地に見えない手は、
ずっと握りこぼしを作ったまま、
力を振り絞って、話を続けた。
「この事って、クラスのみんな知ってるの?」
「ん?どして?」
「いや〜、そういうの知られてるって、
ちょっとカッコ悪いかなって。。。」
もう、これ以上の虚勢を張る事ができないくらい、
イライラもしていたし、ムカつく気持ちも抑えられないし。。。
でも、向井地に当たるのはおかしいから、
自分をしっかりって自分で励ましながら、
適当に答えてみた。
向井地は、鈍感だからあんまり、僕の変化も分かんないだろうから。。。
「いや〜、俺に聞いてきたよ。
お前知ってる?って言われたし。
ま、あいつが俺に話しかけるのって
そうないからさ〜。
周りはあんまり気付いてないかもな〜
珍しい〜くらいじゃないかな?」
「そっか・・・みんなは知らないんだ。」
「でも、先生は知ってるぜ。俺が言ったからさ」
「そうなの?いつ言ったの?」
僕は、これじゃいけないって思っていたけれど、
口が止まらないっていうか。。。
どんどん、向井地に質問したくて仕方がなかった。
だって、あいつはいつも小出しにしか教えてくれないから、
イライラするんだ。。。
一気に喋ってたら、女みたいなんだろうけど、
それを期待してるわけじゃないけれど、
僕は気になって仕方がないから、一気に早く全部話して欲しかったんだ。
「先生は電話で話ししただけだけどさ。
でも、諸角がお前抱えてさ、ここに来たんだぜ。
倒れてるから、家に運ぶってさ。
んで、俺とあいつでお前の家まで、お前運んだんだから。
あいつ、おまえン家知らないからさ。
丁度、俺の迎え来てたからさ、俺の車で一緒に連れてったんだぜ。」
「本当?でも母は諸角の名前しか。。。」
「ああ、家ん中入ったの、あいつだけだし。
俺、車の中で待ってたしさ。
その後、あいつ一人で帰るっていうから、
それからは知らないけど・・」
気がついたら、僕はずっと向井地の目を離さずにはいられなくて、
体が凝固したように、固まっていた。
(あいつが?僕を抱えた?
んじゃ、ずっと抱えられたまま、車に乗ってたのか?)
その隣に向井地?
全く思いだせなかった。。。
誰かの腕に抱えられたままって。。。
そういうことだろ?
それで、抱えたまま、家に僕の部屋に入ってきたのか?
有り得ないだろ・・・普通。。。
僕は、顔を赤くなってるのが分かったから、
すぐに机に視線を向けた。
誰にもこの赤くなってる顔見られたくなかったから。
でも、あの諸角が僕をずっと抱えてたって事が
すごく、怖くなってきた。
一緒にいたのが、この鈍感な向井地でよかったのかどうか?
でも、他のやつと一緒に車って言われるよりは、
まだマシだったのかもしれない。
「安心しろよ〜、誰もいなかったって、そん時、俺だけだって。
んな、怖い顔すんなよぉ。俺だってさ、心配したんだぜ。
諸角に言われるまでさ、お前もう、とっくに帰ったって思ってたしさ。」
と言いながら、僕を慰めてくれてるんだろうと思うけど、
バンっと僕の背中を叩いて、ハハッてまた笑っていた。
ドキ!っとした。
背中を叩かれて、僕は急に恥ずかしくなってきた。
男の僕を軽々と持ち上げてる諸角って。。。
想像するだけで恥ずかしいを通り越して、
情けないっていうか、僕ってなんて間が悪いんだろうというか。。。
「鞄あるのにさ、帰ってないし、自分。」
だから、俺も少し待ってたんだぜ。お前ん事。」
向井地は悪くない。
優しいくらいだ。
「あ、ありがとう。世話になったんだね。
お礼を言うのが遅かったくらいだ。
今度、僕の家にでも来てよ。
お詫びというか、なんというか、御馳走するよ。」
「いや〜俺はいいけどさ。
諸角大変だったんじゃね?
ずっとお前抱えてたしさ。
見つけたのも、あいつだし・・・。
礼なら、あいつに言ってやれって。
男一人、抱えてって大変だと思うぜ。」
(やっぱりそうだったんだ。。。あいつが僕を・・)
「諸角って結構体力あんのなw
悪い奴じゃないしさ、見る目変えたわ。俺w
お前も、後で礼くらい言っといた方がいいよ。」
「そ、そうだね。後でお詫び言ってくるよ。」
「ありがとうね、向井地君。助かったよ。ほんとにお礼言うの遅くてごめんね。
でも、僕少し気分が悪いんだ、保健室いってくる。
ほんと、ありがとう。」
僕は立ち上がって、向井地にペコっと頭を下げた。
向井地はいいのいいのって感じで僕に手を振り、
気をつけろよぉって言って、僕を教室から送り出してくれた。
僕は、向井地に振り向きもせずピシャっと教室の扉を閉めて、
そして、ガクっと膝を折れて、そこにへたり込んでしまった。
今まで以上に鼓動が激しくなって、熱でもあるんじゃないかって程に、
顔が赤かったように思う。
(この姿も誰かに見られたくない!)
ふーっと、大きく息を吸った。
強制的に落ち着こうと必死だった僕。。。
この姿を誰かに見れれてないか?それも不安だった。
(はぁ、なんて事だ。。。一緒にいた奴が向井地じゃなかったら、
本当にどうにかなりそうだ。)
他の奴じゃなかっただけでも、良しとしたもんだろうか。。。
授業なんて、聞く気分じゃなかった。
(このまま、気分が悪いという事で、帰ってしまおうか。。。)
膝を抱えたまま、それも考えたが、
ま、気分が悪いと一応、向井地には
言ってきたんだ。
一回保健室行ってから、家に帰るのもアリだ。
(授業を聞くなんて、気分じゃない。)
それに、今の授業はもうとっくに、家で勉強して終わってるところだし、
今日一日位サボっても、問題はないし。。。
向井地は、鈍感で無神経なところはあるが、
嘘をつく奴じゃない。
向井地の言ってる事は、ほぼ正しいんだろう。。。
僕の気持ちが追いついてないだけだ。。
向井地は向井地で、心配してくれてたんだろうから。。
でも、僕の身が持たない・・・
あいつに抱えられて、家に帰っていたなんて。。。
今だけでも、気持ち切り替えなくちゃ。
でも、今日はもういい。。。
何がいいのか?わからないけれど、
今日は学校なんて、どうでもよかった。
諸角みたいにずっと授業中寝ていたい気分だった。
気持ちを落ちつけさせようと、神経が必死な感じだ。
とにかく、僕は今すぐ立ち上がって、
さっさと走って保健室へ行きたかったが、
そんな颯爽としていたら、誰かに怪しまれてしまうのも、
怖かったから、体が悪いって言うのを
見せつけるように、ゆっくりと歩き、
壁を伝ってゆっくり歩いて、保健室へ向かった。
しんどそうに歩くのも、大変なものだ。。
あっさりと教室で寝られる、あいつの性格が羨ましかったりする。
でも、到底僕にはそんな度胸はないから。
保健室でサボるくらいが関の山だ。
できるだけ、僕は保健室へ向かうため、
ゆっくりと階段を下りて行こうとした時、
何か胸にハッと思わせるものがあった。
誰にも視線を合わせないようにしていた僕だったが、
見ずにはおれない、痛いとも言える視線が僕に刺さってきた。
僕は思わず、上を見上げた。
諸角だった。
丁度、僕が階段を下へ行こうとしていた時、
逆に彼は階段を、上へと登ろうとしていた。
(彼は、教室じゃなかったのか?。)
目が合ってしまった。
(嫌な時に、一番嫌な人間合ってしまった。)
彼はずっと僕を見ていた。
僕は、一歩も動けなかった。
まるで睨まれたウサギのように、オドオドしてしまい、
もしかしたら、震えていたかも。。。
きっと怪しいとか変に思われたに違いない。
(無視するか。。それとも・・・)
どっちにも判断が出来ず、だからと言って動くのもままならなかった。
じっと見つめ合ってるこの状態を、誰か周りが見たら、どう思うだろう?。
きっと、僕だってそういうのを目撃したら、噂とかにはしないだろうけれど、
変に勘ぐってしまうと思う。
だけど、そんなことはほんと、一瞬の事で、
僕のぎこちなくじっとしたままの緊張感は一気に崩れた。
彼、諸角から動いた。
彼はプイッと首を返して、上を登って行った。
(あっ!)
反射か?糸につられて人形か?
僕もつられて、彼と同じように動いてしまった。
それも彼と同じ方へ。
彼と同じ方向行こうとした。
(マジ?っ)
自分で自分の行動に理解できない。
ついていくなんて。。。
ついていって、何がしたかったのか、わからないけれど、
見失うとダメだって、なぜか思ってしまった。
そんなに距離が離れているとは思っていなかったが、
なかなか、追いつけてないようにも思える。
妙に鼓動も早くなってきて、
しんどさが倍増する感じで、どんどん足も震えてるように思った。
(追いかける理由?なんだろ。。。
そうだ、お礼言ってないし、母親の伝言だってある。)
彼を追いかける何か理由がないと、
それにあの時、何が起こったか?
それも聞きたかった。
確か、あのいつもの木々のところで、
彼と出会って、それからの記憶が僕にはなかった。
家まで帰るところは、向井地から聞いた。
僕が倒れる時、諸角はどうしてあそこに来たんだろう?
それは、向井地は言っていなかった。
聞かれたけど、答えたとも言わなかった。
僕はあの時、何がどうなったか?
知りたかった。
僕より背が10cmは高く、僕みたいに華奢な感じでもなく、
そのせいか、歩いたりする速度も全く僕とは違うみたいだ。
(この上は屋上しかないはず・・・)
上には一歩通行だから、屋上へ行けばいい。。
僕は追いつくために走るのはやめた。
はぁはぁと、異常なくらい息が荒い。
僕はゆっくりと息を整えながら、上に向かって歩いていった。
保健室でサボるのも、屋上でサボるのも一緒だ。
どっちにしたって、今日はやる気がないんだし。。。
僕は、彼が行った屋上への扉に辿りつき、
鉄の塊のような扉を、よいっしょっと力を入れて
開けようとした。
(鍵かかってる?)
めちゃくちゃ重く感じる。。
病み上がりだからか?
力が入ってないのか?
扉は、なかなか開かなかった。
(あいつ、どうやって開けたんだ?。)
僕の力じゃ、全く歯が立たなさそうだった
(僕って、やっぱり情けない奴かも。。。)
ギギっ!
んしょ!んしょ!っと一生懸命力を入れて開けようとしていた
扉が一気にガバっと開いた。
(うわっ!)
僕は内側の取ってを持っていたから、
急に引っ張られる感じで、屋上につんのめってしまい
こけそうになった。
諸角が急に扉を屋上・外から扉を開けた。
(扉が開かなかったのに、諸角はすぐ開けられるんだ。)
男としても、少し悔しいけれど、
この貧弱な僕の体系とは似ても似つかない程の体格だから、
そりゃ、僕を抱えられる事も可能だろうな。。。
(やっぱり、情けない・・・。)
自分で諸角に抱えられるところも考えると、
非力な自分が悲しくなる。。
どうせ、僕なんて軽々だったろう。。。
ひょいと僕の体を左の腕に乗せ、僕の両足を自分の右腕に乗せて
僕は頭は諸角の胸にでも寄りかかってたらって考えると、
まるで、諸角に僕はお姫様だっこ、を皆の前でされていたんだという
恥ずかしさがこんな時に、頭に急に浮かんできた。
教室ではあいつ一人だったけれど、それまではどうだったんだろう。。。
他の人に見られていたら。。。
(恥ずかしすぎる・・・)
(いや、ここって恥ずかしがるところじゃないだろ!。)
そんな自分の心の葛藤なんか吹き飛ばすくらい、
僕がつんのめった先の光景は、パァーっ眩い位の日の光が、
目に飛び込んできた。
少し薄暗かった屋上までとは全く違う光で、
自分の顔が赤くなってるとかという気持ちはどっかに
消えてしまうくらい明るくて、
僕は燦々とした光の下で、眩しい光の方に目が釘付けになった。
(まぶしっ。)
でも、清々しくて気持ち良かった。
皆が授業中だという時間に、僕はこの光の中にいるんだって思うと、
凄く自由に感じて、悪いという気持ちよりも、
ずっとここに居たいなって思ってしまえてしまった。
(屋上でサボるやつもいるって聞いた事あるけれど、
なんとなく、分かるような気がする。)
雲は少し切れ切れに薄くうす〜く広がっていて、
上流は流れが早いのか?色んな形に変わっているみたいで、
あっという間に違う雲の筋がやってきていた。
今日は凄く天気がいいみたいで、空も絵具をザヴァっとこぼした様な、
まさに青っという色が空一面に広がって、
僕がウジウジ悩んでいた事とか、恥ずかしく思っていた事とか、
保健室がどうとかって、他人事のように思えてきて、
上の世界に見入るだけだった。
(綺麗だ・・・)
そこまで寒くもなく、ポカポカする暖かさを程良く冷ましてくれる風。
見れば見るほど、濃くなっていく青の世界に、
薄く広がる、多種多様の白い雲。
(空をこんなに近くで見るのは、久しぶりかも。)
空に恋してしまったくらい、ポーっとしていて動きたくなかった。
気持ちが良かったんだ。
人がどう思うと、この暖かさと、心地よい風。
僕は完全に一人のこの空間を独占していたように思っていた。
気持ち良すぎで、大声で誰にも聞かれないだろうけれど、
届かないかもしれないけれど、何か叫んでみたい気分になった。
そんな事したいと、今まで思った事なかったけれど、
そんな勇気もなかった僕だけど、今だけは違っていた。
大きく、すぅーっと息を思いっきり吸いこんでみた。
下のコンクリートが少し熱っぽけど、
丁度、扉の方の影になっていて、そこまで熱気がこみあげる事もなく、
程良く熱くて、力が沸いてきそうな感じだ。
僕の好きな木々はいつも、こんな風に息をして、
太陽を浴びてるんだって思うと、
僕も参加したくて仕方が無く、
思いっきり、息をフーッと吐いてみた。
体の中が空っぽになりそうなくらい、
気持ちがよかった。
お日様に顔を向けて、まるで自分も光合成してるようで、
成長しそうな気持ちになって、
もっともっとって感じで、両手を広げて、体中で光を受けていた時、
「お前、何してんの?」
僕の頭の後から、声がした。
諸角は、扉を閉めて僕に声をかけた。
(あっ!一人じゃなかったんだ。)
(僕一人で、なにやってるかな。。。)
余計に恥ずかしくなってきた。
何故ならいきなり、現実が目の前にやって来たから。
諸角をほっといて、僕一人でラジオ体操みたいな事して
気分良くしていたから。
(僕、馬鹿みたいだ。)
少し自分の行動を抑えて、諸角は今の俺の行動をどう思ってるだろうなんて
考えながら、背後の彼をそっと覗いてみる。
僕の事なんかお構いなしなんだろうか?
諸角が扉から手を離して、
自分のポケットから煙草を出して、火をつけいた。
(あいつ、タバコ吸うんだ。)
不良とは思わなかったが、やっぱり年が上なだけ、
僕が吸ったりするのより、似合ってるだろうし、
大人に見えて、ちょっとだけかっこよかった。
一息吸って、フーッと息を吐いた。
ギロっと僕を見る諸角。
(目が合うと、やっぱり怖いな。。。)
さっきの僕とはまた真逆な自分に戻り、
そして僕はやっと、諸角を追いかけていた理由が頭によぎっていた。
(な、何か言わなくちゃ。。。
そうだ!お礼だ。
お、お礼を言わなくちゃ。。。)
僕は、なぜかドキドキしてしまって、
ゴクっと唾を飲み込んだ。
変に意識してるんじゃない。
威嚇してるように見える諸角が怖いだけなんだ。。。
そう、思うように僕は考えた。
諸角はフェンスに両腕を引っ掛けて、
タバコは半分以上減っていただろうか?
でも、まだ咥えていて、
僕とは、さっきまで、ちょくちょくあっていた目も
合わさず、おとといの方向へ目を向けていた。
まるで、僕という存在が居ないというか、
無の存在でもあるかのように無視しているとでもいうか。。。
それが嫌でもわかるという、オーラがいっぱい出ていた。
せっかくの自分ひとりの時間を邪魔する人間は、
邪魔とでも言いたげそうであって、
こんな僕でもあからさまに分かる態度をしているというか、
そういう彼が凄くムカついたりしてるけれど。。。
まずは使命を果たさなくちゃって思って。。。
(ムカつくけど、今は我慢だ。)
でも、ここでは負けられない。
僕にも意地がある!
僕の口は自分の意志じゃないところで、
動いているようでもあったけれど。。。
「ぼ、僕。君に、諸角君にお礼を言わなくちゃって思って・・・」
(小さい?今の声?
聞こえてないかな・・・。)
諸角はまた煙草の煙を口からスーッと吐いた。
やっぱり僕の声は聞こえてないんだと、
今度はもう少し、大きな声で言わないとって。
「ぼ、僕ね。君におっ!。」
「俺に何?。」
僕の声に上書きするように、言葉を彼はかぶせてきた。
(な、何って。。。
嫌だけど、しなくちゃいけないから
やってるだけだよ。)
ほんとだったら、逃げたい気持ちでいっぱいだった。
でも、ここまで来て、何も収穫無しというのも、
後でまた、悩みの種になりそうだから、
早めにさっさとこの緊張を、僕は取りたかった。
「僕、君にお礼を言いに来たんだ。」
「お礼?。」
(全部言わせる気かよ。。)
ほとほと、奴が性格が悪いんだって、わかってきた。
フーッと大きく息を僕は吐いて、
僕が家に帰ってきていた事。
向井地から今日聞いた事を諸角に話を少しした。
「僕、記憶なくて、母からと向井地君に諸角君が助けてくれたって
聞いたから、お礼言わなくちゃって思って・・・」
ふーん、それでってな顔で、諸角は僕を見降ろしていた。
ほんと、嫌なやつって思ったけど、借りは作りたくなかったんだ。
「あ、ありがとう。助けてくれて。
おかげで助かったよ。」
全く彼は無反応だった。
(ち、ちくしょう。。。)
涙が出るほど、ムカついたけれど、
切れちゃこっちの負けだって思ったから、
僕はペコっと頭を下げて、お辞儀を彼にした。
日差しがどんどん、熱く感じて
自分の頭から湯気出てるんじゃないか?って
錯覚しそうで、目眩がしそうなくらい感じるこの空気。
下のコンクリートもどんどん熱を帯びてきて、
さっきの気持ちよさは、どこに行ったのか?と
不思議なくらい、僕は熱く熱く感じた。
(これ、終わったら、もう保健室直行だ。)
僕の額から汗がにじんでる気がした。
妙に汗ばんで、気持ち悪かった。
諸角の視線は僕に向けられていて、
でも僕は眩しくて、あんまりちゃんと彼の表情を見る事はできなかった。
(あの位置だと、涼しいのかな・・・)
なんて、訳わかんない事まで考えたりする始末で・・・
僕と諸角との感覚なんて、1mもあったらいいところだ。
そんな気温の差がある訳ない。
あるのは、やった側とされた側の違いだけだ。
「別にいいよ。そんなの。」
やっと、彼は口を開いた。
(なんだ、しゃべれるじゃんか。。。
最初っから言っとけよ。)
今は少し普通にしゃべれてるだろう。
気を取り直して、母からの伝言を言って、
さっさと僕は保健室だ。
「僕の母がお礼したいって言ってたから。
狭いとこだけど、よかったらまた、来てよ。」
(フーッ、やっと言えた。これで終わり。)
僕はやっと任務完了。
少し、涼しさを感じるくらい、
今は余裕が出てきた。
(僕だって、やればできるんだ。)
ちょっと自信持ってもいいよなって
思いながら、もう一度ペコっと、
ムカつくあいつに、頭を下げて、
じゃって、少し手を振り、
クルっと扉に向かって、
歩いていった。
屋上の扉には少し日よけみたいなものがあって、
ちょっとだけだけど、日差しが遮断されるようだった。
案の定、僕はこの扉を開けるのに、
しっくはっくしていた。
でも、さっきほど、重くは感じなかった。
(屋上の方が、開けやすいのかな?。)
そんな事も考えられるほど、余裕があったりして、
今度は保健室行って、そんで家に帰るんだって
少し、ルンルンな感情を持っていて。。。
顔もちょっと緩んでたかもしれなかった。
やる事やったしねって思ったから。
ガンっ!
(あれっ?)
扉が閉まった・・・
(えっ?)
気がついたら、日差し以上の大きな影が僕の後に出来ていた。
(えっ?えっ?何?
も、諸角?)
僕は、人の体温の熱を後に感じた。
(ここ出るのかな?でも、どうして閉めるの?。
僕が開けちゃ、まずかったのかな・・・。)
僕は微動だにも動けなかった。
何が悪かったのか?
ちゃんと頭も下げた。
土下座でもしろってか?
そこまでムカついてるのか?
だけど、後ろを振り返る自信もなくて。
また、ゴクっと唾を飲み込んだ。
僕の顔に汗が流れる。
熱さじゃない汗。
(早く、立ち去りたい。)
僕は今の願いはこれだけだった。
「椿は、俺にお礼してくれるの?。」
(はっ?)
意味、わかんないし。。。
何言ってんの?こいつ・・・
(お礼って、親が招待してこいって言ってんだから、当然だろ!。)
そう思ったけど、怒らせてもいけないって
とっさに考えて、僕は振り返らずに、
でも、少し震えていたかも知れないけれど、
普通に話を返した。
「母が、お礼したいって行ってたから。。。
それと助けてくれたし、向井地君も。。。」
彼の体温がすごく背中というか、首の辺りに当たるというか。。
妙にこそばゆくて、慣れない感覚にゾッとして、
あまり気持ちの良いものじゃない。
もう、熱さなんて感覚は麻痺していて、
日差しは大きくなって、熱くないはずなのに、
熱が下がらない感じで、僕はぎゅっと目を閉じていた。
「向井地がどうって?。」
(また質問かよ・・・)
いい加減にしてほしかったけど、
僕はこの諸角を撥ね退けてまで行く自信がなかったから、
とりあえず、穏便に何事無く、済ませてたくて。。。
「む、向井地君は、君の事を見直したって。。。
だから、僕もちゃんとお礼言わなくちゃって、思っただけだから。」
「それってさ、家に行かないとダメなの?。」
(えっ?)
僕は少し眉間に皺を寄せて、
肩越しに諸角を振り返った。
体も手もまだ扉を開ける為の体制のままだった。
ただ、彼の言ってる意味がさっぱり、
今の僕には理解できなくて、
その彼の言っている話が全く見えなくて。。。
思わず、彼の方を見てしまった。
(いけないっ!)
思った危険は当たったみたいで、
彼はまだタバコを吸っていた。
その煙を僕の顔に吹きかけてきた。
(やっぱり・・・)
僕は、ゴホッゴホッと急き込んだ。
凄く嫌な感じの煙で、
僕にとって、とてもじゃないけれど、気持ちがいいとは、
思えなかった。
母もタバコは吸うけれど、こんな匂いじゃなくて、
もっと良い匂いだから。
しまった事に、僕は急き込んだ際、
体も全部、諸角の方へ向けてしまった。
新鮮な空気が扉と体との間隔だけでは、
全然足りなかったから。
大きく息を吸い込んで、
やっと苦しい煙から、逃れられたと思うと、
目の前は、諸角の体格の良い体を、
僕は直視してしまった。
(う、うわっ!)
目の前に男の体があるって、
変な状態にびっくりして、少し後ずさりしてしまった。
ドンっ!
(あっ!)
ドンっと、自分の体で扉を開かないように、
もたれてしまった。
あ、後が無い僕。。。
殴られるんだろうか。。。
僕の鼓動がどんどん早くなる。
変にドキドキして、僕は諸角が怖くなっていた。
諸角は吸っていたタバコをそこらに捨てて、
両手で僕の頭の位置を固定させるみたいだったから、
殴りやすい位置に動かないようにさせられてるんだろうか?と
僕は、冷や冷やしながら、冷静になろうと、
今の状況を分析しようと、がんばっていた。
(体が近い・・それだけでも止めてほしい。)
目線だけでも、どこか違うところって
まるで、挙動不審な人間の目のように、
きょろきょろと僕は動かしていた。
(落ち着かないし、耐えられない、この空間。)
「俺、今欲しいんだけど、そのお礼。」
(はぁ?)
思わず、僕は彼を見上げた。
彼は口元だけ、歪めてニッと笑ってるみたいだった。
僕には全く理解のできない人種だという事だけは
よくわかった。
けれど、本当に今お礼って言われても、
何も出せるもの持ってないし、
お金も僕は、あんまり持たされていないから。
(これって所謂、カツアゲってやつなのだろうか?)
そういう体験も今までした事が無いから、
本当に、彼の言動一つ一つが怖かった。
僕の今までの経験では、全く理解もできないし、
分析も出来なかった。
ガクガクっと今度は足が震えてきた。
怖くて、怖くて、何を要求されるんだろうって。。。
母親に相談できないものだったら、
僕はどうしたらいいんだろう?
向井地なら、教えてくれるんだろうか?
誰でもいいから、助けてほしいとしか
思えなかったけど、そんな都合のいい事なんて、
そうあるもんじゃないって、
この時、やっと理解できた。
「ぼ、僕、そんなお金持ってないよ。。。」
僕は諸角との距離を作るために、
少し頭を下げて、彼がこれ以上近づかないように、
無駄かもしれないけれど、地面を見て言った。
(妙に近いんだよ、あいつ。。。)
「ぶっ!」
アハハハって大きな笑い声が、頭の上から聞こえる。
思わず、僕は顔を上げて、諸角を見た。
僕が一生懸命言った言葉がそんなに可笑しかったのか?
本当にこいつはムカつくやつだ!
僕は顔を真っ赤にして言い返した。
「わ、笑う事ないだろ!お礼が今欲しいっていうから・・・
正直に答えただけだよ。」
僕は恥ずかしくて半泣きだった顔を見られたくないから、
ふくれっつらのこの顔を横に向けた。
首まで真っ赤だったんじゃないだろうか?
気温の熱さより、体から出てくる熱の熱さと、
彼の訳のわからない言動で、僕の頭は本当にどうにかなりそうだった。
諸角は目頭を押さえながら、笑いをこらえるのに必死だったみたいで、
でも、僕がよそをプイっとしてから、笑うのをやめた。
「お前、ほんと、可愛いな。」
(ぎょっ!また出た、その言葉。)
僕が一番嫌いな言葉。
それもこいつに言われるなんて。。。
ふくれっ面ながらも、僕はキッと諸角を睨んだ。
(本当に無神経な奴!お礼なんて言うんじゃなかった。)
今頃、後悔の念が僕の感情に充満してくる。
こんな事、時間の無駄だ。
僕はもう、こいつに遊ばれるのは嫌だった。
それにもう、熱くて熱くて、涼しい保健室へ行きたかった。
(付き合ってられない。。。)
僕は扉に手をかけて、開けようとした時だった。
諸角の手の甲が、僕の顔の輪郭をなぞる。
(えっ?)
彼の手は冷たくて、でもゴツゴツしてて、
僕のとは全然違った。
僕の両目は彼の手の動きに釘付けだった。
何度も、彼は僕の顔、頬を僕より大きなその手で擦った。
(何事なんだ?これは・・)
僕の手は、震えていた。
両手で扉にペタっと貼り付いてるような状態で、
自分の体を支えるので必死にしがみ付いていた。
(蛙のような吸盤があれば、楽なのに。。。)
自分の体を支えるのが精一杯だった。
だけど、諸角の手の甲は、動きを止める事もなく、
今度は僕の首を擦る。
彼の手は凄く冷たかったけど、
僕の真っ赤な首には、程よい心地よさを与えてくれた。
さっきまでの熱さを彼の手が、冷ましてくれるようでもあって、
正直、気持ちが良かったんだ。
「あっ。。。」
(へ?僕の声?
あ、ありえない!!。
なんていう声だよ。。。)
さっきまでの変な緊張が全く無くなって、
ずり落ちそうになる自分の体を支えるのが精いっぱいで、
その上、諸角は僕の熱を冷ます気持ち良さを与えてくれて、
その結果、僕の口からはとんでもない声が出ていた。
全くの無意識状態だった。
諸角に聞かれたと思うと、余計に恥ずかしくって、
また、僕は頭を下げて、彼との距離を取ろうとした。
でも、今度は彼がそれを許してくれなかった。
僕の顎をクイっと持ち上げて、僕と諸角の距離は一層縮まったって
しまったように見えた。
彼はクスッと笑って、僕を見ながら言った。
「お礼、今欲しいんだ。くれるよね?」
(顔、近すぎ!)
なんて事よりも、僕には考えられない事が起きた。
諸角の唇が僕の唇に少し重なった。
軽く重なる程度の僕と彼の唇が合わさる行為は、何度も何度も続いて、
僕は、余りに驚きすぎて、全く目を閉じられなくて。。。
(えっ?、も、諸角?)
僕は何にも答えてないっていうか。。。
そんな事よりも、諸角が僕にキス?
これってキスってやつだよね。。。
僕は卒倒しそうになった。
またクラっと頭が揺れた間隔があったが、
諸角は僕の体を支えて、扉によからせて、
腰のあたりに腕を廻して、僕を支えるような感じで、
顔を上げさせるためかどうなのか?
分からなかったが、僕の頬を手の甲で摩ったり、
僕の唇を指でゆっくりなぞったりしていて。。
僕は起こってる事は理解できるけれど、
これって相手は普通は女の子じゃないのか?
でも、僕は男で彼も男で。。。なんてグルグル頭が回ってきて。。。
僕の体の奥から来る熱い何かが重なって、頭の中がぼーっとしていた。
(何なんだ?どうして?。)
僕は、これから起きる事が全く予想が出来なくて、
初めての事ばかりで、本当に怖かった。
でも、体は全く動かなくて、彼をドンと突き飛ばす事さえ、
今の僕には、そんな力も残っていなくて、
悔しいけれど、諸角に体を預けたままの状態だった。
僕の唇に触れた指は、本当に大人みたいに固くって、
でも、ひんやりしていて、僕とは全然違う肌の厚みと体温が
凄く、気持ち良かったりで。。。
諸角はまた、唇を合わせてきた。
ひっつくか、ひっつかないかっていう程度で、
僕の唇の形を確かめているのか?
僕にはわからないけれど、チュッチュッって、
軽く音を立てながら、何度も重ねてきた。
(これが僕のファーストキス?
女の子ともしたことないのに。。。)
そんな事も頭に浮かんだかもしれない。
でも、それより、軽く他人の唇が自分の唇に触れるだけで
こんなに気持ちが良くなるなんて。。。
彼の唇は固い感じだけれど、凄く弾力があって、
僕の口なんて、取って食われそうな感じもあったけど、
僕のサイズに合わせてくれてるというか、
すごく優しい感じを受けた。
こんなのは、初めての体験だった。
「はぁぁ。。」
僕の唇から諸角の唇が離れたと同時に、
僕の唇から、初めて知ったこの気持ちよさを、
まるで諸角に聞いてもらいたいかのように、
勝手に出てきた音。
今、気がついたんだが、
諸角の目は、すごく綺麗だった。
真っ直ぐに僕を見ていて、
なぜか、僕も彼の目を見ずにはいられなかった。
「お前、エロいし、ホントに可愛すぎ!
お礼、もう少しもらっていい?」
僕に選択権なんて、ある訳ない。
今の僕は彼にされるがままだった。
そう言って、彼は僕に唇を重ねてきた。
今度も、初めての経験だった。
にゅるっとした感覚。
凄く気持ち悪かった。
ガクっと腰が抜けそうになった。
(さっきと全然違う。。なにこれ?)
自分の力が入らない。
予想していたのかどうか?
すぐに諸角は、僕の足と足の間に
自分の太ももを割り込ませて、
僕を支えてくれた。
彼の舌が僕の口の中に入ってきて、
色んなところをなぞっていく。
歯の裏側とか、僕の舌に絡めてきて、
自分の口の中にも、僕の舌を入れてこいと言わんばかりで、
諸角の逞しい腕は僕の肩と腰をがっしりと抱いていて、
まるで固定されているかのようでもあって、
僕には自由がなく、彼の腕に、胸に、
すがって、耐えるしかなかった。
(息が出来ない。)
彼の舌は、熱くて、さっきの軽い触れるだけのとは、
大違いで、彼の舌が僕の口の中を全て奪い去るような
激しさを感じた。
弾力のある唇を、僕の唇に押しつけて、
ほどよい力で吸いつき、僕自身がどうなっているか?
彼の舌で一つ一つ確かめられているように感じて、
そして、僕の舌と絡ませ、強く吸いあげていく。
くちゅ、くちゅと音がする。
最初、自分の体の中で起こってる音とは、信じられなかった。
彼はやっと僕を解放してくれた。
プファーと息を吸いこんで、
少し、息を整えるのに時間がかかった。
まだ、はぁはぁと息が荒い僕。
何がどうなって、こうなったのか?
理解もくそもなく。
初めての事ばかりで、驚き以上に声も出なかった。
苦しくてか、それとも屈辱でか?
僕は、少し涙が出た。
諸角は、まだ僕を完全には解放してくれなかった。
僕の表情を見て、彼の顔少し変化した。
(え?こ、今度は何?。)
一番最初の彼の唇の感触が、
僕の滲んだ目の辺りに感じる。
彼が僕の涙を吸ってくれてるみたいだった。
(優しい・・・)
言葉は無かったけれど、彼の息遣いでなんとなく
分かった気がした。
彼は、彼なりに僕を気遣ってれてるんだって。。。
彼の唇は、僕の頬をも軽く唇でタッチしていき、
また、唇に軽く重なりあって、
今度は首や、耳に軽く愛撫していくような感じで、
僕に触れていった。
僕の両足に割り込んだ彼の太ももは、
軽く前後に動いて、僕を刺激する。
僕の口に触れては、耳を軽く噛んでみたり、
僕の首を吸いながら、鎖骨の辺りまで繰り返しては、
また僕の唇に重ねて舌を絡ませて、
彼の太股で、刺激をうけて。。。
背中がゾクゾクして、彼が触るところ、全てが熱くてジンジンしてきて。。。
もう、僕は何も考えられなった。
頭が真っ白だった。。。
まだ息も絶え絶えな僕。
どんな顔してるんだろう。。
でも、気持ち良すぎて、
初めて感じる変なこの気持ちよさに、僕は勝てなくて。。。
真剣に諸角を見ていた。
「俺ん家、来る?」
(えっ?)
僕をじっと見て、諸角は言った。
彼の声、音、体温、触れるところ、全てに今の僕は、
反応してしまう。
真っ赤になるという事で。。。
少し、間が開いたが、僕はコクっと頷いた。
「いい子だ。」
彼はそう言って、頭を軽く撫でて、僕の頬に軽くキスをして、
校門で待ってろと言った。
プラス、歩けるか?って心配してくれたけれど、
これが病気で体が熱くなってるんじゃないくらいは
僕にだって分かる。
大丈夫っと言って、諸角が屋上の扉を開けてくれた。
ありがとうと僕は彼に言い、下に降りようとした時、
諸角は僕の左腕を引っ張った。
ドキっとしたが、彼は僕の指先に握っていて、
そして、僕を見ながら軽くキスをした。
僕の体は、おかしいのか?またそこから熱が出る。
ドキドキするこの気持ちの先に何があるのか?
僕は知りたかった。
諸角の顔は、今まで見たことがないくらい
優しい顔だった。
こんな顔もするんだと、初めて知った。
この時、初めて僕は向井地と意見が一致ように思う。
諸角は、僕を抱きよせて、頬に軽くキスし、ペロッと舐めて
ぼくの唇に自分の唇を重ねてきた。
(この弾力が、堪らなく気持ちいい。。。)
僕は今本能で動いてるんだろうか?
重なる唇に自分から吸いついているように思えて、
離したくなくなる。
諸角が、先に唇を離した。
僕はえっ?という感覚になったけれど、
また、軽くチュっとしてくれた。
「校門で、良い子で待ってろ。」
そう言って、諸角は早々と下へ降りて行った。
僕はその姿を見送って、ゆっくり諸角に言われた通り、
校門に向かっていった。
2010-03-27
記憶の彼方-4
いつも疑問に思う事がある。
それは「普通って何?」って事。
今まで激しい怒りとか感情なんて、
生きていく上で、ものすごく邪魔なものとしか、
考えてなくて、そんな力があるんなら、
一気に使うんじゃなくて、細く長く使って
無駄な力を出来るだけ減らしていければ
効率よく生きていけるからいいって、思っていた。
その方が人生、得なんだって、
ずっと思っているし、
今後この考え方は変わらないだろうって思っている。
だって、そうだろ?
勢いに任せて、感情をぶつけたからといって、
何か好転する事なんてある?
それは単なる自己満足で、
一人でマスターベーションしてるのと、
同じ事だって思うから。
(感情をすぐに頭に持って行くから、激情するんだ。
腹に一度、入れて頭に入れていけば、怒る事もない。)
これが僕、つまり椿 理央の生きる処世術でもあったりする。
僕の一日は、「ごきげんよう。」で始まり「ごきげんよう。」で終わる。
この学校の一日はこの言葉で始まり、この言葉で終わっていく。
おはようでもなく、バイバイでもなく。
なんとも言えないこのぬるい感触。
始まりでもなく、終わりでもなく。
機嫌がいいのか?悪いのか?
それさえも見えなくしてしまうのが、
この言葉でまるで魔法の言葉だ。
僕には打ってつけの言葉だ。
(まるで、無駄がない。)
僕は心からそういうものを求めていたんだと思う。
あの変な出来事から、僕は絶対にどんな事があっても、
迎えの車が学校まで来るまで、
帰らないことにした。
変な人がいて。。。って言えば、
母は、すぐに僕専用の運転手を探して、
車も用意してくれた。
(実際、変な奴いたし。。嘘じゃないし。)
自分の体を勝手にされて、たまるか!という
少しは残っていた男のプライドみたいなものが、
許さなかったというか。。
(男に向かって、可愛いってなんだ?)
小さい頃なら、分からんでもないけれど、
確かに僕は小さい時から、小柄であまり食べなかったから、
母はすごく料理に手をかけて、
嫌いな物でも、僕が分からないように食べさせてくれていた。
今ではそんな事は絶対にしなけど。
まずお互い忙しいし、殆ど顔を合わせる事もない。
それに、お手伝いの人が全部、母の代理をしてくれるし、
今更、母親に手伝ってもらわないとダメな年でもないから、
こうやって、ある程度放置してくれる事がすごく助かっていたりする。
この母との微妙な距離感も、僕にはとても心地よいものだから。
先の事なんて、尚更考えてもなくて、
どうせ、母親の言うとおりにしか、僕
はしないんだろうって思っている。
僕にはそんな、人生経験なんてないし、
する勇気もない。
言われたとおりにしている方が、
気が楽だし、その方が絶対に合っているんだと思う。
一時の感情に任せて、反抗するよりも
長い目で考えていけば、親の言うとおりにしていた方が、
その時は、反抗心があったとしても、
後々を考えればよいと思えるに決まっている。
それが僕の為でもあるんだって。
僕の周りにいる人間たちも
友達ともいえるだろうか?
分からない相手は数人いるが、
そういう相手でも今後も、付き合いは母を通じてだろうけれど、
続いていく連中だ。
こいつ達とも、程よく仲良くなっているのも、
今後の僕の為でもあるから、母がやっているように、
僕もやっていけばいいと思っている。
いい見本が目の前にいるんだし。。。
だから、不満なんて全くなかった。
(こんなに無駄が無く、心地よいのに・・・)
僕は今、授業中でもあるけれど、
この内容はもう、家の家庭教師に教わっている内容で、
僕にとってはとても、退屈で無駄にしか思えなかった。
でも、サボるなんて勇気はないから、
じっとしてこの時間が流れ去るのを、
待っているだけでいいんだ。
何にも苦にならない。
喚いたって、おかしい奴って、
みんなから弾かれるだけだから。
なら、黙ってついていく方がいい。
そうしたら、誰も僕を弾く事はないから。
隠れて本を読むのもだるい。
人の考えなんて、時間と共に変わっていく。
現に僕の母親がそうだ。
初めからああじゃなかった。
でも、段々変っていった。
その瞬間を焼き付けてしまう、
本や写真は、僕は苦手だ。
そんなのしたって無駄だろ・・・。
そう思わないか?
過去は取り戻せないんだから。
だったら、建設的な考えとして、
合理的に生きて、無駄を省いていく方が
よっぽど、未来的展望が明るいと、
思わないか?
ある意味、僕も母の影響で毒されているかもしれない。
でも、母は成功している。
それに結果を出して、社会は認めてもいる。
だから、僕はこの方法は間違っていないって思っている。
(どんな時も臨機応変に行かなくちゃ。)
風だって、自由であって自由ではない。
鳥だってそうだ。
そう思っているのは、人間だけだから。
いかに抵抗を少なくして生きていくかが、
一番大事な事なんだと思っている。
僕は今まで少しだけ、諸角に興味があったけれど、
興味といっても、人間的に何を考えているのか?とか
どうしてタブっているのか?とか
授業を寝てばかリしてるのはなぜか?
そんな程度だった。
この間の事件で(僕にとってはそれくらい大きな出来ごとだったから。)
彼は僕の考えを一気に覆してしまうような、
危険な人間だって、よく分かった。
危険なら近寄らなければいい。
それだけのことだ。
あの時は、僕は一人だったから、
怖かっただけだし、
いつもは、誰かが僕を守ってくれて、
家にまで連れて帰ってくれる。
母も僕はこれからのビジネスで必要だから、
僕の要件をちゃんと飲んでくれる。
そうやって、僕は上手くやっていけばいいだけだから。
もろずみは隣で、やっぱり寝ているけれど、
僕はもう気にしない。
それより向こうの青々として、
どんどん、緑を濃くするたくさんの葉が
揺れるのを見ている方が、
楽しかったりする。
多方面・多方向に伸びているように見えるが、
彼らも無駄がないように、本能で合理的に、
規則正しく計算されて、伸びていっている。
風に揺れれば、そこで一番いい無駄のない選択を
彼らも、そうやっているだけだ。
僕もそうなれば、いいだけだ。
そう思っていると、あの木々達も、
愛らしく、応援してしまいたくなる。
、
一生懸命その本能でベストポジションを探し、結果
合理的な動きとして、僕たちの目に飛び込んでくる。、
自然の生態系でさえ、こんなに計算されているのに、
僕もその中の一員なのだから、
もっと、その考えの自信をもって
いつでも貫いていける強さを持たなくては・・・、
考えさせられる。
そして、自分の考えが正しかったのだと、
彼らは僕を励ましてくれて、
同意してくれているように見えて、
微笑ましい気持ちで自然と笑みがこぼれてしまう。
こういう時間が僕にとってはすごく大事で、
ほのぼのとして、椿 純子の息子という代名詞がつく僕じゃなくて、
一人の人間として、ゆったりとほのぼのと、
心洗われる時間で、とても大事なものでもあるんだ。
確かにあんな事はあったが、
僕が考えている事が間違っていないという事を
再認識させてもらえたという意味では、
ある意味、有り難い事かもしれない。
悪く取ってしまっては、全て意味がなくなる。
それより、もっと大事なものがあると、
僕は気づけたんだから。。。
とても、清々しい気持ちだった。
生まれ変わるというのは、
こういう事も意味してるのだろうか?
「お前、ほんと、笑ったら可愛いな。」
不意を突かれた。
(何、それ?)
目の前が真っ暗だ。
さっきまでの優雅な耽美ともいえる僕の美しい世界が一瞬にして、
暗闇の光ない世界に色を失っていくのが、
肌で感じる。
ズンっと重いものを頭に乗っつかってきたみたいだ。
顔が緊張で強張っている、緊張もしてる、自分でも判った。
(も、諸角?)
一瞬にして氷結してしまった、僕の顔がギギギギっと
向きたくないが、ブリキのおもちゃが無理やり動かされているような、
そんな乾いた音が聞こえてきた。
絶対に僕の意志ではない。
見たくないけれど、自分の顔に妙な吸引力受けて、
ある一定方向に引っ張られている。
(か、勝てないかも。。。)
その先にいるのは、
やっぱり、諸角だから。
僕は抵抗した。
でも、そんなのはこれこそ無駄というべき抵抗で、
僕の力では到底勝てないくらい強い眼力で、
僕の顔の方向は、諸角の目線の方向で止まった。
目が合った。
氷結が硬直に変化する。
(さっきまで、寝てたじゃないか!)
諸角は僕をじっと見ていた。
「なんですぐ、変わるかな?面白くね〜よ。」
諸角はそういって、プイッと俺と反対方向に顔向けて、
また自分の腕を枕に、眠りに入った。
僕はまだ硬直している。
諸角、彼の言っている言葉が全く理解できなかったから。
(面白い?面白くない?変わる?何が?)
(はぁ?)
この前といい、この諸角という人間は、
なんなのだろう?
僕は外を見て、心を和まし、
自分の考えの正しさに満足していただけだ。
決して彼を見ていた訳ではない。
彼はじっと、僕を見ていたかもしれないが、
僕は全く眼中になかったんだ。
なんという木々の動き・強さの無駄の無さに感動して、
心から感じて、愛でていただけだ。
これは、人として素晴らしく、至高の一時でさえあったと思う。
これ程までに無駄を嫌うこの僕が、この時間は無駄にしてもいいほど、
あの木々と空と光の僕に対する気持ちを感じていたい、
生命の力強さと僕のこの気持とリンクさせていた
有意義な時間を。。。
それなのに、この諸角は、僕の大事なこの時間さえも、
壊していく。
そんな権利が君にあるのか?と、
大声で彼に言ってやりたいくらいだった。
僕は確かに、この授業は真面目ではないかもしれないけれど、
諸角ほど、授業を邪魔して、先生の妨害をしている訳ではない。
聞かなくてはいけないところは、ちゃんと聞いている。
外を見るくらい、許されてもいいはずだ。
誰だって、それくらいしてるじゃないか。
(時間をちゃんと、有効利用しているだけだ。)
この間の事だって、僕は誰にも言っていない。
(というか、話せないっていうのもあるが。。。)
彼にとっては、単なるキスかもしれないけれど、、
僕はあれば、初めてのキスでもあったんだ。
なかった事にしていたんだ。
事故にもならない事故のように思うようにしていたんだ。
真剣に考えれば、感情が乱れておかしくなりそうだったから。
そんなのは、僕の性分じゃないから。
真剣な気持ちなんて、有り得ないし。
僕が認めなければ、こんなのは数のうちにも入らないはずだから。
今まで生きてきた中で、考えられない事だったから。
僕は椿 純子の息子だから、
こんな事でうろたえていたら、母に笑われてしまう。
それに母が笑われる。
それは、僕も笑われるっていう事なんだ。
それは僕のプライドが許さない。
(お子様ではない僕に、可愛いはないだろ。)
それに男に男が可愛いなんて、有り得ないだろ!
失礼にもほどがある!
(確かに君よりか弱く見えるかもしれないが、
それでも、言って良い事と悪い事がある。)
どういう家に育ってきたら、こうなるんだ?
僕は怒りより、呆れる気持ちとムカつく気持ちとが
入り混じって、混乱してしまう。
(彼の家は芸術家の両親じゃないのか?
人の感情なんて、もっとわかるはずじゃないのか?
まして、彼は2年も年上のはずなのに。。。)
彼は僕の感情を、逆撫でする事ばかり仕掛けてくる。
(どうして、何も知らない相手にこんな事を言われないといけないんだ。)
一瞬、ムカっとしたが、そのおかげか?わからないが、
硬直が取れた、顔が軽くなったような気がする。
やっと、彼の眼力から解放されたようで、
自由に動けるようになったみたいだった。
(彼と傍は危険だ。)
僕の本能の部分なんだろう、
自分が自分に語りかけてる感じだった。
席が近いから、余計そうなるのかもしれない。
(ダブってるくせに。。。)
僕は意外と早く冷静になれた。
授業が終わると同時に、僕は担任に席替えを申し出て、
彼と、離してもらうようにした。
もちろん、本当の理由は伏せているが、
僕の勉強を邪魔をしてくるという理由で、替えてもらった。
やっと、これで、乱れる事はなくなった。
せいせいした。
(ざまぁみろ。)
僕は、とても気分がよかった。
諸角と同じ列だったが、僕は最前列で、窓際になった。
いつも見ている木々は後になってしまったが、
新しい木々を見つめる事が出来るようになった。
それに授業もきちんと聞くようになった。
(面倒だが、復習の復習と思えばいいか。。。)
僕はやはり、窓の外を見る。
自然が大好きというわけではないのだが、
なぜか、ここの人工的に植えられた木々であっても、
本能で生きようとする姿が、健気で逞しくって
僕の心の励みになっていた。
諸角と席が離れる瞬間から、僕の大好きな木々以外、
周りに気を取られる事が、
全くなくなった。
凄く、心地よかった。
やっとこれでいつもの僕になれる。
いつもの笑顔、いつもの「ごきげんよう」、
何気ない会話。
(一代で成金イメージの僕もこうやって、大人しくしていたら少しは仲間のように
扱ってくれるようになった。)
少し嬉しかった。
みんなのように、僕専用の送り迎えの車に運転手もいる。
出来るだけ、会話についていけるように、
ブルジュアな会話と品の良さを身につけようと頑張った。
夏休みは皆、別荘に行ったりするらしく、
僕も母にせがんで、別荘を買ってもらった。
これで、皆を招待する事も出来る。
何人か友人らしき人間たちにの家にも、招待された。
僕の家とは、全然規模が違うが、招待されたのは嬉しかった。
僕も皆を自分の家に招待した。
規模は負けるのは仕方がないから、最新のゲーム機器や、ゲームソフト・DVD
少し泳げるプールみたいな施設などを、家に準備してと、母にねだった。。
彼らに勝とうとかという気持ちはないけれど、
見くびられたくないから、
理由はそれだけだった。
母も、これが今後のビジネスに繋がるとわかっているから、
惜しむことなく、僕の要求を飲んでくれた。
これこそ、ギブ&テイクだ。
これで母の役に立てるなら、僕は全く問題なかった。
彼らは、夢中で遊んでくれた。
彼らが来る時は、母は昔の母のように、ちゃんと家にいてくれて、
僕が今でも大好きな昔の母みたく振舞ってくれた。
(彼らが来ると、母は昔の母になってくれる。。。)
何回でも、彼らを招きたいくらいだった。
それに、本気かどうかわからないが、彼らもまた行きたいとも言ってくれた。
それはそれで、素直に嬉しかった。
僕は着実に母の意向に沿って、学生生活を送っていた。
(もっと早くこうすればよかったんだ。)
今更だが、自分の鈍さに情けないと思う。
やっぱり母のような強さはないんだなって思う。
諸角と離れて、まだ2週間も経っていないが、
どうして、あの位置にずっといたのか?
言えば、こうやって、席も替えてくれて、
明るい未来があったのに。。。と、
自分の決断力の遅さに、重いため息が出てしまう。
僕としては今の段階で、この辺だけは後悔している。
でも、それを挽回するくらい、学生生活を満喫させようと、心に誓った。
あれから、諸角も近寄ってこない。
(あれは、僕も本気ではなかったし、数のうちに入れて
あれやこれやで悩む方がおかしい。)
僕は、そう考えるように気持ちを切り替えた。
これから生きていく間に、色んな事があるだろうし、
予想外の事だってあるはずだ。
それにいちいち、気を取られていたら、生きていけない。
あれは、何でもなかったんだ。
そのうち、忘れているさ。
(あの出来事は、その予行演習みたいなものだ。)
僕は、そう考えるように努めた。
諸角の視線は、全く感じないわけではないが、
席が前になっただけだから、
僕が前になった分、そう感じるだけだろうと思っている。
僕は、ちゃんと上手くやっている。
僕の好きな木々もそう言ってるはずだ。
やっぱり僕は正しいんだ。
衣替えも終わり、雨も多い日が続くが、
面倒な試験も終わって、
他人の邪な感情や自分の感情を揺さぶられる事なく、
順調に毎日を過ごしていた。
「椿、お前学年3位ってすごいなw」
「え?」
「この間のテストの結果、総合3位って、すごくない?」
「あ、ありがとう。」
「俺なんて、全然なのにさw、一回でいいから10位内に入りたいぜ〜w」
「本気出したら、できるよ。調子悪かったんじゃない?雨多かったりしたし。」
「そっか?wお前、優しいなw」
アハハと彼は笑った。僕もつられて笑っていた。
褒めてもらったお礼として、いつもの営業スマイルでペコっと頭をさげ、
彼の機嫌を取るように謙った。
彼は向井地 光太郎。(むかいち こうたろう)
裏表のない明るい性格で、僕とは少し違うタイプだが、
僕の中では友人という枠の中ではあったし、
僕自身、まだ色々と話がしやすくて、仲のいい方だと思う。
それに彼の実家も一代で成り上がったという感じの家で、
大手ゼネコンの一人息子だった。
家が遠くて、一人暮らししてるという話だ。
今は僕との席も近いし、周りの連中からしてみれば、
僕みたいなのは外様という
分類なので、彼も少し僕と似ている扱いでもあるから、
仲良くなるのに時間はそうかからなかった。
「一番誰だった?」
聞く気もなかったけど、話が途切れちゃったから、
一応、話を繋げなくてはという義務感で、僕は向井地に話を振った。
興味無い話だから、鞄に自分の物を直しながら尋ねた
(誰が一番でも、どうでもいいんだけどね。)
何か、話したそうだったし。。。向井地。
「そうそう!、それがアイツよ〜。諸角!
寝てばっかりだけど、
家で、勉強してるのかね〜。」
「え?」
僕の顔と手の動きが、一瞬止まった。
も、も、諸角?
寝てばっかりのやつが?
嘘でしょ?っていう顔をしていたと思う。
(だ、ダブってるからとか?)
たぶん、いや絶対、僕の動きは変だったと思う。
向井地は、気付いた思っただろうか?
この今までにない僕の奇妙な動揺を、不審に思わないだろうか??
(なんとか、間を繋げなきゃ。)
僕は先にそれが頭に浮かんだから、
とっさに言葉を出した。
「だ、ダブってるからじゃないの?
だから、わかってるっていうか。。。」
(僕の声、震えてないだろうか?)
変にドキドキしてる?
諸角のもの字も最近、聞いていなかったから?
いつもの俺らしくない、行動の俺は周りにどう見られている?
自分でもこんなに諸角の名前が出てくるだけで、
オドオドしてしまうなんて・・・。
「いや〜あいつさ、海外行ってたんだって。向こうで日本画教えてたらしいよ。
ダブってるのはそのせいらしい。」
「え?そうなの?」
また、僕の動きは止まった。
日本画?
あいつ、絵を描くんだ。
芸術家の家の子って本当だったんだ。。。
僕は少しびっくりした。
絵というものに興味は全くなかったが、
彼が人を教えるなんて、そこまですごいのか?と、
隣にいる時は、全く思わなかったから。
(だから訳わかんないのかな。。。)
「ここ、卒業したら、なんか襲名がどうとかって聞いたけど。」
(そうなんだ。。。)
「椿、知らなかったの?」
「えっ?あっ、あぁ、知らなかった。」
「へぇ〜意外w。席近いかったから、色々話してるって思ったよ。」
今だけでも、僕はできるだけ、普通に振舞うように努めた。
そう、さっきまで帰る用意をしていたんだから、
鞄に物を入れる作業をしながら、
動揺している自分を極力悟られないように。
変に震えている自分が見つからないように。
「殆どっていうほど、、喋って無かったし。
単に席が近いだけっていうか。
それに、彼は寝てばっかりだしね。」
やっと、向井地を少し見ながら、言えた。笑えた。
いつもの営業スマイルだけれど、ぎこちなく自然だったと思っている。
「そうだよな〜。じゃないと、いきなり途中で席変わってくれとかって言わないもんなw」
向井地は、ベターっと机に体を投げ出して、
顔だけ僕に向けて、笑いながら話していた。
僕も口の端を少し上げて、頬笑みかえした。
もう、普通にやれてるはずだ。
さっきは、意外な話だったから、びっくりしただけなんだ。
そう割り切った。
そうするべきだって、思ったんだ。
「少し、目が悪くなったかもしれないんだ。
あの席だと、文字がかすんじゃって。
それで席を替えてもらったんだよ。」
(あれ?なんで先生に言った理由を僕は言ってないの?)
もう、言った言葉は取り消せない。
自分でも、知らず知らずに、まるで諸角かばってる?と
勘違いしそうな言葉を、向井地になんかに、
それも無意識に言っている。
(墓穴掘ってる?)
顔の血の気が引きそうだ。
また、表情が強張ってるのではないだろうか?
不安で仕方がないが、なんとかこの場を終わらさないと。。。
帰る用意は出来た。
もう、後はこの部屋を出るだけだ。
僕はさっさと部屋を出るように、
体を向けていくんだが、
いつもの動作の6倍は、時間がかかってるように
なんだか、体が重りを抱えているみたいで、
動きが鈍く思えて仕方がなかった。
(早く、立ち去りたい!)
これだけだった。
あとは、「ごきげんよう。」
これを言えば。。。
「俺、てっきり、椿はあいつになんかされたのかって思ってたよ。」
まだ続けるか!
ってその前になにか?ってなんだよ?
(こいつ、鈍いな・・・。)
でも、それよりもっとすごい言葉を聞いた気がする。
慌てて反応した。
「え?なにかって?」
まさか、見られてた?
ドキっとする一言を、向井地はたまに言う。
勘がいいっていうか。。。
ここぞというところに、とどめを刺しに来るナイフのように
僕の痛いところに、
刃を突き付ける時がたまにある。
僕は表情を見られないように、今どんな顔してるか?
自分でも判らなかった。
きっと、焦って強張って、青ざめて情けない顔している。
顔は机の上の鞄に向けて、目線だけ向井地にゆるく向けるように
恐る恐る、聞いてみた。
表情が丸見えにならないように、恐る恐る視線だけを
ゆっくりと向井地に向けながら・・・
「いや〜、特にないけどさ、いじめられてたとか?かな?」
緊張の糸が一瞬で取れた。
血の気が、顔に戻った。
(よかった、ばれてない。)
さっきまではばれてるかも知れないとい言う気持ちで、
半泣きしそうな顔だったと思うが、
息がやっと自由に出来るようになった感じがした。
(よかった。。。)
目をキュッとつむんで・・・絶対に相手には見えていない。
僕はゆっくり息をして、いつもの顔で笑いかけながら言った。
少しだけ、顔を向井地に向けてみて。
彼の僕に対する反応も少し見てみたかった。
向井地なら、僕が変だったら、変っていくはずだから。
それで僕は自分の状態をチェックできる。
それに向井地を言い含めるくらいなら、簡単だろうから。
「アハハ。ないないw それにいつも彼は寝てばかりだし。
僕なんて、全く眼中にないよw
んじゃ、僕は迎えが来るから先に帰るね。
ごきげんよう。」
この場にいると、どこまで言うかわからない。
自分の口の限度がわからなかったから、
そそくさと逃げるようにその場を立ち去った。
当然、いつもの笑みで。
(やっと言えた。。。ごきげんよう。。。)
こんなに「ごきげんよう。」をいうのが、難しいなんて・・・
後ろから、向井地が別れのあいさつを言っていた。
僕は後ろ向きで手だけ振って、この教室を後にした。
(僕の態度を、変に思われなかただろうか。。。)
いや、それより、向井地は本当に空気を読まない。
悪い奴じゃないけれど、僕がこんなに帰るぞ!オーラ出してるのに、
全く気が付かないで、自分の話を一方的にしてくる。
(僕の身にもなってほしい・・・)
分かれという方が、無理なんだろうけれど。
(今の僕の頭の中は無茶苦茶だ!)
教室を後にしたのに、顔が熱い。
なぜか、ドキドキばかりしていた。
(出来るだけ下を向いて歩こう。)
廊下のタイルの線を見て、隅っこに壁に沿う感じで
足早に歩いていった。
それでも気が重かった。
明日また何か言われたら。。。
何を言い出すか、僕はわからない。。。
自信がなかった。
(あいつの行動は予測不能だから・・・)
僕の中では諸角との事は無かった事で、
あれほどに何度も自分の考えが、
間違ってないって言い聞かせてきたのに。。。
向井地の言葉に、脈略のないあんな言葉で揺らいでしまう
自分の考えの弱さに、悲しくて・・
向井地は単に、普通の会話をしたつもりだろうけれど、
僕自身はまだ克服してなかったのだろうか?
冷静にならなくては・・・
(家に帰って、答えるシュミレーションをしなくちゃ。)
向井地と話すには、ある程度の準備が必要だ。
こんなことで動揺していては、
この先が思いやられる。
(くだらない。どうしてこんなことで・・・)
なぜ、こんな事に時間を割かなくちゃいけないのか?と、
疑問だらけだが、これは試練なんだと思い聞かせた。
これが乗り越えられたら、どうってことないようになるんだ。
僕はもっと精神的に強くなれるって事なんだ。
(落ち着け。理央。大丈夫だから。)
とにかく今は出口に向かうんだ。。
クラスの誰にも顔を合わせたくなかったから。
ちょうど靴箱のあたりで、僕の携帯が鳴った。
急いで、チェック。
そこにはメールが1通。
(スパム?)
いや、母親からだった。
内容は、少し迎えが遅れるとのこと。
そんなにかからないから、そこで待っていてくれ、また連絡するとあった。
とりあえず、分かった。
(こんな時限って・・・
どうせ、自分の買い物か、なんかに使ってるんだろう。)
今日は厄日か?
本当に間が悪いっていうか・・
僕は握りこぶしを作って何も掴んではいないがキュッと握りしめて、
ムカつきを感じたが、
母には勝てないと思い、諦めた。
ここで怒っても感情をさらけ出して、恥ずかしいのは僕一人だ。
とりあえず、クラスの人間に出会わなくて、ここまで来れたじゃないか?
今はそれで良しとしよう・・・。
そう、自分を納得と説得両方した。
(それにしても、今更、教室も嫌だし、図書室も遠いし。。。)
今は向井地には会いたくないし、
まして諸角なんて、もってのほかだ!
どこで時間をつぶそうか?
悩んだが、行くとこはすぐに決まった。
あの木々の元へ行ってみよう。
近くで見るのでは、また違った印象があるだろうし、
僕には自然が合ってるんだ。
そう考えると、実行は早く、
即効靴に履き替えて、あの教室から見える、
木々の元へ翔っていった。
衣替えしたとはいえ、まだ雨の季節でもある今の時期、
少し走れば、すぐ汗ばんで、体が不快な感覚を覚える。
下校時刻はとっくに過ぎてるだけど、
今日はこの木々の元で、クラブ活動をしている連中も、
いなかった。
木々をゆっくり日の光の元で見たかったけれど、
空はなぜか、この季節特有のうっとおしい状態になっていた。
(余計に暑いっていうか。。。)
僕は、自分のハンドタオルで首や額の汗を拭いた。
雨が降るかもしれない。。。
置き傘はあったかな。。。
やっぱり教室に戻るべきだったろうか・・・
木々は茂っているから、少々の雨なら、
僕を守ってくれるような気がした。
生ぬるく感じる風まで吹いてきた。
(これは本当に雨かな。。。
天気予報は降らないって、
言っていたのに・・・)
もう少し待ってみて、
迎えが来ないようだったら、
一人で帰るか・・・
ハッ!
我ながら、頭の回転が今日はどうも遅すぎる。
一人で帰ったら、どうなるか。。。
諸角との事がまた、フラッシュバックのように
思い出させられる。
まだ、諸角と肌の感触が口に残ってる。
本当は、忘れるなんて出来ないってわかっているけれど、
でも、そうしないと自分がおかしくなりそうで、
周りから、弾かれるのは絶対いやだったから。。。
急いで教室を出てきたから、
諸角が残っていたかどうか?
そんなの気にしないで出てきてしまった。
(ちゃんと、確認しておけばよかった。
今日の僕は本当にどうかしてる。)
早く休んだ方がいい。
今日は、とにかくもう帰ろう。
僕が気にしないで、無視していけば大丈夫だ。
何の根拠もない自信ではあったが、
そう思わないと、自分がつぶれそうだった。
(大丈夫!)
心の中で、よし!と気合を入れて、
スーッと息を吸い、少しためてからゆっくり息を吐いた。
生温かい空気が気持ち悪いのは否めないが、
若干落ち着いたようだった。
そして小さくフッと肩で息を吐き、
背筋をしゃんとして、前をしっかり見る事を心がけた。
僕は何も悪い事をしている訳ではないんだから。。
だから、何も気にする事なんてないんだから。
(一度、教室に帰って、置き傘を確認してこなくちゃ。)
思ったらすぐ行動だ!僕は、母に今日の迎えは要らない事を打ち込み、
送信してパタンと蓋を閉じて、腰のポッケに携帯を直して、時間を確認。
時間は丁度、午後5時半。
少し帰りとしては、遅い方かもしれないが、
今なら、間違いなく誰も居ないと思う。
(ある意味、安心できる時間かも。)
少し、ホッとした。
そして僕は少し、気が緩んだかもしれかった、その瞬間。
教室に向かおうとする、僕の意気込みとさっき得た安心感を、
再びごっそりと削ぎ落とす事態が起きるなんて、
思ってもいなかった。
僕が、かけって行こうとした数歩の足数は、
また数歩、元に戻る。
そして、両足は奴隷のような鉛の重しをつけられたみたいに
全くもって、動かなかった。
動かそうとすると、震えるんだ。
そう、わかるだろ。
あいつが、いたんだ。
(も、諸角)
どうして?
また、血の気が引き、背筋にスーッと冷たいモノが流れるような
不気味な感覚が終わりなく続くように思えてならない。
(気持ち悪い。。。)
僕の顔はどうなってるんだろう?
きっと、また情けなくて、そして青ざめてるんじゃないだろうか?
一番会いたくないやつに、会ってしまった。
天気が悪かったなんて、頭のどこかに行っていた。
頭の中が全部、諸角の目で埋め尽くされる。
目眩がしそうだ。。
僕の体の何かが折れた気がした。
足は動かなかった。
でも、体は前に倒れる事が出来たようだった。
諸角が二重に、いや三重?それ以上?か
重なって、ダブって見える。
そして、シャッターが勢いよく降ろされると
同じように、僕の視界は、瞼は今まで見えていた世界から
僕を遮断し、真っ暗な世界に僕を引き戻していった。
ガタッ!!!
僕の膝が、ガクっと折れた。
当然、僕は前のめりに倒れる事になる。
でも、抵抗できなかった。
僕も倒れるのを期待したのかもしれない。
そうしたかったのかも。。。
今のこの現実は直視出来なかった。
まさかとは思ったが、一番いやな展開になった。
(どうしよう、迎えも断ってしまった。。。)
僕にはどうする事も出来ない。
本当に、僕は逃げたかったんだ。
倒れるという卑怯な手を使ってでも、
この諸角から、離れたくて逃げたかった。
(どうなってもいい。。。)
少しやけっぱちな気持ちもあったかもしれない。
とにかく、この現状を受け入れられたくなかった。
もう、嫌なんだ。
アイツに見られるのは・・・
体もドサっと横倒れになって、やっと足が動くように思えたが、
僕はもう気力がなかった。
ピトッ。
(?)
頬に伝う冷たい水。
もしかして、涙?
いや、違う。これは雨だ。
(本当に降ってきた。
傘を確認しなくちゃ。。。)
頭で考えているみたいだけれど、
体が動かない。
力がはいらなかったんだ、僕の体のどこも僕に従ってくれない。
薄っすら、重なっていた瞼に隙間が出来た。
真っ暗だった僕の視界は少し明るい。
だれかがいる。。。
体が拒否すれば、頭の方まで俺の意志を拒否していく。
そして、今さっきの事は無かった事になっていくんだ。
誰かが、何か喋っている。
それを確認したら、蝕むように疲れの大波と眠気が
僕を襲ってくるんだ。
(何にも考えられいし。。。)
薄っすら開いた、瞼は自然と、貝の口のように
隙間なくきっちりと閉ざした。
僕はまた闇の中だった。
それは「普通って何?」って事。
今まで激しい怒りとか感情なんて、
生きていく上で、ものすごく邪魔なものとしか、
考えてなくて、そんな力があるんなら、
一気に使うんじゃなくて、細く長く使って
無駄な力を出来るだけ減らしていければ
効率よく生きていけるからいいって、思っていた。
その方が人生、得なんだって、
ずっと思っているし、
今後この考え方は変わらないだろうって思っている。
だって、そうだろ?
勢いに任せて、感情をぶつけたからといって、
何か好転する事なんてある?
それは単なる自己満足で、
一人でマスターベーションしてるのと、
同じ事だって思うから。
(感情をすぐに頭に持って行くから、激情するんだ。
腹に一度、入れて頭に入れていけば、怒る事もない。)
これが僕、つまり椿 理央の生きる処世術でもあったりする。
僕の一日は、「ごきげんよう。」で始まり「ごきげんよう。」で終わる。
この学校の一日はこの言葉で始まり、この言葉で終わっていく。
おはようでもなく、バイバイでもなく。
なんとも言えないこのぬるい感触。
始まりでもなく、終わりでもなく。
機嫌がいいのか?悪いのか?
それさえも見えなくしてしまうのが、
この言葉でまるで魔法の言葉だ。
僕には打ってつけの言葉だ。
(まるで、無駄がない。)
僕は心からそういうものを求めていたんだと思う。
あの変な出来事から、僕は絶対にどんな事があっても、
迎えの車が学校まで来るまで、
帰らないことにした。
変な人がいて。。。って言えば、
母は、すぐに僕専用の運転手を探して、
車も用意してくれた。
(実際、変な奴いたし。。嘘じゃないし。)
自分の体を勝手にされて、たまるか!という
少しは残っていた男のプライドみたいなものが、
許さなかったというか。。
(男に向かって、可愛いってなんだ?)
小さい頃なら、分からんでもないけれど、
確かに僕は小さい時から、小柄であまり食べなかったから、
母はすごく料理に手をかけて、
嫌いな物でも、僕が分からないように食べさせてくれていた。
今ではそんな事は絶対にしなけど。
まずお互い忙しいし、殆ど顔を合わせる事もない。
それに、お手伝いの人が全部、母の代理をしてくれるし、
今更、母親に手伝ってもらわないとダメな年でもないから、
こうやって、ある程度放置してくれる事がすごく助かっていたりする。
この母との微妙な距離感も、僕にはとても心地よいものだから。
先の事なんて、尚更考えてもなくて、
どうせ、母親の言うとおりにしか、僕
はしないんだろうって思っている。
僕にはそんな、人生経験なんてないし、
する勇気もない。
言われたとおりにしている方が、
気が楽だし、その方が絶対に合っているんだと思う。
一時の感情に任せて、反抗するよりも
長い目で考えていけば、親の言うとおりにしていた方が、
その時は、反抗心があったとしても、
後々を考えればよいと思えるに決まっている。
それが僕の為でもあるんだって。
僕の周りにいる人間たちも
友達ともいえるだろうか?
分からない相手は数人いるが、
そういう相手でも今後も、付き合いは母を通じてだろうけれど、
続いていく連中だ。
こいつ達とも、程よく仲良くなっているのも、
今後の僕の為でもあるから、母がやっているように、
僕もやっていけばいいと思っている。
いい見本が目の前にいるんだし。。。
だから、不満なんて全くなかった。
(こんなに無駄が無く、心地よいのに・・・)
僕は今、授業中でもあるけれど、
この内容はもう、家の家庭教師に教わっている内容で、
僕にとってはとても、退屈で無駄にしか思えなかった。
でも、サボるなんて勇気はないから、
じっとしてこの時間が流れ去るのを、
待っているだけでいいんだ。
何にも苦にならない。
喚いたって、おかしい奴って、
みんなから弾かれるだけだから。
なら、黙ってついていく方がいい。
そうしたら、誰も僕を弾く事はないから。
隠れて本を読むのもだるい。
人の考えなんて、時間と共に変わっていく。
現に僕の母親がそうだ。
初めからああじゃなかった。
でも、段々変っていった。
その瞬間を焼き付けてしまう、
本や写真は、僕は苦手だ。
そんなのしたって無駄だろ・・・。
そう思わないか?
過去は取り戻せないんだから。
だったら、建設的な考えとして、
合理的に生きて、無駄を省いていく方が
よっぽど、未来的展望が明るいと、
思わないか?
ある意味、僕も母の影響で毒されているかもしれない。
でも、母は成功している。
それに結果を出して、社会は認めてもいる。
だから、僕はこの方法は間違っていないって思っている。
(どんな時も臨機応変に行かなくちゃ。)
風だって、自由であって自由ではない。
鳥だってそうだ。
そう思っているのは、人間だけだから。
いかに抵抗を少なくして生きていくかが、
一番大事な事なんだと思っている。
僕は今まで少しだけ、諸角に興味があったけれど、
興味といっても、人間的に何を考えているのか?とか
どうしてタブっているのか?とか
授業を寝てばかリしてるのはなぜか?
そんな程度だった。
この間の事件で(僕にとってはそれくらい大きな出来ごとだったから。)
彼は僕の考えを一気に覆してしまうような、
危険な人間だって、よく分かった。
危険なら近寄らなければいい。
それだけのことだ。
あの時は、僕は一人だったから、
怖かっただけだし、
いつもは、誰かが僕を守ってくれて、
家にまで連れて帰ってくれる。
母も僕はこれからのビジネスで必要だから、
僕の要件をちゃんと飲んでくれる。
そうやって、僕は上手くやっていけばいいだけだから。
もろずみは隣で、やっぱり寝ているけれど、
僕はもう気にしない。
それより向こうの青々として、
どんどん、緑を濃くするたくさんの葉が
揺れるのを見ている方が、
楽しかったりする。
多方面・多方向に伸びているように見えるが、
彼らも無駄がないように、本能で合理的に、
規則正しく計算されて、伸びていっている。
風に揺れれば、そこで一番いい無駄のない選択を
彼らも、そうやっているだけだ。
僕もそうなれば、いいだけだ。
そう思っていると、あの木々達も、
愛らしく、応援してしまいたくなる。
、
一生懸命その本能でベストポジションを探し、結果
合理的な動きとして、僕たちの目に飛び込んでくる。、
自然の生態系でさえ、こんなに計算されているのに、
僕もその中の一員なのだから、
もっと、その考えの自信をもって
いつでも貫いていける強さを持たなくては・・・、
考えさせられる。
そして、自分の考えが正しかったのだと、
彼らは僕を励ましてくれて、
同意してくれているように見えて、
微笑ましい気持ちで自然と笑みがこぼれてしまう。
こういう時間が僕にとってはすごく大事で、
ほのぼのとして、椿 純子の息子という代名詞がつく僕じゃなくて、
一人の人間として、ゆったりとほのぼのと、
心洗われる時間で、とても大事なものでもあるんだ。
確かにあんな事はあったが、
僕が考えている事が間違っていないという事を
再認識させてもらえたという意味では、
ある意味、有り難い事かもしれない。
悪く取ってしまっては、全て意味がなくなる。
それより、もっと大事なものがあると、
僕は気づけたんだから。。。
とても、清々しい気持ちだった。
生まれ変わるというのは、
こういう事も意味してるのだろうか?
「お前、ほんと、笑ったら可愛いな。」
不意を突かれた。
(何、それ?)
目の前が真っ暗だ。
さっきまでの優雅な耽美ともいえる僕の美しい世界が一瞬にして、
暗闇の光ない世界に色を失っていくのが、
肌で感じる。
ズンっと重いものを頭に乗っつかってきたみたいだ。
顔が緊張で強張っている、緊張もしてる、自分でも判った。
(も、諸角?)
一瞬にして氷結してしまった、僕の顔がギギギギっと
向きたくないが、ブリキのおもちゃが無理やり動かされているような、
そんな乾いた音が聞こえてきた。
絶対に僕の意志ではない。
見たくないけれど、自分の顔に妙な吸引力受けて、
ある一定方向に引っ張られている。
(か、勝てないかも。。。)
その先にいるのは、
やっぱり、諸角だから。
僕は抵抗した。
でも、そんなのはこれこそ無駄というべき抵抗で、
僕の力では到底勝てないくらい強い眼力で、
僕の顔の方向は、諸角の目線の方向で止まった。
目が合った。
氷結が硬直に変化する。
(さっきまで、寝てたじゃないか!)
諸角は僕をじっと見ていた。
「なんですぐ、変わるかな?面白くね〜よ。」
諸角はそういって、プイッと俺と反対方向に顔向けて、
また自分の腕を枕に、眠りに入った。
僕はまだ硬直している。
諸角、彼の言っている言葉が全く理解できなかったから。
(面白い?面白くない?変わる?何が?)
(はぁ?)
この前といい、この諸角という人間は、
なんなのだろう?
僕は外を見て、心を和まし、
自分の考えの正しさに満足していただけだ。
決して彼を見ていた訳ではない。
彼はじっと、僕を見ていたかもしれないが、
僕は全く眼中になかったんだ。
なんという木々の動き・強さの無駄の無さに感動して、
心から感じて、愛でていただけだ。
これは、人として素晴らしく、至高の一時でさえあったと思う。
これ程までに無駄を嫌うこの僕が、この時間は無駄にしてもいいほど、
あの木々と空と光の僕に対する気持ちを感じていたい、
生命の力強さと僕のこの気持とリンクさせていた
有意義な時間を。。。
それなのに、この諸角は、僕の大事なこの時間さえも、
壊していく。
そんな権利が君にあるのか?と、
大声で彼に言ってやりたいくらいだった。
僕は確かに、この授業は真面目ではないかもしれないけれど、
諸角ほど、授業を邪魔して、先生の妨害をしている訳ではない。
聞かなくてはいけないところは、ちゃんと聞いている。
外を見るくらい、許されてもいいはずだ。
誰だって、それくらいしてるじゃないか。
(時間をちゃんと、有効利用しているだけだ。)
この間の事だって、僕は誰にも言っていない。
(というか、話せないっていうのもあるが。。。)
彼にとっては、単なるキスかもしれないけれど、、
僕はあれば、初めてのキスでもあったんだ。
なかった事にしていたんだ。
事故にもならない事故のように思うようにしていたんだ。
真剣に考えれば、感情が乱れておかしくなりそうだったから。
そんなのは、僕の性分じゃないから。
真剣な気持ちなんて、有り得ないし。
僕が認めなければ、こんなのは数のうちにも入らないはずだから。
今まで生きてきた中で、考えられない事だったから。
僕は椿 純子の息子だから、
こんな事でうろたえていたら、母に笑われてしまう。
それに母が笑われる。
それは、僕も笑われるっていう事なんだ。
それは僕のプライドが許さない。
(お子様ではない僕に、可愛いはないだろ。)
それに男に男が可愛いなんて、有り得ないだろ!
失礼にもほどがある!
(確かに君よりか弱く見えるかもしれないが、
それでも、言って良い事と悪い事がある。)
どういう家に育ってきたら、こうなるんだ?
僕は怒りより、呆れる気持ちとムカつく気持ちとが
入り混じって、混乱してしまう。
(彼の家は芸術家の両親じゃないのか?
人の感情なんて、もっとわかるはずじゃないのか?
まして、彼は2年も年上のはずなのに。。。)
彼は僕の感情を、逆撫でする事ばかり仕掛けてくる。
(どうして、何も知らない相手にこんな事を言われないといけないんだ。)
一瞬、ムカっとしたが、そのおかげか?わからないが、
硬直が取れた、顔が軽くなったような気がする。
やっと、彼の眼力から解放されたようで、
自由に動けるようになったみたいだった。
(彼と傍は危険だ。)
僕の本能の部分なんだろう、
自分が自分に語りかけてる感じだった。
席が近いから、余計そうなるのかもしれない。
(ダブってるくせに。。。)
僕は意外と早く冷静になれた。
授業が終わると同時に、僕は担任に席替えを申し出て、
彼と、離してもらうようにした。
もちろん、本当の理由は伏せているが、
僕の勉強を邪魔をしてくるという理由で、替えてもらった。
やっと、これで、乱れる事はなくなった。
せいせいした。
(ざまぁみろ。)
僕は、とても気分がよかった。
諸角と同じ列だったが、僕は最前列で、窓際になった。
いつも見ている木々は後になってしまったが、
新しい木々を見つめる事が出来るようになった。
それに授業もきちんと聞くようになった。
(面倒だが、復習の復習と思えばいいか。。。)
僕はやはり、窓の外を見る。
自然が大好きというわけではないのだが、
なぜか、ここの人工的に植えられた木々であっても、
本能で生きようとする姿が、健気で逞しくって
僕の心の励みになっていた。
諸角と席が離れる瞬間から、僕の大好きな木々以外、
周りに気を取られる事が、
全くなくなった。
凄く、心地よかった。
やっとこれでいつもの僕になれる。
いつもの笑顔、いつもの「ごきげんよう」、
何気ない会話。
(一代で成金イメージの僕もこうやって、大人しくしていたら少しは仲間のように
扱ってくれるようになった。)
少し嬉しかった。
みんなのように、僕専用の送り迎えの車に運転手もいる。
出来るだけ、会話についていけるように、
ブルジュアな会話と品の良さを身につけようと頑張った。
夏休みは皆、別荘に行ったりするらしく、
僕も母にせがんで、別荘を買ってもらった。
これで、皆を招待する事も出来る。
何人か友人らしき人間たちにの家にも、招待された。
僕の家とは、全然規模が違うが、招待されたのは嬉しかった。
僕も皆を自分の家に招待した。
規模は負けるのは仕方がないから、最新のゲーム機器や、ゲームソフト・DVD
少し泳げるプールみたいな施設などを、家に準備してと、母にねだった。。
彼らに勝とうとかという気持ちはないけれど、
見くびられたくないから、
理由はそれだけだった。
母も、これが今後のビジネスに繋がるとわかっているから、
惜しむことなく、僕の要求を飲んでくれた。
これこそ、ギブ&テイクだ。
これで母の役に立てるなら、僕は全く問題なかった。
彼らは、夢中で遊んでくれた。
彼らが来る時は、母は昔の母のように、ちゃんと家にいてくれて、
僕が今でも大好きな昔の母みたく振舞ってくれた。
(彼らが来ると、母は昔の母になってくれる。。。)
何回でも、彼らを招きたいくらいだった。
それに、本気かどうかわからないが、彼らもまた行きたいとも言ってくれた。
それはそれで、素直に嬉しかった。
僕は着実に母の意向に沿って、学生生活を送っていた。
(もっと早くこうすればよかったんだ。)
今更だが、自分の鈍さに情けないと思う。
やっぱり母のような強さはないんだなって思う。
諸角と離れて、まだ2週間も経っていないが、
どうして、あの位置にずっといたのか?
言えば、こうやって、席も替えてくれて、
明るい未来があったのに。。。と、
自分の決断力の遅さに、重いため息が出てしまう。
僕としては今の段階で、この辺だけは後悔している。
でも、それを挽回するくらい、学生生活を満喫させようと、心に誓った。
あれから、諸角も近寄ってこない。
(あれは、僕も本気ではなかったし、数のうちに入れて
あれやこれやで悩む方がおかしい。)
僕は、そう考えるように気持ちを切り替えた。
これから生きていく間に、色んな事があるだろうし、
予想外の事だってあるはずだ。
それにいちいち、気を取られていたら、生きていけない。
あれは、何でもなかったんだ。
そのうち、忘れているさ。
(あの出来事は、その予行演習みたいなものだ。)
僕は、そう考えるように努めた。
諸角の視線は、全く感じないわけではないが、
席が前になっただけだから、
僕が前になった分、そう感じるだけだろうと思っている。
僕は、ちゃんと上手くやっている。
僕の好きな木々もそう言ってるはずだ。
やっぱり僕は正しいんだ。
衣替えも終わり、雨も多い日が続くが、
面倒な試験も終わって、
他人の邪な感情や自分の感情を揺さぶられる事なく、
順調に毎日を過ごしていた。
「椿、お前学年3位ってすごいなw」
「え?」
「この間のテストの結果、総合3位って、すごくない?」
「あ、ありがとう。」
「俺なんて、全然なのにさw、一回でいいから10位内に入りたいぜ〜w」
「本気出したら、できるよ。調子悪かったんじゃない?雨多かったりしたし。」
「そっか?wお前、優しいなw」
アハハと彼は笑った。僕もつられて笑っていた。
褒めてもらったお礼として、いつもの営業スマイルでペコっと頭をさげ、
彼の機嫌を取るように謙った。
彼は向井地 光太郎。(むかいち こうたろう)
裏表のない明るい性格で、僕とは少し違うタイプだが、
僕の中では友人という枠の中ではあったし、
僕自身、まだ色々と話がしやすくて、仲のいい方だと思う。
それに彼の実家も一代で成り上がったという感じの家で、
大手ゼネコンの一人息子だった。
家が遠くて、一人暮らししてるという話だ。
今は僕との席も近いし、周りの連中からしてみれば、
僕みたいなのは外様という
分類なので、彼も少し僕と似ている扱いでもあるから、
仲良くなるのに時間はそうかからなかった。
「一番誰だった?」
聞く気もなかったけど、話が途切れちゃったから、
一応、話を繋げなくてはという義務感で、僕は向井地に話を振った。
興味無い話だから、鞄に自分の物を直しながら尋ねた
(誰が一番でも、どうでもいいんだけどね。)
何か、話したそうだったし。。。向井地。
「そうそう!、それがアイツよ〜。諸角!
寝てばっかりだけど、
家で、勉強してるのかね〜。」
「え?」
僕の顔と手の動きが、一瞬止まった。
も、も、諸角?
寝てばっかりのやつが?
嘘でしょ?っていう顔をしていたと思う。
(だ、ダブってるからとか?)
たぶん、いや絶対、僕の動きは変だったと思う。
向井地は、気付いた思っただろうか?
この今までにない僕の奇妙な動揺を、不審に思わないだろうか??
(なんとか、間を繋げなきゃ。)
僕は先にそれが頭に浮かんだから、
とっさに言葉を出した。
「だ、ダブってるからじゃないの?
だから、わかってるっていうか。。。」
(僕の声、震えてないだろうか?)
変にドキドキしてる?
諸角のもの字も最近、聞いていなかったから?
いつもの俺らしくない、行動の俺は周りにどう見られている?
自分でもこんなに諸角の名前が出てくるだけで、
オドオドしてしまうなんて・・・。
「いや〜あいつさ、海外行ってたんだって。向こうで日本画教えてたらしいよ。
ダブってるのはそのせいらしい。」
「え?そうなの?」
また、僕の動きは止まった。
日本画?
あいつ、絵を描くんだ。
芸術家の家の子って本当だったんだ。。。
僕は少しびっくりした。
絵というものに興味は全くなかったが、
彼が人を教えるなんて、そこまですごいのか?と、
隣にいる時は、全く思わなかったから。
(だから訳わかんないのかな。。。)
「ここ、卒業したら、なんか襲名がどうとかって聞いたけど。」
(そうなんだ。。。)
「椿、知らなかったの?」
「えっ?あっ、あぁ、知らなかった。」
「へぇ〜意外w。席近いかったから、色々話してるって思ったよ。」
今だけでも、僕はできるだけ、普通に振舞うように努めた。
そう、さっきまで帰る用意をしていたんだから、
鞄に物を入れる作業をしながら、
動揺している自分を極力悟られないように。
変に震えている自分が見つからないように。
「殆どっていうほど、、喋って無かったし。
単に席が近いだけっていうか。
それに、彼は寝てばっかりだしね。」
やっと、向井地を少し見ながら、言えた。笑えた。
いつもの営業スマイルだけれど、ぎこちなく自然だったと思っている。
「そうだよな〜。じゃないと、いきなり途中で席変わってくれとかって言わないもんなw」
向井地は、ベターっと机に体を投げ出して、
顔だけ僕に向けて、笑いながら話していた。
僕も口の端を少し上げて、頬笑みかえした。
もう、普通にやれてるはずだ。
さっきは、意外な話だったから、びっくりしただけなんだ。
そう割り切った。
そうするべきだって、思ったんだ。
「少し、目が悪くなったかもしれないんだ。
あの席だと、文字がかすんじゃって。
それで席を替えてもらったんだよ。」
(あれ?なんで先生に言った理由を僕は言ってないの?)
もう、言った言葉は取り消せない。
自分でも、知らず知らずに、まるで諸角かばってる?と
勘違いしそうな言葉を、向井地になんかに、
それも無意識に言っている。
(墓穴掘ってる?)
顔の血の気が引きそうだ。
また、表情が強張ってるのではないだろうか?
不安で仕方がないが、なんとかこの場を終わらさないと。。。
帰る用意は出来た。
もう、後はこの部屋を出るだけだ。
僕はさっさと部屋を出るように、
体を向けていくんだが、
いつもの動作の6倍は、時間がかかってるように
なんだか、体が重りを抱えているみたいで、
動きが鈍く思えて仕方がなかった。
(早く、立ち去りたい!)
これだけだった。
あとは、「ごきげんよう。」
これを言えば。。。
「俺、てっきり、椿はあいつになんかされたのかって思ってたよ。」
まだ続けるか!
ってその前になにか?ってなんだよ?
(こいつ、鈍いな・・・。)
でも、それよりもっとすごい言葉を聞いた気がする。
慌てて反応した。
「え?なにかって?」
まさか、見られてた?
ドキっとする一言を、向井地はたまに言う。
勘がいいっていうか。。。
ここぞというところに、とどめを刺しに来るナイフのように
僕の痛いところに、
刃を突き付ける時がたまにある。
僕は表情を見られないように、今どんな顔してるか?
自分でも判らなかった。
きっと、焦って強張って、青ざめて情けない顔している。
顔は机の上の鞄に向けて、目線だけ向井地にゆるく向けるように
恐る恐る、聞いてみた。
表情が丸見えにならないように、恐る恐る視線だけを
ゆっくりと向井地に向けながら・・・
「いや〜、特にないけどさ、いじめられてたとか?かな?」
緊張の糸が一瞬で取れた。
血の気が、顔に戻った。
(よかった、ばれてない。)
さっきまではばれてるかも知れないとい言う気持ちで、
半泣きしそうな顔だったと思うが、
息がやっと自由に出来るようになった感じがした。
(よかった。。。)
目をキュッとつむんで・・・絶対に相手には見えていない。
僕はゆっくり息をして、いつもの顔で笑いかけながら言った。
少しだけ、顔を向井地に向けてみて。
彼の僕に対する反応も少し見てみたかった。
向井地なら、僕が変だったら、変っていくはずだから。
それで僕は自分の状態をチェックできる。
それに向井地を言い含めるくらいなら、簡単だろうから。
「アハハ。ないないw それにいつも彼は寝てばかりだし。
僕なんて、全く眼中にないよw
んじゃ、僕は迎えが来るから先に帰るね。
ごきげんよう。」
この場にいると、どこまで言うかわからない。
自分の口の限度がわからなかったから、
そそくさと逃げるようにその場を立ち去った。
当然、いつもの笑みで。
(やっと言えた。。。ごきげんよう。。。)
こんなに「ごきげんよう。」をいうのが、難しいなんて・・・
後ろから、向井地が別れのあいさつを言っていた。
僕は後ろ向きで手だけ振って、この教室を後にした。
(僕の態度を、変に思われなかただろうか。。。)
いや、それより、向井地は本当に空気を読まない。
悪い奴じゃないけれど、僕がこんなに帰るぞ!オーラ出してるのに、
全く気が付かないで、自分の話を一方的にしてくる。
(僕の身にもなってほしい・・・)
分かれという方が、無理なんだろうけれど。
(今の僕の頭の中は無茶苦茶だ!)
教室を後にしたのに、顔が熱い。
なぜか、ドキドキばかりしていた。
(出来るだけ下を向いて歩こう。)
廊下のタイルの線を見て、隅っこに壁に沿う感じで
足早に歩いていった。
それでも気が重かった。
明日また何か言われたら。。。
何を言い出すか、僕はわからない。。。
自信がなかった。
(あいつの行動は予測不能だから・・・)
僕の中では諸角との事は無かった事で、
あれほどに何度も自分の考えが、
間違ってないって言い聞かせてきたのに。。。
向井地の言葉に、脈略のないあんな言葉で揺らいでしまう
自分の考えの弱さに、悲しくて・・
向井地は単に、普通の会話をしたつもりだろうけれど、
僕自身はまだ克服してなかったのだろうか?
冷静にならなくては・・・
(家に帰って、答えるシュミレーションをしなくちゃ。)
向井地と話すには、ある程度の準備が必要だ。
こんなことで動揺していては、
この先が思いやられる。
(くだらない。どうしてこんなことで・・・)
なぜ、こんな事に時間を割かなくちゃいけないのか?と、
疑問だらけだが、これは試練なんだと思い聞かせた。
これが乗り越えられたら、どうってことないようになるんだ。
僕はもっと精神的に強くなれるって事なんだ。
(落ち着け。理央。大丈夫だから。)
とにかく今は出口に向かうんだ。。
クラスの誰にも顔を合わせたくなかったから。
ちょうど靴箱のあたりで、僕の携帯が鳴った。
急いで、チェック。
そこにはメールが1通。
(スパム?)
いや、母親からだった。
内容は、少し迎えが遅れるとのこと。
そんなにかからないから、そこで待っていてくれ、また連絡するとあった。
とりあえず、分かった。
(こんな時限って・・・
どうせ、自分の買い物か、なんかに使ってるんだろう。)
今日は厄日か?
本当に間が悪いっていうか・・
僕は握りこぶしを作って何も掴んではいないがキュッと握りしめて、
ムカつきを感じたが、
母には勝てないと思い、諦めた。
ここで怒っても感情をさらけ出して、恥ずかしいのは僕一人だ。
とりあえず、クラスの人間に出会わなくて、ここまで来れたじゃないか?
今はそれで良しとしよう・・・。
そう、自分を納得と説得両方した。
(それにしても、今更、教室も嫌だし、図書室も遠いし。。。)
今は向井地には会いたくないし、
まして諸角なんて、もってのほかだ!
どこで時間をつぶそうか?
悩んだが、行くとこはすぐに決まった。
あの木々の元へ行ってみよう。
近くで見るのでは、また違った印象があるだろうし、
僕には自然が合ってるんだ。
そう考えると、実行は早く、
即効靴に履き替えて、あの教室から見える、
木々の元へ翔っていった。
衣替えしたとはいえ、まだ雨の季節でもある今の時期、
少し走れば、すぐ汗ばんで、体が不快な感覚を覚える。
下校時刻はとっくに過ぎてるだけど、
今日はこの木々の元で、クラブ活動をしている連中も、
いなかった。
木々をゆっくり日の光の元で見たかったけれど、
空はなぜか、この季節特有のうっとおしい状態になっていた。
(余計に暑いっていうか。。。)
僕は、自分のハンドタオルで首や額の汗を拭いた。
雨が降るかもしれない。。。
置き傘はあったかな。。。
やっぱり教室に戻るべきだったろうか・・・
木々は茂っているから、少々の雨なら、
僕を守ってくれるような気がした。
生ぬるく感じる風まで吹いてきた。
(これは本当に雨かな。。。
天気予報は降らないって、
言っていたのに・・・)
もう少し待ってみて、
迎えが来ないようだったら、
一人で帰るか・・・
ハッ!
我ながら、頭の回転が今日はどうも遅すぎる。
一人で帰ったら、どうなるか。。。
諸角との事がまた、フラッシュバックのように
思い出させられる。
まだ、諸角と肌の感触が口に残ってる。
本当は、忘れるなんて出来ないってわかっているけれど、
でも、そうしないと自分がおかしくなりそうで、
周りから、弾かれるのは絶対いやだったから。。。
急いで教室を出てきたから、
諸角が残っていたかどうか?
そんなの気にしないで出てきてしまった。
(ちゃんと、確認しておけばよかった。
今日の僕は本当にどうかしてる。)
早く休んだ方がいい。
今日は、とにかくもう帰ろう。
僕が気にしないで、無視していけば大丈夫だ。
何の根拠もない自信ではあったが、
そう思わないと、自分がつぶれそうだった。
(大丈夫!)
心の中で、よし!と気合を入れて、
スーッと息を吸い、少しためてからゆっくり息を吐いた。
生温かい空気が気持ち悪いのは否めないが、
若干落ち着いたようだった。
そして小さくフッと肩で息を吐き、
背筋をしゃんとして、前をしっかり見る事を心がけた。
僕は何も悪い事をしている訳ではないんだから。。
だから、何も気にする事なんてないんだから。
(一度、教室に帰って、置き傘を確認してこなくちゃ。)
思ったらすぐ行動だ!僕は、母に今日の迎えは要らない事を打ち込み、
送信してパタンと蓋を閉じて、腰のポッケに携帯を直して、時間を確認。
時間は丁度、午後5時半。
少し帰りとしては、遅い方かもしれないが、
今なら、間違いなく誰も居ないと思う。
(ある意味、安心できる時間かも。)
少し、ホッとした。
そして僕は少し、気が緩んだかもしれかった、その瞬間。
教室に向かおうとする、僕の意気込みとさっき得た安心感を、
再びごっそりと削ぎ落とす事態が起きるなんて、
思ってもいなかった。
僕が、かけって行こうとした数歩の足数は、
また数歩、元に戻る。
そして、両足は奴隷のような鉛の重しをつけられたみたいに
全くもって、動かなかった。
動かそうとすると、震えるんだ。
そう、わかるだろ。
あいつが、いたんだ。
(も、諸角)
どうして?
また、血の気が引き、背筋にスーッと冷たいモノが流れるような
不気味な感覚が終わりなく続くように思えてならない。
(気持ち悪い。。。)
僕の顔はどうなってるんだろう?
きっと、また情けなくて、そして青ざめてるんじゃないだろうか?
一番会いたくないやつに、会ってしまった。
天気が悪かったなんて、頭のどこかに行っていた。
頭の中が全部、諸角の目で埋め尽くされる。
目眩がしそうだ。。
僕の体の何かが折れた気がした。
足は動かなかった。
でも、体は前に倒れる事が出来たようだった。
諸角が二重に、いや三重?それ以上?か
重なって、ダブって見える。
そして、シャッターが勢いよく降ろされると
同じように、僕の視界は、瞼は今まで見えていた世界から
僕を遮断し、真っ暗な世界に僕を引き戻していった。
ガタッ!!!
僕の膝が、ガクっと折れた。
当然、僕は前のめりに倒れる事になる。
でも、抵抗できなかった。
僕も倒れるのを期待したのかもしれない。
そうしたかったのかも。。。
今のこの現実は直視出来なかった。
まさかとは思ったが、一番いやな展開になった。
(どうしよう、迎えも断ってしまった。。。)
僕にはどうする事も出来ない。
本当に、僕は逃げたかったんだ。
倒れるという卑怯な手を使ってでも、
この諸角から、離れたくて逃げたかった。
(どうなってもいい。。。)
少しやけっぱちな気持ちもあったかもしれない。
とにかく、この現状を受け入れられたくなかった。
もう、嫌なんだ。
アイツに見られるのは・・・
体もドサっと横倒れになって、やっと足が動くように思えたが、
僕はもう気力がなかった。
ピトッ。
(?)
頬に伝う冷たい水。
もしかして、涙?
いや、違う。これは雨だ。
(本当に降ってきた。
傘を確認しなくちゃ。。。)
頭で考えているみたいだけれど、
体が動かない。
力がはいらなかったんだ、僕の体のどこも僕に従ってくれない。
薄っすら、重なっていた瞼に隙間が出来た。
真っ暗だった僕の視界は少し明るい。
だれかがいる。。。
体が拒否すれば、頭の方まで俺の意志を拒否していく。
そして、今さっきの事は無かった事になっていくんだ。
誰かが、何か喋っている。
それを確認したら、蝕むように疲れの大波と眠気が
僕を襲ってくるんだ。
(何にも考えられいし。。。)
薄っすら開いた、瞼は自然と、貝の口のように
隙間なくきっちりと閉ざした。
僕はまた闇の中だった。




